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haco.

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これって恋?

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今日の朝から打ち合わせが待っている。
新しい新事業を立ち上げたばかりであるご依頼先からである。

「三浦さん、お客さん来ましたよ。」受付の「琴音ちゃん」が
稔に報告しに来た。

「ありがとう」と笑顔で対応すると、明らかに顔が赤くなっている。

その光景を背後から視線を感じていた。

涼子が睨んでいる。

「こわ!」なんて言えないが、とにかく打ち合わせ室まで向かう。

稔が部屋に入ると依頼されてきた新社長なのだろう。
キリっと姿勢をただし、椅子を立った。

隣には、20代前半と言わんばかりのおしゃれなスーツを着込んでいる女性が立っている。

お互い名刺交換をして名前を確認。

「イートフード 代表取締役 増井 信」となんともシンプルなデザインで渡された。

「どうぞ!よろしくお願いします」と挨拶を交わして席に着いた。

「どういったご依頼で・・・」と話を進めていく。

打ち合わせというのはほんとに時間がかかるものだ。
どうやってデザインを提案するか、どう練り合わせていくか。

1時間ぐらいは立った頃に尻ポケットに入ってた携帯から電話がかかってきた。

「ちょっと・・すみません」稔は立ち上がり部屋を出ると

父からだった。

「今、だいじょうぶか?」

「今、打ち合わせ中だよ。でもどうしたの?」

「いや、全然後ででもよかったんだが、粉ミルクが切れて帰りに買ってきてほしいんだよ」

「粉ミルク?」つい声が出てしまう。

それに気づいた涼子が稔の電話を奪い取った。

「もしもし涼子です。私が買ってきますよ。もう切れたんですよね?」

「はい!はいはい!」と父と涼子だけで話は終わってしまった。

電話を切ると、

「稔は仕事に集中ね!私が買っておくから」

「おう!ありがとな」

なんともありがたいと思う。

お昼時になる頃に、涼子は家まで行ってくれた。
理解してくれる人がいるなんて稔にはとても安心できた。

打ち合わせも2時間ぐらいは立って終わり、今日は残業だ・・なんて思っていた。

午後の仕事中、涼子が
「今日は大変ねえ・・・私早く帰れるから、宗介さんの面倒見ておくわ」

なんて気が利くんだろう。


父に言われたことを思い出した。
「涼子さんはほんとにいい子だよ。離したらいかんよ。いい嫁さんになる」

稔は「だーかーら、付き合ってないって」と反感していた。

でも最近、心が疼くまっていた。

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