レッドな恋。

パン大好き

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レッドな恋。

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 サントリーレッドをこんちくしょうと煽る。言葉は刃だと認めながらも、やはり、こんちくしょうを嚥下する。茶碗には水割り。ウイスキーは割らぬ、薄めぬ、媚びぬ。我が信条の通り貫けば、スピリタス・ストレートでもまだ足りぬ負の心情のはずが、サントリーレッドの、しかも半額の、加えて大阪の意外とおいしい水道水を加えての、茶飲み茶碗に頼りなく揺れる茶色の液体が、こんちくしょうの根っこの部分で揺れまくっている心情を映しているかのようで、ただただ、やる瀬なく。
 
 ここで、名誉のために断っておく。

 サントリーレッドは、確かに安価なウイスキーであり、かつ、今回、近場のドラッグストアで商品入れ替えのため半値のご奉仕価格だったのだが、この酒は決して侮れない奴である。モルトの繊細な風味はさておき(おいっ)、嫌みやえぐみのない素朴な、飾り気のないグレーンの風合いと、圧倒的なアルコール感(おいおいっ)が心地よい。世の中の評価ではコスパ=トリス、コスパ=レッドのように叫ばれているが、経済学的価値云々を差し置いて、正直、飲めるウイスキーだと思う。

 などと書きつつ、手元のフロム・ザ・バレル(ニッカ)を飲んでみると、うおっ。どっしりとした薫煙たる馨りと鼻腔を軽やかにくすぐる揮発性の香りが立体的に立ち上がるではないか。ううむ。もう一度、レッドを煽る。うむうむ。こ奴の味わいは、二次元サイコーで決まりだな(名誉はどこへいった?)。

 こんちくしょう、は、決してレッドに向けられたものではない。賢明な読者様はここまで書いてお分かりだと思うが(むしろ賢明な方ならここまで読まないか。おっと、読んでくださった真の読者さま、申し訳ないです。あなた様は私にとって神様です!)、惚れた女が、いや、いいなと思った女性が、いやいやちょっとばかし好意を持った女の子が、仕事にかなり遅れて来て、うつろな表情で、化粧は滲んでいて、特に目元が腫れぼったくて、まつ毛なんかはくしゃくしゃで、開口一番「なんでもないです」と目を伏せて、すぐさまトイレに駆け込んだりして、俺はどうしようもなく、ただ、こんちくしょう、ああこんちくしょう、となってしまったのだった。


 サントリーレッドを、今度はストレートで煽った。

 むせた。

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