45 / 47
カシマさん、またね
しおりを挟む
俺がその知らせを受けたのは、OB会のしばらく後のことで、
妊娠3ヵ月目も終わる頃のことだった。
どうしてもっと早く教えてくれなかったのかと
奥さんに訊けば、また流産したら、
テルくんが落ち込むから、と
お医者のお墨付きをもらうまで黙っていようと
思っていたらしい。
ふたりのことなのに、ひとりで抱え込むとは
あんまりじゃないかと、疎外感を覚えたが、
一番大切なひとにそんな遠慮をさせる俺のほうに
落ち度があるのは明らかだ。
俺は己の不甲斐なさを責めた。
夫として一家の主として、情けない限りだ。
奥さんは黙っていてゴメンね、と謝ったが、
目には笑みが宿っている。
避妊に失敗して得た宝物、と言える。
きっとこの世に出てこれなかった最初の子が
リベンジを果たしてくれたのだろうと俺は思った。
俺はもう大和ひとりで十分だと思っていたが、
奥さんは、ずっと失われた命の欠片を
取り返したいという思いでいっぱいだったようだ。
本当に欠片ほどの命だった。
でも、その喪失の大きさは言葉にならない。
奥さんは悲嘆にくれる俺を気遣って何も言わなかったが、
忘れたことはなかったのだろう。
たった1回の自然な流産とはいえ、
自分が母体として機能不全であると思い極め、
受け容れがたいという思いもあったようだ。
それが雌としての本能か。
俺は奥さんのお腹に語りかけた。
慌てるな、ゆっくり居ていいんだぞ!
妊娠3ヵ月目も終わる頃のことだった。
どうしてもっと早く教えてくれなかったのかと
奥さんに訊けば、また流産したら、
テルくんが落ち込むから、と
お医者のお墨付きをもらうまで黙っていようと
思っていたらしい。
ふたりのことなのに、ひとりで抱え込むとは
あんまりじゃないかと、疎外感を覚えたが、
一番大切なひとにそんな遠慮をさせる俺のほうに
落ち度があるのは明らかだ。
俺は己の不甲斐なさを責めた。
夫として一家の主として、情けない限りだ。
奥さんは黙っていてゴメンね、と謝ったが、
目には笑みが宿っている。
避妊に失敗して得た宝物、と言える。
きっとこの世に出てこれなかった最初の子が
リベンジを果たしてくれたのだろうと俺は思った。
俺はもう大和ひとりで十分だと思っていたが、
奥さんは、ずっと失われた命の欠片を
取り返したいという思いでいっぱいだったようだ。
本当に欠片ほどの命だった。
でも、その喪失の大きさは言葉にならない。
奥さんは悲嘆にくれる俺を気遣って何も言わなかったが、
忘れたことはなかったのだろう。
たった1回の自然な流産とはいえ、
自分が母体として機能不全であると思い極め、
受け容れがたいという思いもあったようだ。
それが雌としての本能か。
俺は奥さんのお腹に語りかけた。
慌てるな、ゆっくり居ていいんだぞ!
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる