てるる綴れ

てるる

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ファナティック 2

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「どうせおばあちゃんでしょ?
若いひとでそこまで物知りなひと居ないと思う」

妹よ、おまえは間違っている。
年齢なんか関係ないんだよ。
俺はその美しいひとの時間をいただくに値しない、
彼女に相応しい存在ではないんだ。
いやいや、彼女は俺との交流を心底愉しんでくれている。
決してひとを軽んじたりするひとではないではないか。
問題は俺の中にある。
自分で自分がイヤになるんだよ。
彼女は俺よりはるかに魅力的だから、
彼女の有能ぶりをみせつけられると
俺は自分のいたらなさを知り、
どんどん惨めな気分になっていく。

彼女に望まれてもいない、尊敬される立派な男でいたくて
自家中毒を起こしてしまった俺は、とうとう
メールが書けなくなった。


彼女からのメールも個人的なことから、季節のお便りに変化し、
数を減らし、ついに来なくなった。
きっと俺の事情を察してくれたのだろう。
賢いひとだからな。



「おにぃはいつも一方通行の恋だね」

妹が苦々し気に言う。

「勝手に好きになって、勝手に厭きてるんじゃん」


違う。
厭きたわけでないんだ。
いろいろ考えることがしんどくなってしまったんだ。


「同じこと」


わかっちゃいるんだ、妹よ。
俺が好きになる女性は神棚に祀りたいようなひとだから、
神格化してしまうのは無理からぬことなんだが、
確かに、神様とは恋愛できないよな。

結局、俺は女性をリスペクトしているようでいて、
俺の理想を押し付け、一個人として認めていないのかもしれない。

バツイチで学べよ、俺。


なんのかんの言っても、結局女は女同士、男は男同士、
と、彼女も言っていたから、この先も野郎と一緒に
居るのが俺は楽でいいのかもしれない。


そんなことをまたメールしてみようか。
音信不通になって結構経つから、俺のことなんか
忘れちゃってるかな。
いや、彼女は気にしないだろう。
それどころか、長の無沙汰をなじることもなく
笑顔で受け容れてくれるだろう。
自惚れではない、彼女はそういひとだ。
書いても書かなくても、彼女は俺の心の動きなど
お見通しなんだろうな。
俺が大好きになったひとだから。


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