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第二章 狂った愛情
03
しおりを挟む雅樹に言われた言葉が頭のなかで何度も鳴り響く。
キモチワルイ─…
それはあの時、俺が西尾に対して思っていたこと。
男同士なんかに興味がなかった俺を、西尾が無理矢理……。
そう、興味なんかない。
俺はホモじゃない。
だけど、見られてしまった。
西尾とのキスを。
男のキスを受け入れている俺を…。
それは言い逃れのできない事実で。
雅樹の目に映った俺は、ホモだった。
雅樹が教室を出ていった後、俺はしばらくその場につっ立ったままだった。
「追いかけねぇの?」
突然かけられた声に俺はビクッとした。
恐る恐る振り返ると、西尾は真っ直ぐ俺を見据えていた。相変わらずその目は恐い。
恐くてなにもできなくなる。
だけど、西尾の問いに俺は答えなかった。
「何とか言えよ」
再度放たれた言葉は、さらに威圧感を増す。
それでも俺は何も答えず、西尾から目をそらして下を向いた。
そんな俺にしびれを切らしたのか、西尾はハァと溜め息をついた。
たったそれだけの事ですら俺の身体はビクッと震える。
「…」
また何かされるのではないかとビクビクしている俺の横を通りすぎて、そのまま西尾は教室から出て行った。
またあの時と同じように教室にひとり。
床に散らばっていた教科書を拾って鞄に詰め込む。
雅樹に何て説明すればいい。
もし本当の事を言ったとしても雅樹は信じてくれるだろうか。
…どうすればいい。
考えれば考えるほど不安になって、俺はその日なかなか眠れなかった。
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