「君」とともに、、、

空音

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第二章 狂った愛情

05

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「俺きのう、見ちゃってさー」


雅樹は俺の方は見ずに、わざと大きな声で言った。

「ここ男子校だからいるんじゃないかとは思ってたけど、まさか潤がホモだったとわなー」


雅樹の言葉に何人かが頷く。

親友だと思ってた。
昨日、あの場では気持ち悪いと言われたけど、雅樹ならきっと俺のことを見放したりしないと信じていた。


信じたい、、今も。

こんな状況になった今でも、まだかすかな期待を持ってしまっている自分がいる。

雅樹なら俺の言うことを信じてくれるだろう、と。


「俺はホモじゃない。」


気がついたら俺はそう言い放っていた。
雅樹の顔をまっすぐ見つめて。

雅樹なら…、雅樹ならきっと違うと分かってくれるはず…



「ぷっ、ははっ…!」


雅樹がふきだしたのと同時に、クラスにいた奴らが一斉に笑い出した。


雅樹は…


雅樹は味方じゃなかった。

俺の期待はあっけなく裏切られた。



「ははっ、あ~マヂうける。『俺はホモじゃない!』だってさ!!」

さもバカにしたように俺のセリフの真似をする雅樹に、周りの奴らは腹をかかえて笑い転げた。


「…っ」

俺は唇を強く噛んでこの状況に耐えた。


羞恥心と自尊心を傷つけられる感覚に打ちのめされていく。

目の前には俺を嘲笑っている雅樹。
拳をグッと握り締めて今すぐにでもコイツを殴りたい。


西尾にキスされた時も、雅樹にそれを見られた時も、俺は完全に被害者だ。

なのになぜ俺がこんな目にあわなきゃならないんだよ。


そもそもの元凶は西尾なのに…!




「そいつの言ってる事は間違ってねぇよ?」

ふいに自分の背後から聞こえた声に、おれはビクッと跳ねた。


「西尾…」

振り返ると、そこにはいつもと変わらず無表情な西尾が立っていた。
 
 
 
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