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第16挑☆努力の男・関根 勉強よりバトルで成り上がる!後
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俺と赤鬼は、ヘーアンの国の大統領に目をつけた。世界的に有名な米の産地であるヘーアンの国……その米の売り上げの90パーセントを国が取り上げている。
ヘーアンの国の大統領、大熊は、国民を苦しめている。
俺と赤鬼は、大統領の娘・藤花を誘拐し、大統領に対して、
「ヘーアンの国の国民ひとりにつき100万ゴールドを配布しろ。そして、米の売り上げの90パーセントを国民に渡すこと。大統領たち国側の取り分を10パーセントとすること。この法改正を全世界に向けて発表したら、藤花を返そう」
と、要求した。
前大統領の別荘という、古びた洋館で様子を見ていると、大統領に命令されたと思われるプレイヤーたちが続々と洋館の前に現れた。
「話が通じないようだな」
赤鬼はため息を吐いた。
「想定内ですよ」
俺と赤鬼は、藤花を監禁している部屋をあとにし、洋館の外に出た。
銃や刀などを持った武装集団に、バタフライを連れたプレイヤーが4人。
「短時間でこれだけ集められるとは」
これだから権力者というものは。
自分に関わることならばすぐさま行動するくせに、国民に対しては何もなし、か。あんな要求を聞いたはずなのに、俺たちがなぜ藤花をさらったのかわからないようだ。
武装集団の一人が、俺と赤鬼に向かって叫ぶ。
「無駄な抵抗はよせ! 今すぐ藤花様を解放しろ」
武装集団は、目視できる範囲で15人。10人が拳銃をかまえて、銃口をこちらに向けている。
プレイヤーの従えているバタフライはレアばかりか。どれも、レベルはこちらより劣っている。
「馬鹿な奴らだ。無駄な抵抗をしているのはどちらか、はっきりさせてやる」
俺は身体を低くかまえた。
赤鬼のはるか上空にアカオニシジミが飛ぶ。その姿は、炎をまといながら空から降ってくる隕石のようだ。
赤鬼は自身の身体よりも長い刀身を持つ、野太刀の切っ先を上空に突き上げた。アカオニシジミから放たれた炎が野太刀に宿り、刀身を赤く染め上げる。
「ふうんっ」
赤鬼が野太刀を振り下ろすと、刀から無数の火の玉が放たれた。火の玉は武装集団とプレイヤー全員に向かっていく。
「うわああああ!」
一発くらえば、全身炎上する。火の玉をよけきれなかった3名は焼死。残りの奴らは火の玉を避けることに精いっぱいだ。それぞれの銃口も俺と赤鬼からそれた。
当然、そんなことをぼうっと眺めているわけがない。
赤鬼が火の玉を放つと同時、俺も動いている。
敵がちりぢりになったところで、手前の奴から一発ずつ蹴りを放っていく。突進した勢いのまま飛び上がり、一番手前にいたプレイヤーの側頭部に空中回転回し蹴りをくらわせる。身体の回転の勢いを利用し、次に手近にいた武装者の顔面に左足の裏をめりこませる。
一番早く正気に戻った奴が銃を撃ってくるが、それは倒した奴の身体を盾にしてガードする。そのまま発砲している敵に接近し、前蹴りを放つ。
次々と俺が蹴りで敵を沈めている間に、3人のプレイヤーが赤鬼に向かって一斉に飛び掛かっていく。
馬鹿だな。そんな横一列になったら、赤鬼の餌食だ。
敵からしたら、多方面から攻撃をすることによって赤鬼に回避させないつもりなのかもしれないが。
赤鬼は、野太刀を横一線になぎ払った。3人のプレイヤーの上半身と下半身が分離する。
一瞬だ。
赤鬼はバタフライの能力も一級だが、剣術も優れている。
残りの武装者たちは、恐怖でおびえた顔をしているが、なおも俺たちに向かってきた。ならば、容赦はしない。
俺の蹴りで頭蓋を割られる者、赤鬼の野太刀で切り捨てられる者。仲間たちの無残な死体を前に、一人の武装者は叫びながら逃げ出した。
「ば、化け物――――!」
俺も赤鬼も、そいつのあとを追いかけたりはしない。むしろ逃げ帰ってもらったほうがいい。
あの無能な大統領に、俺たちの要求を聞く以外に選択肢はないとわからせる。そのために、今ここで起こったことをありのままに報告してくれればいい。
俺は、自分の蹴りで命を失った者たちを見下ろした。
たしかに、死んでいるな。
あの、小学校の屋上で戦った挑という男……俺の蹴りを食らっても簡単に倒れなかった。初心者プレイヤーのはずだが、タフネスが異常すぎる。
もともと強い奴、ということか。
身体能力に恵まれた、強者。そういう強者を倒してこそ、勝利に価値がつく。
「どうした、関根」
死体を眺めていた俺に、赤鬼が声をかけてきた。
「いえ……屋上で戦った男のことを思い出していただけです」
「ああ。珍しく苦戦していたな」
「挑はムラサキ陣営のプレイヤーです。次に会ったときは必ず殺します」
「そうだな。見つけたからには、消さなくてはならない」
そう。ファイナルレジェンドバタフライファンタジ―Ⅹは、ただクリアすればいいというものではない。
俺たちが所属するアゲハ陣営に敵対している、ムラサキ陣営に勝つことも必要なのだ。
ムラサキ陣営よりも先に最上級レジェンドバタフライを集めなくてはならない。
ムラサキ陣営のプレイヤーを減らし、最上級レジェンドバタフライを奪われるリスクを下げる。
「アゲハ様は、本当はこのような戦いなど望んでいらっしゃらないのだがな」
ふと、赤鬼がつぶやいた。
赤鬼は紅紋あげはに近しい存在だと聞いたことがある。深くは追及したことがないが。
だが、紅紋あげはの思惑などどうでもいい。この世界で勝ち上がり、現実世界でも大金を手にする。そのために、俺は努力を続けるのみ。
ヘーアンの国の大統領、大熊は、国民を苦しめている。
俺と赤鬼は、大統領の娘・藤花を誘拐し、大統領に対して、
「ヘーアンの国の国民ひとりにつき100万ゴールドを配布しろ。そして、米の売り上げの90パーセントを国民に渡すこと。大統領たち国側の取り分を10パーセントとすること。この法改正を全世界に向けて発表したら、藤花を返そう」
と、要求した。
前大統領の別荘という、古びた洋館で様子を見ていると、大統領に命令されたと思われるプレイヤーたちが続々と洋館の前に現れた。
「話が通じないようだな」
赤鬼はため息を吐いた。
「想定内ですよ」
俺と赤鬼は、藤花を監禁している部屋をあとにし、洋館の外に出た。
銃や刀などを持った武装集団に、バタフライを連れたプレイヤーが4人。
「短時間でこれだけ集められるとは」
これだから権力者というものは。
自分に関わることならばすぐさま行動するくせに、国民に対しては何もなし、か。あんな要求を聞いたはずなのに、俺たちがなぜ藤花をさらったのかわからないようだ。
武装集団の一人が、俺と赤鬼に向かって叫ぶ。
「無駄な抵抗はよせ! 今すぐ藤花様を解放しろ」
武装集団は、目視できる範囲で15人。10人が拳銃をかまえて、銃口をこちらに向けている。
プレイヤーの従えているバタフライはレアばかりか。どれも、レベルはこちらより劣っている。
「馬鹿な奴らだ。無駄な抵抗をしているのはどちらか、はっきりさせてやる」
俺は身体を低くかまえた。
赤鬼のはるか上空にアカオニシジミが飛ぶ。その姿は、炎をまといながら空から降ってくる隕石のようだ。
赤鬼は自身の身体よりも長い刀身を持つ、野太刀の切っ先を上空に突き上げた。アカオニシジミから放たれた炎が野太刀に宿り、刀身を赤く染め上げる。
「ふうんっ」
赤鬼が野太刀を振り下ろすと、刀から無数の火の玉が放たれた。火の玉は武装集団とプレイヤー全員に向かっていく。
「うわああああ!」
一発くらえば、全身炎上する。火の玉をよけきれなかった3名は焼死。残りの奴らは火の玉を避けることに精いっぱいだ。それぞれの銃口も俺と赤鬼からそれた。
当然、そんなことをぼうっと眺めているわけがない。
赤鬼が火の玉を放つと同時、俺も動いている。
敵がちりぢりになったところで、手前の奴から一発ずつ蹴りを放っていく。突進した勢いのまま飛び上がり、一番手前にいたプレイヤーの側頭部に空中回転回し蹴りをくらわせる。身体の回転の勢いを利用し、次に手近にいた武装者の顔面に左足の裏をめりこませる。
一番早く正気に戻った奴が銃を撃ってくるが、それは倒した奴の身体を盾にしてガードする。そのまま発砲している敵に接近し、前蹴りを放つ。
次々と俺が蹴りで敵を沈めている間に、3人のプレイヤーが赤鬼に向かって一斉に飛び掛かっていく。
馬鹿だな。そんな横一列になったら、赤鬼の餌食だ。
敵からしたら、多方面から攻撃をすることによって赤鬼に回避させないつもりなのかもしれないが。
赤鬼は、野太刀を横一線になぎ払った。3人のプレイヤーの上半身と下半身が分離する。
一瞬だ。
赤鬼はバタフライの能力も一級だが、剣術も優れている。
残りの武装者たちは、恐怖でおびえた顔をしているが、なおも俺たちに向かってきた。ならば、容赦はしない。
俺の蹴りで頭蓋を割られる者、赤鬼の野太刀で切り捨てられる者。仲間たちの無残な死体を前に、一人の武装者は叫びながら逃げ出した。
「ば、化け物――――!」
俺も赤鬼も、そいつのあとを追いかけたりはしない。むしろ逃げ帰ってもらったほうがいい。
あの無能な大統領に、俺たちの要求を聞く以外に選択肢はないとわからせる。そのために、今ここで起こったことをありのままに報告してくれればいい。
俺は、自分の蹴りで命を失った者たちを見下ろした。
たしかに、死んでいるな。
あの、小学校の屋上で戦った挑という男……俺の蹴りを食らっても簡単に倒れなかった。初心者プレイヤーのはずだが、タフネスが異常すぎる。
もともと強い奴、ということか。
身体能力に恵まれた、強者。そういう強者を倒してこそ、勝利に価値がつく。
「どうした、関根」
死体を眺めていた俺に、赤鬼が声をかけてきた。
「いえ……屋上で戦った男のことを思い出していただけです」
「ああ。珍しく苦戦していたな」
「挑はムラサキ陣営のプレイヤーです。次に会ったときは必ず殺します」
「そうだな。見つけたからには、消さなくてはならない」
そう。ファイナルレジェンドバタフライファンタジ―Ⅹは、ただクリアすればいいというものではない。
俺たちが所属するアゲハ陣営に敵対している、ムラサキ陣営に勝つことも必要なのだ。
ムラサキ陣営よりも先に最上級レジェンドバタフライを集めなくてはならない。
ムラサキ陣営のプレイヤーを減らし、最上級レジェンドバタフライを奪われるリスクを下げる。
「アゲハ様は、本当はこのような戦いなど望んでいらっしゃらないのだがな」
ふと、赤鬼がつぶやいた。
赤鬼は紅紋あげはに近しい存在だと聞いたことがある。深くは追及したことがないが。
だが、紅紋あげはの思惑などどうでもいい。この世界で勝ち上がり、現実世界でも大金を手にする。そのために、俺は努力を続けるのみ。
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