異世界兵士は大剣振るいて戦場を駆ける

代永 並木

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斬り合い

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 攻撃を躱し続ける
 大剣を振るうがこちらも避けられる
 大剣を振り切ってすぐに蹴りを繰り出す
 敵は刃をこちらに向ける
 蹴りを止めて引く

 ……危ない、あのままだと切られてた

 蹴りを引いた瞬間に踏み込んで深く斬りかかってくる
 片足で後ろに飛んで地面に転がり片手で地面を強く押して立ち上がる
 転がった私に対して突きを繰り出していたが外れる
 外れたとわかった瞬間刃の向きを変えて切り上げで襲いかかってくる
 大剣で防ぐ、弾く前に敵は後ろに飛ぶ

 ……強い

「何が目的?」
「勇者殺し」
「なんで?」

 勇者は魔王討伐の為に呼ばれた存在
 この世界は魔王軍によって危機が訪れていると聞いている
 実際魔物は厄介で強い魔物相手は勇者クラスの力が欲しい

「依頼だから」
「誰からの?」
「それは言えない。依頼主の情報は口外禁止だから」

 ……埒が明かない

 大剣では攻めきれない
 バックの中にある武器は短剣しかない
 元々私は身長が低い、リーチが短いのに武器まで短くなると深く踏み込まないとならない
 しかし、この敵はそれを許さない

 ……他は煙玉と爆弾と戦闘用じゃないけどキャンプ道具

 考えていると攻撃を仕掛けてくる
 半身を後ろに下げて回避して大剣を切り上げるが横に避けられる

「考える余裕は与えないよ」

 突きを繰り出してくる

「知ってる」

 片手で持った大剣で防いでバックに手を突っ込み煙玉を取り出す
 そして煙玉を地面に叩き付けて白煙を発生させる
 白煙の中から鋭い突きが飛んでくる
 暗闇で殆ど見えなかったとはいえ煙の方が見えない
 剣身の反射もない
 だが音で判断して回避する

「!?」
「ようやく見えた!」

 白煙なら暗闇に紛れていた黒い服がよく見える
 体の線も分かる
 大剣の重さが動きを鈍らせる、大剣を投げ捨てる
 素早く懐に入り胴体に一撃拳を叩き込む

「グッ」

 追撃するがすぐに体勢を立て直した敵に躱される
 距離を取ろうとするが踏み込んで追いかける
 リーチの差がある、距離を離されると不利
 剣の攻撃を躱して反撃を食らわせる

「逃がさない」

 よろめいた瞬間、剣を持っていない方の腕を掴み背後に回る
 力を込めて引っ張る
 敵は抵抗するが腕に手が食い込むほど握った私はビクともしない
 剣を振るわれる前に腕を掴みながら体勢を変えて柔術のように投げる
 本来曲がらない方向へ力一杯曲げられた事で敵の腕がメキメキと悲鳴を上げる

 ……これで仕留める!

 勢いよく投げ飛ばす
 受身を取らせないように素早く
 配慮なんて一切ない例え仕留めきれずとも敵の腕を確実に壊す一手
 振り切った瞬間、違和感を感じる
 手に衝撃が来ない事と振った時妙に軽かった
 まるで身体が無いかのように

「!?」

 しっかり掴んでいる腕を見る
 腕以外が無い
 掴んでいた腕だけがそこには残っていた
 腕の切断部からは大量の血が流れている
 投げられる瞬間に自ら腕を切り落としたのだ
 敵は今フリー
 すぐに頭を動かす、急所さえ避ければ問題ない
 殺すなら心臓か頭、首辺りを狙う筈
 狙われても外れるように動く

 私のその考えは外れ剣が腹に刺さる
 激痛が走るが堪える

「がっ……ぐぅ……」

 すぐに腹を貫通した剣を掴みこれ以上引かせず切らせない
 そしてバックから爆弾を取り出して後ろに投げる
 爆弾、威力は低いと言っても至近距離で直撃すれば無事では済まない
 敵は動かない剣から手を離して逃げないとならない

「自殺か!」
「する訳ないじゃん」

 敵が剣から手を離した瞬間に振り返り地を蹴り拳を叩き込む
 力を入れていた状態から離れると感覚で分かる
 敵は片腕を失っている
 出血からして応急処置しないと長くは続かないだろう
 だがそれはこちらも同じ、時間は掛けられない

「グッ……不発か」

 投げた爆弾は起爆せず地面に転がる
 敵からすれば爆弾を投げられた瞬間に判断する程の時間は無い
 爆発するかどうかを見ている間に爆発してしまう
 続けて追撃するが避けられ距離を取られる
 追わずに剣を腹から抜いて回して柄を握る

 ……絶対武器隠してるよねぇ

 暗殺だけならともかく殺しに来ている事からして予備の武器くらい用意しているだろう
 だが武器を構える余裕は与えない
 突っ込んで素早く切り掛る
 敵は剣を避けて蹴りを飛ばしてくる
 剣の腹で蹴りを受ける
 衝撃が剣で刺された腹に響く

「うっ……」

 敵は蹴りの最中に短剣を取り出して蹴り終えてから構える
 剣を何度か振るうが短剣で上手く捌かれる

 ……短剣の扱いも上手いか

 蹴りを混ぜて攻撃してくる
 剣を持っていた時は剣の間合いだったがリーチの短い短剣になった今、敵にとって格闘の間合いの戦い
 周囲に金属音が響き渡る
 武器同士がぶつかる音、擦れる音、踏み込んで草を踏みつける音、風切り音
 会話もしない、互いに集中が高まる
 痛みを忘れ切り合う
 蹴りを回避して片手で持った状態で切り掛るが短剣で受けられる
 剣を頭上に振り上げて両手で持って素早く振り下ろす
 短剣で受け流される
 体勢を崩したところに短剣が襲いかかる
 地を蹴って腹に頭突きをする、前方に倒れるような姿勢で
 重い衝撃が走り敵はよろめく

 ……痛い

 頭突きした頭が痛いがよろめいた隙を逃さない
 倒れそうな低姿勢を足の力で維持して剣を握り締める
 そして下から突きを繰り出す、手を限界まで伸ばして敵の胴体を貫く
 急所には当たっていない、すぐに引き抜いて袈裟斬りにする
 大量の血を流して敵は倒れる
 腹を抑える
 戦闘中にかなり血が流れている

 ……応急処置用の道具はあったはず

 すぐにその場で包帯を巻く

「情報を吐け」
「残念ながら言えないなぁ……油断してたよ」
「油断?」
「いやぁ勇者は平和な世界から来たって聞いたから人殺しなんて出来ないと思ってた。実際は迷いなく殺しに来た」
「私は特殊なんでね」
「援護しに行かなくていいのかい?」
「言われずとも応急処置してから向かう」

 ……内臓に傷入ってるなぁ、戦えるかなぁ

 他に仲間がいるとして負傷してる私が向かって勝てるか分からない
 そのくらい強かった

「他に仲間は?」
「残念ながら居ない。勇者1人殺せばいいって話だったけど狙う相手間違えたなぁ」
「ユメ様!」

 クレマが走ってくる
 倒し終えても合流しない私を心配したのだろうか

「魔法を使います」

 クレマが治癒魔法を使う

「この人物は?」
「勇者殺しをしようとした」
「勇者を狙ったと……」
「俺が死んだとしても依頼主は止まらねぇ、気をつけろよ」

 兵士達が遅れてきて応急処置を施して運んでいく

「流石に疲れた」
「休憩しましょう」

 強敵との戦いで疲れ城門近くの休憩所で眠りにつく

 勇者を殺そうとする者達がいると分かった
 依頼主は動く、さらに強い人物を嗾ける為に
 そして魔王軍にも動きが見られ始める

 私は大剣を手に激しい戦闘に身を投じる
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