ドタバタ婚約破棄騒動~誰にも迷惑をかけない婚約破棄を~

玄米茶

文字の大きさ
1 / 1

しおりを挟む

「アレン」「リリアーネ」
『婚約破棄をしよう』

アレンとリリアーネが通うロット学園のホールに2人の声が響き渡った。

ロット学園は地方領主の子女や財を成した商人が通う、”そこそこの”身分の子女が通う学校だ。
ホールではつい先ほどまで行われていたダンスパーティーの片づけが行われているため、かなりの人数の生徒が残っていた。
片付けのために残った生徒は談笑しつつ、床の掃き掃除をしたり、ホールから運び出していた机をもとの位置に戻したりしていた。

当然、『婚約破棄をしよう』なんて声がホール中に響き渡れば、片付け中の生徒全員が、リリアーネとアレン2人に注目するわけで。
生徒の視線が2人に集まった。

リリアーネはとても高揚していた。
ついに、ついにこの時が来たと!!
アレンとの婚約を破棄するため、何年計画を練ってきたことか。
多数の生徒の注目を集める中、ようやくアレンとの婚約が解消できる喜びと、多くの人から注目を集める快感に浸っていた。

アレンは内心ドキドキしていた。
婚約破棄を成功させるために、練り上げた段取り、覚えこんだセリフを忘れてしまわないか、懸命に今までの練習を反芻する。
多数の生徒の注目を集める中、ようやくリリアーネと婚約破棄ができる喜びと、多くの人か注目を集める緊張感でそわそわしていた。

「アレン、私はあなたの行動にもう耐えられない」
「リリアーネ、それは僕のセリフだよ」

「アレン、音楽の時間のあなたのバイオリンの演奏、とても素晴らしかったみたいね」
「リリアーネ、体育の時間の宙返り、とても素晴らしかったと聞いたよ」

「わたしね、自分より音楽の才能がある人と結婚したくないの」

ホールのどこかで、「それなら一生独身だろ」「リリアーネより音楽の才能がない人を探す方が難しいよ」「そうだ、そうだ」という声が聞こえてきたが、リリアーネは涼しげな顔で無視する。

「僕もだよ。校庭でも廊下でも気が付いたら宙返りしたり、バク転をしている人とは結婚したくない」

また、ホールのどこかで「それは分かる」「私も思っていた」「もう少し落ち着いた方が良いよね」という声が聞こえてくる。リリアーネは右手に「ハー」と息を吹きかけているが、これは何の予兆だろうか?

「というわけで、私たちの相性はとても悪いから、婚約を破棄したい」
「ここのホールにいるみんなにはその証人になってほしいんだ」


噂を聞きつけて戻ってきた生徒や不穏な空気を察知してきた先生も合わさって、ホールはかなりの人口密度になっていた。

リリアーネの親友エレナがポツリといった。
ホールにいる全員の気持ちを代弁した言葉だ。

「婚約破棄の理由、くだらなすぎかよ」

アレンの親友ダンも言った。

「さすがにその理由じゃ、婚約破棄できないんじゃないか」

『・・・・・・』

あれっ?おっかしいな。
計画は完璧だったはずなのに、何だろう。この空気。リリアーネは恨みがましそうにアレンをにらみつける。
そして、せっかく大勢の注目を浴びているからと、最近新記録を更新中の技、連続バク転でホールの出口に向かう。
まるで、モーセのように人波が半分にわれ、出口とリリアーネを結ぶ空白地帯ができる。

えー。しっかり考えたつもりだったんだけどな。
勇気を出して、ホールでこんな大勢の注目を集めて頑張ったのに……。
緊張が極限まで達し、ポケットに常備しているハーモニカを一心不乱に吹き鳴らしつつ、こそこそと出口に向かい始めた。

「運動神経に極振りしたリリアーネと音楽センスに極振りしたアレンか」
「2人がどうしてあんなに婚約破棄したがっているのか、知らないけど、結構いいカップルだと思うんだけどな」

これはロット学園の風物詩。
1週間に一回は起きる、日常茶飯事。

そう、これはリリアーネとアレンがいかにうまく婚約破棄をできるか試行錯誤する物語。

そして、2人の思惑とは別に、リリアーネとアレンはバカップルという共通認識がロット学園中で形成されていく。




しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

今、目の前で娘が婚約破棄されていますが、夫が盛大にブチ切れているようです

シアノ
恋愛
「アンナレーナ・エリアルト公爵令嬢、僕は君との婚約を破棄する!」  卒業パーティーで王太子ソルタンからそう告げられたのは──わたくしの娘!?  娘のアンナレーナはとてもいい子で、婚約破棄されるような非などないはずだ。  しかし、ソルタンの意味ありげな視線が、何故かわたくしに向けられていて……。  婚約破棄されている令嬢のお母様視点。  サクッと読める短編です。細かいことは気にしない人向け。  過激なざまぁ描写はありません。因果応報レベルです。

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

「庶子」と私を馬鹿にする姉の婚約者はザマァされました~「え?!」

ミカン♬
恋愛
コレットは庶子である。12歳の時にやっと母娘で父の伯爵家に迎え入れられた。 姉のロザリンは戸惑いながらもコレットを受け入れて幸せになれると思えたのだが、姉の婚約者セオドアはコレットを「庶子」とバカにしてうざい。 ロザリンとセオドア18歳、コレット16歳の時に大事件が起こる。ロザリンが婚約破棄をセオドアに突き付けたのだ。対して姉を溺愛するセオドアは簡単に受け入れなかった。 姉妹の運命は?庶子のコレットはどうなる? 姉の婚約者はオレ様のキモくて嫌なヤツです。不快に思われたらブラウザーバックをお願いします。 世界観はフワッとしたありふれたお話ですが、ヒマつぶしに読んでいただけると嬉しいです。 他サイトにも掲載。 完結後に手直しした部分があります。内容に変化はありません。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

双子の姉に聴覚を奪われました。

浅見
恋愛
『あなたが馬鹿なお人よしで本当によかった!』 双子の王女エリシアは、姉ディアナに騙されて聴覚を失い、塔に幽閉されてしまう。 さらに皇太子との婚約も破棄され、あらたな婚約者には姉が選ばれた――はずなのに。 三年後、エリシアを迎えに現れたのは、他ならぬ皇太子その人だった。

処理中です...