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第4話

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私は普段から、使用人スペースをふらふらしているから、食糧庫あたりにいても大丈夫だよね。

「それでも、俺が王様になったらやりたいことがまだまだたくさんあるんだ。聞いてくれるか?」

『ったくもー、うるさいね、このクソ馬鹿王子。考えがまとまらないじゃない』
ではなく、
「あら、他にも考えがあるのですか?ぜひ、聞かせてください」

「そうか、聞きたいか(ドヤァ)」
「ええ、聞きたいわ」(訳:どうせ、クソな案なんでしょう。さっさと、話せ)
「そうだな、じゃあ、とびきりの案を。学校を作ろうと思うんだ。子どもたちに教育は大事だろう?」
「すごいわ。そんなことかんがえているんですね」(これ、本心)
「だろう。子どもたちには教育が必要なんだ。子どもたちと言うか全国民に教育が必要かもしれない」
「ええ、私もそう思いますわ」(これも、本心)

現状、この国の識字率はとても低い。字を読めないと、字を読める一部の人に都合よく使われてしまう。
だから、字が読めた方が絶対にいいのだ。

「この期のやつらは俺たち王族に対する敬意が足りない。だから、学校を作って俺たち王族の素晴らしい功績の数々を教育しないといけないのだ(ドヤドヤァ)」
「そなんですね」

ちょっと待って。本心から感動した私の気持ちを返して。
"学校"っていったら、読み書きそろばんを教えてくれる学校だと思うだろう普通。
何が、王族への敬意が足りないだ!この、くそが。
てめえら王族一族は特に何もしていないだろう。
これで、尊敬を十分に集めていたら、逆におかしいだろう。

「俺ら王族のことを十分に尊敬して、身を粉にして働く。それが、よい国民の姿だと教え込まないとな」
「そうですね。他にはどのようなことを考えているのですか?」
やばい、頬がひくひくしている。
何とか、微笑みを保っているけど、今すぎ『このクソ馬鹿ボンボン王子』って殴り倒したい。
殴り倒したいくらい、こいつの発言はイライラするけど怖いもの見たさでついつい聞いてしまう。

「そうだな。市場に本をたくさん流通させたいんだ」
これがまともな人間の発言だったら、超、首を縦に振るのに。
本を読むと色々なことを知れていいもんね。勉強になる。
それに、恋愛小説でもキュンキュンできるし、冒険小説ならドキドキできる。今は金持ちの楽しみでしかないけど、もっと流通したら嬉しいな。
それで、本が流行ったら自然と識字率も上がるかもしれないしね。

きっと、こいつはドヤ顔でこう言ういうはずだ。
『俺たちの絵や功績を書いた本を各家庭に一冊ずつ配るんだ』
さてさて、答え合わせといきましょうか。

「俺たち王族の肖像画や功績を書いた本を各家庭に一冊ずつ、いや、一人あたり一冊ずつ配るんだ」

おしい。一人に一冊ずつかー。さっきは出会って数十分でてめえの気持ちなんて分かるわけないだろう(怒)って思ったけど、こいつの思考回路がクソ過ぎて分かっちゃったよ。もう、嫌だな。こんなやつの思考回路分かりたくもないのに。
そのお金、どこから出てくるの?本って魔法でポンッって出てくるわけじゃないんだよね。

国民が汗水たらして稼いで金を税金として奪っていって、欲しくもない本を配るの?

ふざけんじゃねえよ。控えめに言って、さっさと消えてください。あなたには国を治める資格はありません。

「出来上がったら、初めに見たいわ。だって、一番に読みたいもの」(どうして、こういうお世辞がさらっと浮かんでくるんだろう。私、天才)


こんなやつが将来治める国になんていたくないよ。
逃亡するなら国外一択だな。
きっと、こんな国のことだもん。国境の警備は手薄、スッカスカって感じだし、簡単だよね。
ていうか、なんで今までこの国攻められてないんだろう?
攻める価値もないくらいにクソなのか?
本で読んだことしかないけど、他の国の方が色々産業とか発展していたし……。

この国って、他の国と比べてどうなんだろう?
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