せんせい、僕に描き方を教えてください

てるる

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苦楽

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偏差値の高低に関係なく、やたらに
試験に出るやら、出ないやらを気にする生徒が居る。

試験に出ないことが、重要事項でないと思うな!

これは、どの教科の先生も頭を痛めている。
ついこの前も、美しい眉を顰めて文子先生がこぼしていたばかりだ。


「棒暗記なのよね」


だから、テストで点数が取れても、理解できているとは
限らない。
学力が定着しないのだ。
だが、この学校の生徒たちは就職のための
校内選抜が最大の関門であるから、
理解度よりも、成績重視なのだ。
なんだか、ひどく本末転倒だ。
いつも彼らに、雇用者の立場に思いを馳せ、
身の振り方を考えるように言うのだが、
それが届くような生徒は、最初からしっかり
どんな課題にも前向きに取り組んでいるんだよな、
これが。

学校でも塾でも、すぐにここがポイントだ、分析だ
データだ、と言いたがるが、効率重視の
促成栽培式の学力は所詮そんなもんだと
俺は思う。



誰でも簡単に小説を描けるテンプレ。
とても魅力的な響きでは、ある。
しかし、創作のツールとして、ペンと原稿用紙から、
ワープロに移行するのとはわけが違う。
創作の根幹にかかわることだからな。


「もちろん、描きたいことがあって、の大前提だが」


俺は息を継いだ。
翔は真面目くさって姿勢正しく座っている。


「自分で試行錯誤したほうが、絶対身になるんだよ」


誰かが用意した、使い勝手のいいテンプレではなく、
自分で苦労して作り上げた雛形のほうが
はるかに尊いんだ。
仮に遠回りであっても、自分でみつけた道は
確実に行きたいところに連れていってくれる。

そもそも、楽して手に入れられるものをひとは
大切にするだろうか。
苦心惨憺した結果こそ、達成感が得られるものだろう。


翔が重々しく肯いた。


「さすが、ダテに年はとってませんね」


ん?あまり褒められたような気になれないのは
何故だろう。



「でも、やっぱり読者を物語に引き込むノウハウは
あるのでしょうね?」


「それは、ある」


と、思う。
俺は、実体験切り売り型だから、わざわざ
意識的にそれをすることはないのだが、描いているうちに、
面白い展開になるよう脚色していっているのは
間違いない。
ほぼ無意識と言ってもいいので、これを意識的に
できるといいのかなあ。
そもそも、あまり上達する意欲がないのがいけない気がする。
もしうまくなるつもりがあったら、もっと読者を増やし、
厳しいコメントをもらったほうが、成長の糧になるのだがな。
それができないチキン・ハート。

10代の頃、ちょっとした作文を書いて、上の姉に褒められ、
下の姉に、てけれつのぱあにディスられたのが
トラウマになっている気がする。
順番が逆だったらよかったのかもしれない。

文を書くことは一切苦にならない。
受験時代も小論文は得意中の得意だった。

まあ、小論文が得意なだけで、
姉ふたりに偏差値では遠く及ばず、
京都の私立大学に進学する羽目になったんだが。
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