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第一章 悪魔到来
04
しおりを挟む呼吸を整える俺を見下ろして西尾は言った。
「佐倉、俺と付き合え」
無情にもそれは明らかに命令口調で。
俺は西尾を睨みつけた。
好きでもない男にキスされて、あげくにホモになれと言われて平気でいられるほど俺は人間ができちゃいない。
「ふ、ざけんなっ…俺はホモじゃない…!」
朦朧としていた意識が戻ってくると同時に、怒りが込みあげてきた。
俺が何したって言うんだ…―
「ホモじゃなくたって構わねぇ、俺がホモにしてやる」
「なっ…、んなもん誰がなるかよっ!!」
西尾の言葉にカッとなって殴りかかろうとしたら、するりと避けられ逆に首を掴まれて再度、壁に押しつけられる形になった。
「…っ!く、るし…」
西尾の指がぐっと首に食い込む。
「おまえの歪んだ顔見ると、もっと虐めたくなる」
ふっと目を細めて西尾が笑った。
その顔にゾッとする。
コイツ本当に頭がおかしいんじゃないのか。
「佐倉、俺と付き合うよな?」
「…っ」
「付き合うよな」
俺の返事がなかった事に苛ついたのか、首を絞める力が更に強まる。
「ゔぁ…、…っ」
意識が飛びそうになるのを必死でくいとめる。
そろそろマジでやばい。
それでも俺の中にホモになるという選択肢は浮かばなかった。
西尾の手首を掴み爪をたてる。
「…っ!」
不意打ちで絞めつける力が緩んだ瞬間、俺は西尾の股間を足で精一杯蹴りつけた。
「くっ!」
今度は西尾の表情が歪んだ。
完全に首から手が離れ、俺はその場に崩れ落ちヒューヒューと肺に酸素を送り込む。
…本当に死ぬかと思った。
早くこの場から逃げなければ、次は何をされるか分からない。
俺は素早くカバンを掴んでドアに手を伸ばした。
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