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カケルの告白2
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「もうひとつ、僕が低偏差値の工業高校を選んだわけは、
両親が大卒だからです。
あてつけですね。
大卒の値打ちのないひとたちでしたから、
僕は同じになりたくなくて、絶対に大学なんか行ってやらないと
心に固く決めていました。
しかし、それがとても愚かな考えであることに
気づかされました。
先生たちのおかげです。
僕は、自分の知るたったふたりの大卒だけで、
すべてを決めつけていることをたいへん恥ずかしく
思いました。
先生も文子先生も大卒で、とても幸せそうです。
僕もそうなれるかも知れないと思いましたし、
そうでありたいと思いました。
後ろ向きな気持ちで、高卒で働いていたほうが、
負けだった気がします。
いえ、もうこの際、勝ち負けなんかどうでもいいです。
これからは、誰かの影響を前提にせず、
今の自分がどうしたいか、ということだけ、
いつも考えていきたいと思います。」
涙で曇って何も見えない。
俺は眼鏡をはずして、目を拭った。
そして、また目を疑った。
「そろそろ先生が涙を絞り始めた頃でしょうか」
ん?
「先生は、ご自分のいやらしい官能小説を
お手本に、小説の技法などを教えてくださいましたが、
正直、ほとんど参考になりませんでした。
あれから卒業するまで、ずっと作品を描かなかったのは、
描くつもりがなかったからです。
そもそも、僕は創作衝動が芽生えていたわけでは
ありません」
鼻水と涙が逆流した。
「ちょっと先生をからかってみたかっただけです。
このあたりで、涙が引っ込んだところでしょうか。
先生は開いた本ですから。」
今度は血が逆流した。
「年長者である先生の作品を批評するのは
僭越なので、教えを乞う形で、先生の弱点を白日の
元に晒して差し上げて、今後の成長の糧にしていただければ、
と思っていました。
創作衝動はないと申しましたが、
僕が初めて描いた小説、のようなものは
お気に召しましたか?
ショートショートとか、書簡形式になるのかな。
まあ、小説にはいろんな形があっていいそうですから。
ヘミングウェイだったかな、わずか5語で書いちゃったり
したのは。
なかなか面白かったので、今後も機会があれば、
何か描いてみたい気はしています。
冗談はさておき。
先生が一緒に過ごしてくれた昼休みの
時間は、僕の宝物です。
特に、先生がおっしゃった『近道をするな!』
というお言葉は、響きました。
自分で切り拓く道を往きたいと思います。
これからも、趣味の悪い官能小説を描いていてくださいね。
どんなにHNを変えても、きっと僕は先生を
見つけ出すことができると思います。
先生、ちっとも上手にならないからね。
僕はこれからも、楽しいときつらいとき、
たくさんいい本を読んでいきたいと思います。
本を読む愉しみを共有することができて
うれしかったです。
橋詰翔
追伸。
あまり言いたくないけど、全然怒らなかった先生は、
女子にも結構人気がありましたよ。
怒鳴り声というものは、誰が聴いても嫌なものですから」
両親が大卒だからです。
あてつけですね。
大卒の値打ちのないひとたちでしたから、
僕は同じになりたくなくて、絶対に大学なんか行ってやらないと
心に固く決めていました。
しかし、それがとても愚かな考えであることに
気づかされました。
先生たちのおかげです。
僕は、自分の知るたったふたりの大卒だけで、
すべてを決めつけていることをたいへん恥ずかしく
思いました。
先生も文子先生も大卒で、とても幸せそうです。
僕もそうなれるかも知れないと思いましたし、
そうでありたいと思いました。
後ろ向きな気持ちで、高卒で働いていたほうが、
負けだった気がします。
いえ、もうこの際、勝ち負けなんかどうでもいいです。
これからは、誰かの影響を前提にせず、
今の自分がどうしたいか、ということだけ、
いつも考えていきたいと思います。」
涙で曇って何も見えない。
俺は眼鏡をはずして、目を拭った。
そして、また目を疑った。
「そろそろ先生が涙を絞り始めた頃でしょうか」
ん?
「先生は、ご自分のいやらしい官能小説を
お手本に、小説の技法などを教えてくださいましたが、
正直、ほとんど参考になりませんでした。
あれから卒業するまで、ずっと作品を描かなかったのは、
描くつもりがなかったからです。
そもそも、僕は創作衝動が芽生えていたわけでは
ありません」
鼻水と涙が逆流した。
「ちょっと先生をからかってみたかっただけです。
このあたりで、涙が引っ込んだところでしょうか。
先生は開いた本ですから。」
今度は血が逆流した。
「年長者である先生の作品を批評するのは
僭越なので、教えを乞う形で、先生の弱点を白日の
元に晒して差し上げて、今後の成長の糧にしていただければ、
と思っていました。
創作衝動はないと申しましたが、
僕が初めて描いた小説、のようなものは
お気に召しましたか?
ショートショートとか、書簡形式になるのかな。
まあ、小説にはいろんな形があっていいそうですから。
ヘミングウェイだったかな、わずか5語で書いちゃったり
したのは。
なかなか面白かったので、今後も機会があれば、
何か描いてみたい気はしています。
冗談はさておき。
先生が一緒に過ごしてくれた昼休みの
時間は、僕の宝物です。
特に、先生がおっしゃった『近道をするな!』
というお言葉は、響きました。
自分で切り拓く道を往きたいと思います。
これからも、趣味の悪い官能小説を描いていてくださいね。
どんなにHNを変えても、きっと僕は先生を
見つけ出すことができると思います。
先生、ちっとも上手にならないからね。
僕はこれからも、楽しいときつらいとき、
たくさんいい本を読んでいきたいと思います。
本を読む愉しみを共有することができて
うれしかったです。
橋詰翔
追伸。
あまり言いたくないけど、全然怒らなかった先生は、
女子にも結構人気がありましたよ。
怒鳴り声というものは、誰が聴いても嫌なものですから」
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