魔法の魔ローダー✿セブンリーファ島建国記 弥生史上最悪の悪役令嬢と記される最強魔力少女は最愛の不死従者を手に入れて破滅フラグを叩き壊します!

佐藤うわ。

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I ニナルティナ王国とリュフミュラン国

ニナルティナ軍壊滅 1 電撃を撃ってみましょう、 砂緒さま助けて… .

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「お、こんな所に下に降りれそうな穴がありますね、ちょっと行ってみます」

 砂緒すなおがフルエレの腰掛ける椅子の後ろに小さな穴を発見し早速降りて行く。

「ちょっと! ちょっと、横に居てよどうして行っちゃうの!」
わたしくの言う事は一切無視する癖に勝手ですね!」
「怒っているのね? ごめんなさい」

 砂緒が梯子を伝って降りると自動的に照明が点灯し、上の座席と同じ様な空間が存在した。

「こっちにも座席がありましたので、私はこちらに座っておきますね」
「…………そう。あ、撃って来た! 下で魔戦車が凄い撃ってる!」

 魔ローダーの脚部に向かってニナルティナ軍の魔戦車と攻城攻撃魔法が乱打されるが一切何の効果も無く弾かれて行く。

「本当ですねえ、脚がありますね。どうやら魔ローダーは人間型のようですね。しかしどうやって動かすのでしょうか? レバー的な物やボタン的な物がいっぱいあるのですが……」

 砂緒は目の前の二本の操縦桿的な物を軽く握ってみる。

「下手に動かして倒れたりしたら嫌ですよねえ」
「ちょっと! 砂緒見てみて! 砂緒が座ってから手の先から電気が出てるよ」

 砂緒はレバーを触る手から軽く電気が出続けている事に気付いた。試しに操縦桿から手を離してみる。すると大きな窓の様なモニター上の巨大な手からの放電は止まった。どちらにしてもフルエレの座席には影響は無かったようだ。

「どうやら、私の能力をトレースして拡張している様です」
「ちょ、ちょっと目の前に手の先が! 多分顔の目の前に手を持って来たのだと思うけど、どうやって動かしたの?」
「へ? 私何もしておりません。ただ握りながら、手の先が見たいなあ……と」
「それだわ! 操作とか関係ないのよ、願えばいいのだわ、やってみます」

 魔ローダーの腕が体操の様に上げられたり下げられたり奇妙な動きを繰り返す。

「な、何だ! 何かの信号なのか!? 全員警戒しろ!」

 ニナルティナ軍の指揮官達が警戒して身構える。

「私の電気攻撃が拡張されるなら、いっちょ魔戦車に撃ってみます。フルエレ見てて下さい!」

 砂緒がレバーを握る手で放電を開始すると、再び魔ローダーの手から同じように放電を開始する。そのままゆっくりと片腕を真っすぐ天に掲げた。砂緒がそのまま放電のイメージを強めると、指先から天に向かって伸びる雷の様に、夜空の雷雲に太い稲妻が何本も吸い込まれて行く。フルエレは突然モニター上の魔戦車や兵隊達が攻撃範囲に入って行くのに気付いた。

「こ、これは何なの!? 怖い……」
「な、何が起こっている! 空が光っている!」

 兵達が攻撃も忘れて異様な光景を見上げて動けなくなっている。

「イェラの痛みを知れ!」

 砂緒は突然凄みのある顔になると、思い切り腕を振り下ろすイメージを抱いた。
 カッッッ!! ズドドドドドオオオオオオオォオオオオオンンンンンン!!!!!

「きゃあっ!!」

 モニター越しでも真っ白になる様な凄まじい閃光の後、至近での落雷など比べ物にならないくらいの遠くの都市にまで届きそうな地響きの様な轟音が鳴り響く。しばらくしてモニターの焼き付きの様な現象が明け、ようやく二人は周囲の状況を確認しようと必死に画面にかぶりついた。

「あ、あれ、魔戦車隊のみなさんが居ませんが……」
「嘘、信じられない……なんて事」

 二人が見たのは、先程まで激しい攻城戦を繰り広げていた二十両程の魔戦車と、その周辺に展開していたおびただしい数の兵員が殆ど消えた空間だった。地面のあちこちに無数の穴が開き、そこから黒い煙がしゅうしゅうと立ち上っている。運よく範囲指定のカーソルから逃れた兵達が綺麗に助かり、衝撃や恐怖で倒れ腰を抜かし驚愕の顔で後ろにずり下がって行く。

「ほほう。これは良いですね……確か東面の森や各城門にはまだまだ沢山敵兵が居ると思います。早速根こそぎ消して行きましょう! わくわくしますね、しかしその前に! ここにも動いている者がまだいますね、潰しておきましょう!」
「そ、そんな……これを私達がやってしまったの……砂緒……だめ、やめて……お願い」

 フルエレは恐怖で両手で顔を覆った。同時に魔ローダーの脚部がゆっくりと持ち上がり、腰を抜かし動けない敵兵達の頭上に黒い影が迫った。


「キャーーーー!!」
「今の音は何ですの! 城は大丈夫なのですか!?」

 城の上階の一番奥まった窓の無い広間に、王女七華しちかリュフミュランを中心に貴族の娘や侍女達が固まり避難していた。敵兵が城の中に攻めて来たとして、一番最後まで生き残る様にという配慮だったが、もはや逃げ場が無い空間でもあった。何の情報も無い空間で女達はガタガタ震えながら口々に恐怖を訴える。特に魔ローダーが発した巨大な雷撃の音と衝撃は室内の女達を恐怖のどん底に叩き込んだ。

「もう私達死ぬのよ!」
「いやよまだ死にたくない! こんな事なら言い寄る男達と契り倒せばよかったのですわっ!」

 恐怖の余り錯乱し、あられもない事を叫び床に崩れ落ちる華麗なドレス姿の貴族の娘。

「破廉恥な事を言うのはおよしなさい! 貴族の娘としてしゃんとなさい」

 姿勢を正し、身動ぎせず周囲の者を叱りつけた七華王女だが、実は内心全く同じ事を考えていた。

(まさか……私がこの様な事で……命を落とすなど……そんな事……砂緒さま来て下さい)

 何故か七華は先程からずっと砂緒がドアを開け、颯爽と助けに来てくれる妄想に耽っていた。
 バンッ
突然ドアが開き一斉に振り向く七華と室内の女達。視線の先には床に倒れる数人の衛兵を避けながら、あたかも自分の部屋の様に普通に入って来る三毛猫仮面が居た。

「おお、麗しの七華王女、こんな所にいましたか」

 マスクで唯一隠れていない口元で、おぞましく舌なめずりしながら七華王女に向かって来る三毛猫。

「ス、スピナ来なさい!」

 七華が立ち上がって叫んですぐにハッとする。スピナは自分の言葉を無視してニナルティナ北の半島の発掘現場に正規軍と一緒に向かっていたのだった。いつもいつも役に立たないと心の中で怒りが渦巻く。三毛猫が悠然と進むと、周囲の女達は無言で避けて行く。

「な、何をするのですか?」

 立ち上がり、震えながら後ずさるがすぐに背中が壁にぶち当たる。

「さあ、攻城の最中という異常な状況、そして女達が見つめるという衆人環視の中で二人は愛し合うのですよ、怖がらないで下さい」
「な、何を言っているのです!? 正気なの貴方……?」

 壁にぶち当たり、身動き出来なくなった七華王女の顔横の壁をドンと突いた。

「この時を……ずっと待っていました」

 三毛猫の手がすすっとドレスのスカートの裾にかかった。

「ひっ」
(助けて……砂緒)


「どうしたのですか、何故足が降りないのでしょうか?」

 先程から振り下ろした魔ローダーの巨大な足がロックして動かなかった。雪乃フルエレが操縦桿を握って足を上げるイメージを続けていたからだった。

「お願い……やめて……もう戦う意志は無いわ……あの人達」
「何を寝ぼけた事を言っているのですか? 先程のイェラの姿を見ましたか? 大変な辱めを受けたとしか思えません。私自身これ程怒る事が驚きでしたが、今は怒りが収まりません」
「いつもいつも……私のお願い聞いてくれてありがとう……今回も……今回は聞いて! こんな足で人間を踏み潰すのは人間のする事じゃないわ! 貴方には良い人間になって欲しいの! お願い止めて砂緒……」
「…………………………」

 砂緒は止めるで無く、反論するで無く無言でじっと降ろすイメージを続けた。フルエレも涙を流しながら止めるイメージを続けた。
 トスッ!
突然腰を抜かしながら後ずさりを続ける多くの敵兵に向かって、城壁の弓兵が射撃を再開した。次々と敵兵の胸や腹に矢が刺さる。

「見よ! 巨人様は我らが味方だ! リュフミュラン万歳!!」

 次々に城兵が攻撃を再開する。逃走を始めるニナルティナ兵に対して城門が開き、少数だが騎馬兵や歩兵が出て来て追撃すら開始した。

「ほら、ご覧下さいフルエレ。結果的にこうなりましたよ」
「あ、あぁ……」

 フルエレは両手で顔を覆って泣き続けた。実はフルエレが泣き始めて砂緒は急激に冷静になりつつあった。このまま嫌われたらどうしようという恐怖が襲っていた。

「あ、あれ……おかしいですね視点が下がっている気がするのですが」

 砂緒の突然の何気ない疑問に、思わず景色を見てしまうフルエレ。確かに視線が下がっている。実は目の錯覚では無く、出現時百メートルは超えていた魔ローダーは何故か今は二十五メートル程に同じ体型のまま縮小していた。

「ごめんね砂緒、乗りたいと言ったり攻撃するなと言ったり、勝手で本当にごめんね」
「いいえ、私も少々エキサイトしていたようです。どうします東面の魔戦車をひっくり返しますか? 大将さんを救出に向かいますか? それとも一旦村に戻って猫呼ねここ達と合流しますか?」
「ど、どうすればいいのかしら……私には難しいわ」

 実は砂緒は内心フルエレが普通に会話してくれて凄くほっとしていた。あんなしょうもない敵にかまけてフルエレとの関係が破壊されなくて本当に良かったと思った。

 パシッ『助けて砂緒! いやああ止めて汚らわしい!』

砂緒がモニターの端に突然小さなウインドウが開き、七華の叫び声が出力された事に気付く。

「フルエレ、聞こえていますか?」
「え? なになに何の事かしら?」

 どうやら声が届けられたのは砂緒の座席だけのようだった。砂緒は突然あちこちのボタンを滅茶苦茶に触り始めた。バシャッと突然前のハッチが開く。夜の景色が生で入り込んで来る。

「フルエレ、私を手に乗せて、城の最上階に近い大バルコニーに投げ付けて下さい。城の中のイェラがちゃんと介抱されているか確認して来ます。貴方は一人で残存の魔戦車が出撃した城兵を虐殺しない様に、ひっくり返して来てください」
「え? え? 投げる??」
「そうです手毬の様に私をあのバルコニーに投げ付けて下さい!」

 言葉を発すると同時にフルエレの返事も聞かず、ハッチから飛び降りる砂緒。フルエレは慌ててハッチから飛び降りた砂緒を受け止める。

「早いってば!」

 フルエレは必死に毬を投げるイメージを抱くと、魔ローダーは砂緒を物の様に投げ付けた。砂緒は投げ付けられながら乳白色に変化しくるくると回転して、城の大バルコニーの床に叩き付けられるとゴロゴロと回転して、最後は上半身を上げ、スライドしながらストップした。そして砂緒は巨像の基壇を潰した時の要領で拳を最大限硬化させると、壁をぶち壊しながら城の内部に侵入を始めた。
 ボコッ!
砂緒があてずっぽうに幾つもの部屋の壁を潰し続け、ようやく七華が居る部屋に辿り着いた。七華は三毛猫仮面に部屋の壁に押し付けられ、服は切り裂かれ胸ははだけ、スカートはめくられ白い脚の感触を楽しむ様に触られていた。

「そこまでの変態でしたか、なかなかの人物ですね。まあ取り敢えず死になさい」
「あぁ、砂緒さま! 来てくれた! 本当に来てくれた!」

 絶望の顔だった七華は希望が戻り涙を流しながら砂緒を見た。

「わざわざ倒される為に来たんですか、貴方もつくづく奇特ですね」

 三毛猫仮面は七華を離すと砂緒に向かって来た。
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