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じいちゃんとばあちゃん

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GWに三浦家一同、揃って婆ちゃんの信子に逢いに愛媛まで来ていた。

爺ちゃんの生まれ故郷だ。

愛媛の田舎育ちでもあるじいちゃんは、20になると東京に出たが、今の姿で故郷に来るのは初めてだ。

信子ばあちゃんとは東京の下町で出会ったとよくじいちゃんから聞かされていた。
ばあちゃんの方から告白されたと自慢げに話すじいちゃんだったけど。
家族揃って疑いの目で見ていた。

婆ちゃんの若い頃の写真を見たことがあったけど。大手の醤油製造の会社の子だった。
美人令嬢とふさわしいほどの美人だった。

どう考えてもじいちゃんから告白したと言えない。

いつも正月が来るたびに言いふらしているらしい。

車で山奥まで向かうと、大きな屋敷が見えてきた。
と言っても、家族五人ぐらいで暮らせる程度だ。

おそらくばあちゃんの実家より比べたら、小さいはずだ。

家の目の前に車を停めると屋敷の横の田で耕しているばあちゃんがいるのに気づいた。

「婆ちゃん。来たよ」稔の声に反応して

「おーーよーきたなー。」手をあげながら車に近寄ってきた。

母の茂子と勝も車から降りると挨拶を交わした。

「どうも!お久しぶりです」茂子はかしこまり頭を軽くさげた。

「じいちゃん、連れてきたよ」稔が言うと。

「おい!」勝が少し失礼だぞというようなそぶりとしてきた。

「まあ、いいじゃないか。うちのじいちゃんが戻ってきただけで」
信子は、笑みを浮かべながら言った。


「さてと・・・、じいちゃんが好きだったお酒があるはずだけど。」
「みのる、飲むかい?じいちゃんはまだ未成年にもほど遠い。大人になる頃にはお酒も干からびてるだろうし」

冗談なのか、それとも「マジ」なのか。わからないノリだ。

「ささ。中に入ろう。外は暑い」

由緒正しきこの場所に入るのに、礼儀が必要だと思い込むが信子は

「ぜんぜん土足無礼講でいいさ」と言ってくれた。

ガラっと玄関の引き戸を引いた。

「失礼しまーす!」
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