どうやら世間ではウイルスが流行っているようです!!

うさ丸

文字の大きさ
21 / 21

020. 愛ってイタイ・・・

しおりを挟む
 何で今さらあんな記憶を思い出したんだ。
 そんな風に考えていると目の前の映像がスゥー・・・と薄くなり色が消え黒一色に塗り変えられた。
 けれど、一点の小さなひかりだけが残っていた。
 俺はその灯りに手を伸ばすと灯りは大きくなっていき、俺は灯りに呑み込まれていった。

 「・・・重い」
 身体が重くて動かない。何故だ?
 それに何か生臭い・・・。
 「!!?」
 原因が分かった。
 腹の上でくつろぐ生物・・・、そう、我が愛犬のコロ助だ。
 「コ、コロ助?」
 声に気づいたコロ助はペロペロと俺の顔を嘗めた。
 「もういい、もういいから・・・」
 嘗めるのを辞めないコロ助。

 「良かった、目が覚めたのね」
 女性が覗き込んできた。
 この女性は確かーーー・・・。
 「美咲・・・さん?」
 そうだ、鉄也さんの奥さんだ。
 段々と意識が戻ってきた。辺りを見渡すと見慣れない天井が目に入った。どうやら、屋内に寝かされているらしい。
 「今、桜川先生を呼んで来るから」
 鉄也さんの奥さんは扉を開けて先生ー先生ーと誰を呼びに行った。
 腹の上にいるコロ助に話しかけた。
 「ずっと、ソコにいたのか?」
 コロ助の顔を触るとガブリッと腕に噛みついた。甘噛みだったので痛くはなかった。それでも触らずにはいられない。
 ずっと触っていても飽きるコトはない。嫌がる仕草が心を刺激する。触っては噛まれ、触っては噛まれを暫く続けているとパタパタと音が近寄って来る。
 「目が覚めたって本当ですか?」
 美咲さんに連れられ入って来たのは若い男性と白髪混じりの年配の女性だった。
 「お久しぶりです、桜川雅之まさゆきです。覚えてますか?」
 桜川・・・確か、麓の町医者の名前だったはず。
 「もしかして、麓の?」
 「はい、その息子です」
 そういえば、研修から帰って来て実家の手伝いをしてるって随分前に聞いた気がする。
 「お身体は大丈夫ですか?」
 若い男性の傍にいた年配の女性が声を掛けてくる。
 この人は、母親かな?
 上体を起こし受け答えをすると診察の邪魔にならないようにコロ助を退かそうとしたが抵抗された。
 「コロ助?」
 引っ張っても揺すっても動く気配がなかった。
 「ガウッ!!」
 退かそうとする俺の手が触れる前にコロ助が吠えた。
 え?何で?
 「どうしたんだコロ助?」
 牙を剥き出しに唸り声を出す。これでは診察が出来ないだろう。
 「貴方のコト守っているんですよ」
 年配の女性がクスクスと笑った。
 「貴方が運び込まれてから、ずっと傍を離れないんですって」
 
 「・・・コ、コロ助・・・」
 涙で瞳が滲む、普段は素っ気ないのに・・・そうか、俺のコト大事に思ってくれていたんだな~とコロ助への愛を再確認した。
 「コロ助ーーーっ!!」
 
 ガブリっ!

 抱きしめようとした俺の腕に噛みついた。
 「・・・」
 うん、コロ助だ。こいつは間違いなくウチのコロ助だ。主人の俺に容赦無く噛みつく犬はコイツだけだろう。
 「そのままで大丈夫ですよ」
 年配の女性が笑顔で対応してくれた。
 「・・・すみません」
 いたたまれず小さく謝罪した。
 診察が終わると部屋の外からバタバタと足音が聞こえてきた。
 「目が覚めたって本当かい?」
 「樹くん、大丈夫かい?」
 「身体はもう良いのかい?」
 集落の人達が様子を見に来たようだ。
 「お騒がせしてすみません、何とか生きてます」
 お見舞いだと言って沢山の物を頂いた。
 「お前達、見舞いも程々にしろよ。樹が困っているだろ」
 堀さんも俺を心配してか様子を見に来てくれた。
 「身体はもう良いのか?」
 「はい、二、三日安静だそうです」
 堀さんはお見舞いに果物とコロ助用に猪肉の燻製ジャーキーを持って来た。
 お肉に釣られ、腹の上からヒョイっと退いたコロ助は猪肉をむさぼり堪能した。
 「あれだけやって、結局肉かよ!!」
 
 「それより、コロ助の方も身体は大丈夫のようだな」
 「え?」
 どういう事か詳細を堀さんが教えてくれた。
 鉄也さんの娘、優子を集落の中に入って来たモノから守る時に突き飛ばされ背中を強打して気を失ったとの事だった。
 「コ、コロ助お前大丈夫なのか?!」
 無事か確かめようと身体を触ったら・・・ガブリっ!!とまた噛まれた。
 今度のは、ちょっと痛いぞ。
 「この分なら大丈夫だとは思うが塗り薬持って来たから、塗っとけよ」
 動物用の塗り薬を頂いた。
 飲み薬も出したが薬だけは器用に残すし包帯巻いても嫌がって外したり逃げる為に塗り薬を塗ったのだと聞いた。
 「後で薬、飲ませておけよ」
 「す、すみませんお手数掛けて・・・」
 気にするなと言って堀さんは帰って行った。
 「ああ、それと後で鉄也の娘にも会ってやれよ」
 優子ちゃんに?
 「実はあの子、塞ぎ込んじゃって、まだ泣いているのよ」
 母親の美咲がハァ~と深いタメ息をついて困っていたようだった。
 「自分の生で貴方に怪我させたって、落ち込んでるのよ」
 「怪我は自分でおったモノですから優子ちゃんは関係無いですよ、むしろ優子ちゃんに怪我が無いかの方が心配ですよ」
 「大丈夫、貴方のお陰で怪我一つなかったわ。今、夫が傍にいて慰めているのよ」
 子守りは大変だーってぼやいていたのよと笑いながら話してくれた。
 「ハルも捕まってるから、これから迎えにいかにゃあ~」
 と言って帰って行く堀さんだった。
 

 集落の人達のお見舞いも済み、布団で横になっていた。
 カタッカタッカタッと決まった感覚で聞こえてくる音以外、この部屋からは何も聞こえない。
 静まり反った部屋に飾られていた大きな古時計が動いている。
 (何か急に静かだと落ち着かないなぁ~)
 畑の方は大丈夫かな?
 ポッカリ空いた空白の時間に手持ち無沙汰を感じて中々、眠れずにいた。

 コン、コン、・・・

 「田中さん、今、大丈夫ですか?」
 部屋の戸を引いて声を掛けて来たのは診察してくれた桜川先生だった。
 「はい、どうぞ」
 桜川先生に連れられ入って来たのは自衛隊の真壁さんと桃山さんの二人だった。
 「お身体の方は大丈夫ですか?」
 「大丈夫ですよ、元々、大した怪我はしていません」
  真壁さんと桃山さんは顔を見合せホッとしたようだが、真壁さんは真剣な面持ちで話し始めた。
 「集落の方から大体のお話しは伺っています。それを踏まえて、もう一度皆さんとの話し合いの機会を設けさせて頂きました。」
 「近い内に二回目の話し合いをさせて頂きます。」
 
 「分かりました、自分も近い内に今後の事について話し合いたいと思っていたので、有難いです」
 今後の事?と二人は目が点になっていた。
 「人の数が急に増えたので、きっと色々な物が足りなくなったり必要な物が出て来ると思います。集落に移住してて二年、新参者ですが田舎暮らしって結構大変なんですよ」
 
 そう、田舎暮らしとは時に不便なモノである。その不便さを楽しみ生活していくのが醍醐味である。

 「・・・」
 その前に鉄也さんの娘をどうにかしないと・・・。
 
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密

まさき
青春
 俺は今、東大院生の実験対象になっている。  ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。  「家庭教師です。住まわせてください」  突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。  桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。  偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。  咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。  距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。  「データじゃなくて、私がそう思っています」  嘘をついているような顔じゃなかった。  偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。  不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。

処理中です...