ゲーマーズエンカウント!!

池谷光

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D.D.クエスト

回復アイテムはダメージを与えられるのか

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 二人の思わぬPVP(プレイヤーVSプレイヤー)にエストとまりもは驚愕し、アプゥは若干焦り始める。

「えっと二人とも、ここで戦うの?一人でも欠けるとこの後の展開でパーティーがかなり辛くなるけど?」
「心配しないでGM、ロストする程は戦わないわ。それだとお互いの勝利の条件も意味が無くなるしね。先にHPが10以下になった方が負けって言うのはどうかしら?」
「俺はそれで良いがお前は良いのか?俺の方がHP高いから有利だぞ」
「そのくらいのハンデはあげるわ」
「いいぜ、絶対に勝つ!」
「私だってあんたなんかに負けないわよ!」

 そう言ってレッドとF2の二人は身体をほぐすように腕や足を動かし始める。もっともダイスを振るだけなので激しく動くことはないのだが。

「うーん・・・まあ良いか。それじゃあ戦闘開始!」
「えええ!GM!止めてくださいよ!」
「大丈夫だと思うよ。ロストするほどじゃないって言っているし。それに実戦を兼ねた戦闘のレクチャーにもなるから!」

 戦闘の勉強かと言ってエストはその場に座り込む。止める気は無いようで観戦する気満々である。大丈夫かなと思いながらまりもは心配そうに対峙するレッドとF2を見つめる。

「それじゃあDEXの数値が高い私から行動よ!」
「ちょっと待て!お前のDEXは9だろう!俺が先だ!」
「私のDEXは14よ!ステータスをしっかり見なさい!」
「そんなアホな・・・げ、本当だ!DEXが9なのはエストだった!」
「戦闘は基本、DEXの数値が高いキャラクターから行動できるんだ。エストとまりもも憶えておいてね」
「私はMPを消費して、戦闘技能〈魔法(氷)〉で攻撃するわ!ダイスロール!」

 そう言ってF2はダイスを振る。振られたダイスの出目は24、F2の〈魔法(氷)〉の技能値は60のため行動は成功である。

「成功よ!氷漬けになってもらうわ!魔法だから受け流しはできないわよ!」
「くそ!マジかよ!」
「魔法技能はINTの値で決まるから・・・1D4だね」
「これで終わりよ・・・って2!?嘘でしょ!?」
「本当はこの後防御判定があるんだけど、君達はまだ初期装備だから防御はできないんだ。だからこのままレッドに2のダメージだね」
「ちっ!ダイスに救われたわね・・・!」
「言ってろ!次は俺の番だ!」

(〈投擲〉に振っているって言っていたけど、投げられる物はせいぜいアイテムの『グラ-ル酒』くらい。『グラ-ル酒』は回復アイテムだから意味が無いわ。となると技能値が一番高い〈こぶし〉で判定するはず。〈こぶし〉なら受け流しが可能だから問題ないわ!この勝負はどのみち私の勝ちよ!)

「〈投擲〉で攻撃だ!ダイスロール!」
「投擲ってあんた、投げられる物なんてさっきもらった『グラ-ル酒』しか持っていないでしょう?それとも私を回復してくれるのかしら?」
「そうだね。レッド、グラ-ル酒は回復アイテムだからダメージは与えられないよ」

 GMであるアプゥにも指摘されたが、甘いなとばかりにレッドは不敵な笑みを浮かべて話し始める。

「それは中身の話だろ?俺が言っているのはそれが入っている器、つまりボトルの方だ。現実でも投げられたボトルが直撃すれば痛みを感じるし怪我だってする。つまりダメージが入るってわけだ!まさか酒場のマスターが液体のまま俺達に渡したなんて言わないよなぁGM!?」

 そう言われたアプゥは手に持っていた本を開いてページをめくる。そしてそれを閉じて再び悩み出す。

「うーん・・・〈投擲〉による攻撃を認めるよ」
「はあ!?GM!本気で言っているの!?」
「レッドの言っていたことに矛盾はないからね。グラ-ル酒はたしかにボトルに入っているわけだし」
「おっしゃあ!ダメージロールだ!」
「えっとレッドのSTRは9だから・・・1D3だね。それに投げた物の補正があるから・・・まあボトルだしプラス1でいいか。1D3+1でダメージロールだね」
「何が出ようと俺の勝ちだな!いくぜ!」

 レッドはそう叫ぶとダイスを思いきり振る。ダイスの出した目は1であった。このダメージが通ればF2の負けになる。

「よっしゃあ!俺の勝ちだ!」
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