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第三章
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第三章
平成二十八年六月二十五日(2016年6月25日:再び暑い土曜日の午後)
馬と共に川の中でもがいていた筈の信長は地面に立っていた。
が、ここは合戦の最中でもなければ、渡ろうとしている連吾川の中でもなかった。
そこには信長にとって今迄見たことも無い想像を絶する光景が広がっていた。
(・・・・・・なっ、何が起きたんじゃ?
・ ・・・・・・ここはどこじゃ?
・ ・・・・・・わしはどうなったんじゃ?
・・・・・・・まさか死んであの世にいるのか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・しかし奇妙。
・・・・・・・馬も一緒ということがあるか?
・・・・・・・服も濡れておる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・どこだ?
・・・・・・・一体何が起きたんじゃ?)
溺れるはずも無い川でもがいていたはずが、一体どうして川から上がったのか、そしてどうして自分がこの訳もわからない状況に置かれているのか全くもって理解できなかった。目の前には奇妙な格好の男が腰を抜かしたかのごとく尻餅をつきながらこちらを見ている。周りにも家来達とはまるで違う、やはり奇妙な群衆がこちらを見つめている。敵か味方かも分からない。信長は警戒しながら周囲を見渡した。
が、時間をかけても全くもってこの状況は理解できない。さすがの信長も動揺してきた。
何度も何度も周りを見渡しても判らない。やはり何かおかしい。
唯一理解できたものは、わずかに点在する木々や草花、白褪せた空、雲、お日様、だけであった。それ以外は正にこの世のものとは思えない、という表現が最も的確であった。一体自分がどこにいるのか、自分の身に何が起きているのか、自分が今目にしている物が何なのか、表現しようにもその言葉すら見つけだすことが出来なかった。
(・・・・・・・転んだ勢いで気を失って夢でもみているのか?
・・・・・・・・だが夢でもこんな見たことも無い景色がはたして出てくるものか?
・・・・・・・・わしの頭が狂ったか?
・ ・・・・・・・奇妙な衣装をまとったこやつらは何者じゃ。
・・・・・・・・あの群れをなした箱は何じゃ?
・・・・・・・・周りの巨大な城は何じゃ?
・・・・・・・・何か途轍もない国に迷い込んだようじゃ。)
信長は周囲を冷静に観察すればするほど、原因不明の恐怖感と敗北感に包まれた。心臓が大きく音をたて始め、そして恐怖心のあまり刀を振り回して逃げ駆けたい気分にさえなった。
(・・・・・・・・何がどうなっておるんじゃ!!!
・・・・・・・・・なんじゃ~!)
と、その時、頭に帽子を乗せた男が何やら叫びながら信長に向かって駆け寄ってきた。
(いかん!ここで捕まれば首が飛ぶ!!!)
信長にとっては今も戦の最中である。自分を追う者が現れた事で一層の恐怖心が噴き出してきた。信長は咄嗟に馬にまたがると慌てて馬を走らせた。
(一刻も早く陣地へ戻らねば)
得体の知れない動く箱にぶつかりそうになりながらも素早く駆け回り、死に直面した信長は、走って、走って、走りまくった。
正面、左右から途切れることなく次々と箱が押し寄せ、行く手を阻んで真っ直ぐに走れない。それでも信長は必死に馬を走らせた。
(どうすれば良いんじゃ!道さえもわからん!)
どこまで行っても元の国に戻る道が見つかりそうな気がしない。逃げ回っていても騒ぎが大きくなるだけで、どう対処すれば良いのか全くもって要領を得なかった。せめて一旦この状況を把握し直すために冷静に考える場所が欲しかった。だがその場所すらわからない。走っても走っても解決の糸口は一向に掴めず、気が狂いそうになって叫び声をあげた。
闇雲に走りまわり何度も同じ場所を通り過ぎ、子供たちは泣き声をあげ、次第に追っ手の数が増えてきた。
あても無いまま無我夢中で馬とともに走り続けた。
そして西に傾きかけた太陽に向かって走っていた時である。前方に緑の多く茂る庭園らしきものが見えた。
(あれはどこぞの城の庭じゃ。あそこか)
信長はようやく目指すべき場所を見つけた気がした。その後はひたすら脇目もふらずただ庭園に向け馬を走らせた。
平成二十八年六月二十五日(2016年6月25日:再び暑い土曜日の午後)
馬と共に川の中でもがいていた筈の信長は地面に立っていた。
が、ここは合戦の最中でもなければ、渡ろうとしている連吾川の中でもなかった。
そこには信長にとって今迄見たことも無い想像を絶する光景が広がっていた。
(・・・・・・なっ、何が起きたんじゃ?
・ ・・・・・・ここはどこじゃ?
・ ・・・・・・わしはどうなったんじゃ?
・・・・・・・まさか死んであの世にいるのか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・しかし奇妙。
・・・・・・・馬も一緒ということがあるか?
・・・・・・・服も濡れておる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・どこだ?
・・・・・・・一体何が起きたんじゃ?)
溺れるはずも無い川でもがいていたはずが、一体どうして川から上がったのか、そしてどうして自分がこの訳もわからない状況に置かれているのか全くもって理解できなかった。目の前には奇妙な格好の男が腰を抜かしたかのごとく尻餅をつきながらこちらを見ている。周りにも家来達とはまるで違う、やはり奇妙な群衆がこちらを見つめている。敵か味方かも分からない。信長は警戒しながら周囲を見渡した。
が、時間をかけても全くもってこの状況は理解できない。さすがの信長も動揺してきた。
何度も何度も周りを見渡しても判らない。やはり何かおかしい。
唯一理解できたものは、わずかに点在する木々や草花、白褪せた空、雲、お日様、だけであった。それ以外は正にこの世のものとは思えない、という表現が最も的確であった。一体自分がどこにいるのか、自分の身に何が起きているのか、自分が今目にしている物が何なのか、表現しようにもその言葉すら見つけだすことが出来なかった。
(・・・・・・・転んだ勢いで気を失って夢でもみているのか?
・・・・・・・・だが夢でもこんな見たことも無い景色がはたして出てくるものか?
・・・・・・・・わしの頭が狂ったか?
・ ・・・・・・・奇妙な衣装をまとったこやつらは何者じゃ。
・・・・・・・・あの群れをなした箱は何じゃ?
・・・・・・・・周りの巨大な城は何じゃ?
・・・・・・・・何か途轍もない国に迷い込んだようじゃ。)
信長は周囲を冷静に観察すればするほど、原因不明の恐怖感と敗北感に包まれた。心臓が大きく音をたて始め、そして恐怖心のあまり刀を振り回して逃げ駆けたい気分にさえなった。
(・・・・・・・・何がどうなっておるんじゃ!!!
・・・・・・・・・なんじゃ~!)
と、その時、頭に帽子を乗せた男が何やら叫びながら信長に向かって駆け寄ってきた。
(いかん!ここで捕まれば首が飛ぶ!!!)
信長にとっては今も戦の最中である。自分を追う者が現れた事で一層の恐怖心が噴き出してきた。信長は咄嗟に馬にまたがると慌てて馬を走らせた。
(一刻も早く陣地へ戻らねば)
得体の知れない動く箱にぶつかりそうになりながらも素早く駆け回り、死に直面した信長は、走って、走って、走りまくった。
正面、左右から途切れることなく次々と箱が押し寄せ、行く手を阻んで真っ直ぐに走れない。それでも信長は必死に馬を走らせた。
(どうすれば良いんじゃ!道さえもわからん!)
どこまで行っても元の国に戻る道が見つかりそうな気がしない。逃げ回っていても騒ぎが大きくなるだけで、どう対処すれば良いのか全くもって要領を得なかった。せめて一旦この状況を把握し直すために冷静に考える場所が欲しかった。だがその場所すらわからない。走っても走っても解決の糸口は一向に掴めず、気が狂いそうになって叫び声をあげた。
闇雲に走りまわり何度も同じ場所を通り過ぎ、子供たちは泣き声をあげ、次第に追っ手の数が増えてきた。
あても無いまま無我夢中で馬とともに走り続けた。
そして西に傾きかけた太陽に向かって走っていた時である。前方に緑の多く茂る庭園らしきものが見えた。
(あれはどこぞの城の庭じゃ。あそこか)
信長はようやく目指すべき場所を見つけた気がした。その後はひたすら脇目もふらずただ庭園に向け馬を走らせた。
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