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第24話 不審者
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(シィー、能力は?)
(伏せる方針で、でも逃げようとしたら容赦なく使って)
(了解)
「さて、不審者さん?貴方の目的を聞かせて貰っても?」
「話す事など、ないっ!」
ノートゥーンと軽くテレパシーで作戦会議を行った後、ルシィーナが男にそう尋ねたものの、男はそう返すと短剣を取り出して襲いかかってくる。
しかし─────
「それを僕が許すとでも?」
「ちっ!」
横からルシィーナ目掛けて飛びかかった男の手にノートゥーンがかかと落としを合わせ、男はそれを回避せざるを得なくなり大きく後ろへと後退する。
だが大人しくそれを逃がすほどノートゥーンも甘くなく、振り下ろした足でそのまま地面を蹴り、男へ追撃を加えるべく追いかける。
「貰った!」
「ふっ」
「消えっ?!」
「ノーちゃん後ろ!」
「っ!」
突然目の前から男が消え、拳を構えていたノートゥーンは驚かされるものの、ルシィーナの呼びかけにより背後からの攻撃を回避し、男から距離を取る。
そしてそのタイミングで男の足元に魔法陣が浮かび上がり─────
「今なら!石水渦陣!」
ただの人間ならズタズタにできる石の混じった大きな渦が男を包み込み、男へと凄まじい攻撃をお見舞いする。
(よし!これなら!)
(いや、まだだ!シィー!)
ガァンッ!
「ほぉ。ふざけた杖だと思ったが、案外邪魔なもんだな」
「魔術師だからって近接戦が出来ないわけじゃ無いんだよっ!ノーちゃん!」
どうやって渦から抜け出したのか、無傷でルシィーナへ高速で近づき心臓を一刺ししようとした男のナイフをルシィーナはブレードロッドの刃で受け止め、返しの一撃で男を空中へて吹き飛ばし距離を取る。
そして空中へと吹き飛ばされた男へ向かい、ノートゥーンは今度こそ男を捉えるべくジャンプし、その喉元へ向かって手を伸ばす。
だがしかし─────
「今度こそ、貰った!」
「……スワップステップ」
「んなっ?!」
「ノーちゃん!?」
「大丈夫!それよりシィー、そいつ妙な技を持ってるみたいだ。気をつけて」
ノートゥーンが男の喉元を掴もうとした瞬間、男が何かを呟くとノートゥーンと男の位置が入れ替わり、ノートゥーンは男を捉える事が出来ずそのまま着地し、最初の睨み合いの立ち位置に戻る。
(軽く攻防したけど、ノーちゃん相手の能力とかは分かった
?)
(多分ワープ系、でも短距離限定だと思う。ただその分ワープの予備動作が無かったから固まるのは得策じゃないかも)
(なら頑張って自分の身は自分で守らないとね)
(頼んだよシィー。それじゃあ─────)
「ちょっと、本気出す。シィー!」
「岩雨陣!」
「岩の雨だと─────」
「蹴る為だけに……よそ見すなっ!」
「ぐっ?!」
ルシィーナの岩を降らせる魔術に男が気を取られた隙に、ノートゥーンは足を兎の足へと変化させ、とてつもない速度で男へと飛びかかり、顔面へと一撃をお見舞いする。
「ちっ、なんだ。お前も同類だったのか」
「同類?訳の分から無いことを、僕の同胞はこの世に15体だけだっ!」
「落ち着け!俺は仲間で!クソっ、一旦眠らせて─────」
「それで避けたつもりか!」
「がっ!?」
岩の雨が降る中、何かを話そうとした男は再度飛びかかって来たノートゥーンの初撃を避けたものの、落下中の岩を足場にして放たれた二発目の攻撃は避けきれず、今度は胴へとノートゥーンの拳が炸裂する。
「ごほっ、げほっ!……ちっ、馬鹿力め。だがこれだけ岩が積み重ねられれば逃げられ─────」
「砂化陣!」
「んなっ?!」
岩の雨が止み、積み上がった岩から壁を越えようとした男は、杖の柄を地面へと突き立てルシィーナが呪文を唱えた途端岩が全て砂となった事で砂に足を取られる。
「岩が砂に─────」
「そのまま動かずにいなさい!硬化陣!」
「くっ!足が─────」
「終わりだ!」
「んなっ?!」
完全に死角からの動揺の隙をついた一撃!これならばワープで対応も出来ないはず!
足が膝まで砂に沈んだ所でルシィーナの呪文により固まった砂で動けなり、一瞬とはいえ完全に男の意識の外に出たノートゥーンは男の死角から鋭い蹴りを繰り出す。
しかし……
「危なかったですねぇ。だから魔術を侮るなとあれ程言っているじゃないですか」
「ちっ、悔しいが助かった。感謝する」
「はい、感謝してください。私は貴方を助けたんですから」
避けれるはずのない届いたと思われたその蹴りは空を切り、辺りを見回していたノートゥーンの耳へルシィーナの作った壁の上からそんな会話が聞こえる。
「誰だ!」
「申し遅れました。私はウサギ、この者はネズミと申します。以後お見知り置きを」
(シィー、こいつが何したかとか、分かる?)
(うん。ノーちゃん、魔術師だと思う。しかも多分凄腕の、空間に作用する魔術を使える魔術師はひと握りの天才だから)
(なるほどね。なら流石に守りながら全力も出せないこの状況は不味いね……)
「ご丁寧にどうも。私達のことは……知っているのでしょう?」
「はい、王都にいらした新たな冒険者さん。さて、色々とお話したい所ですがネズミがグダグダしてしまったので時間もありませんし、軽くお掃除だけしてしまいましょう。魔術拡散」
自らをウサギと名乗ったその女がそう言ってどこから出したのか、白い杖を一振し呪文を唱えると、岩の壁や砂の山がふっと消え去る。
「シィー!今のは?!」
「私が魔術で起こした事象が全部消された!」
「ではお掃除も終わりましたし、そろそろ時間ですね。お嬢さん方も面倒ごとは嫌でしょうから、是非とも「何も無かった」そう言う事でお願いしますね」
女はそう言うとネズミと呼ばれた男と共にその場から消え、暫くすると王都の警備隊が駆けつけて来たのだった。
(伏せる方針で、でも逃げようとしたら容赦なく使って)
(了解)
「さて、不審者さん?貴方の目的を聞かせて貰っても?」
「話す事など、ないっ!」
ノートゥーンと軽くテレパシーで作戦会議を行った後、ルシィーナが男にそう尋ねたものの、男はそう返すと短剣を取り出して襲いかかってくる。
しかし─────
「それを僕が許すとでも?」
「ちっ!」
横からルシィーナ目掛けて飛びかかった男の手にノートゥーンがかかと落としを合わせ、男はそれを回避せざるを得なくなり大きく後ろへと後退する。
だが大人しくそれを逃がすほどノートゥーンも甘くなく、振り下ろした足でそのまま地面を蹴り、男へ追撃を加えるべく追いかける。
「貰った!」
「ふっ」
「消えっ?!」
「ノーちゃん後ろ!」
「っ!」
突然目の前から男が消え、拳を構えていたノートゥーンは驚かされるものの、ルシィーナの呼びかけにより背後からの攻撃を回避し、男から距離を取る。
そしてそのタイミングで男の足元に魔法陣が浮かび上がり─────
「今なら!石水渦陣!」
ただの人間ならズタズタにできる石の混じった大きな渦が男を包み込み、男へと凄まじい攻撃をお見舞いする。
(よし!これなら!)
(いや、まだだ!シィー!)
ガァンッ!
「ほぉ。ふざけた杖だと思ったが、案外邪魔なもんだな」
「魔術師だからって近接戦が出来ないわけじゃ無いんだよっ!ノーちゃん!」
どうやって渦から抜け出したのか、無傷でルシィーナへ高速で近づき心臓を一刺ししようとした男のナイフをルシィーナはブレードロッドの刃で受け止め、返しの一撃で男を空中へて吹き飛ばし距離を取る。
そして空中へと吹き飛ばされた男へ向かい、ノートゥーンは今度こそ男を捉えるべくジャンプし、その喉元へ向かって手を伸ばす。
だがしかし─────
「今度こそ、貰った!」
「……スワップステップ」
「んなっ?!」
「ノーちゃん!?」
「大丈夫!それよりシィー、そいつ妙な技を持ってるみたいだ。気をつけて」
ノートゥーンが男の喉元を掴もうとした瞬間、男が何かを呟くとノートゥーンと男の位置が入れ替わり、ノートゥーンは男を捉える事が出来ずそのまま着地し、最初の睨み合いの立ち位置に戻る。
(軽く攻防したけど、ノーちゃん相手の能力とかは分かった
?)
(多分ワープ系、でも短距離限定だと思う。ただその分ワープの予備動作が無かったから固まるのは得策じゃないかも)
(なら頑張って自分の身は自分で守らないとね)
(頼んだよシィー。それじゃあ─────)
「ちょっと、本気出す。シィー!」
「岩雨陣!」
「岩の雨だと─────」
「蹴る為だけに……よそ見すなっ!」
「ぐっ?!」
ルシィーナの岩を降らせる魔術に男が気を取られた隙に、ノートゥーンは足を兎の足へと変化させ、とてつもない速度で男へと飛びかかり、顔面へと一撃をお見舞いする。
「ちっ、なんだ。お前も同類だったのか」
「同類?訳の分から無いことを、僕の同胞はこの世に15体だけだっ!」
「落ち着け!俺は仲間で!クソっ、一旦眠らせて─────」
「それで避けたつもりか!」
「がっ!?」
岩の雨が降る中、何かを話そうとした男は再度飛びかかって来たノートゥーンの初撃を避けたものの、落下中の岩を足場にして放たれた二発目の攻撃は避けきれず、今度は胴へとノートゥーンの拳が炸裂する。
「ごほっ、げほっ!……ちっ、馬鹿力め。だがこれだけ岩が積み重ねられれば逃げられ─────」
「砂化陣!」
「んなっ?!」
岩の雨が止み、積み上がった岩から壁を越えようとした男は、杖の柄を地面へと突き立てルシィーナが呪文を唱えた途端岩が全て砂となった事で砂に足を取られる。
「岩が砂に─────」
「そのまま動かずにいなさい!硬化陣!」
「くっ!足が─────」
「終わりだ!」
「んなっ?!」
完全に死角からの動揺の隙をついた一撃!これならばワープで対応も出来ないはず!
足が膝まで砂に沈んだ所でルシィーナの呪文により固まった砂で動けなり、一瞬とはいえ完全に男の意識の外に出たノートゥーンは男の死角から鋭い蹴りを繰り出す。
しかし……
「危なかったですねぇ。だから魔術を侮るなとあれ程言っているじゃないですか」
「ちっ、悔しいが助かった。感謝する」
「はい、感謝してください。私は貴方を助けたんですから」
避けれるはずのない届いたと思われたその蹴りは空を切り、辺りを見回していたノートゥーンの耳へルシィーナの作った壁の上からそんな会話が聞こえる。
「誰だ!」
「申し遅れました。私はウサギ、この者はネズミと申します。以後お見知り置きを」
(シィー、こいつが何したかとか、分かる?)
(うん。ノーちゃん、魔術師だと思う。しかも多分凄腕の、空間に作用する魔術を使える魔術師はひと握りの天才だから)
(なるほどね。なら流石に守りながら全力も出せないこの状況は不味いね……)
「ご丁寧にどうも。私達のことは……知っているのでしょう?」
「はい、王都にいらした新たな冒険者さん。さて、色々とお話したい所ですがネズミがグダグダしてしまったので時間もありませんし、軽くお掃除だけしてしまいましょう。魔術拡散」
自らをウサギと名乗ったその女がそう言ってどこから出したのか、白い杖を一振し呪文を唱えると、岩の壁や砂の山がふっと消え去る。
「シィー!今のは?!」
「私が魔術で起こした事象が全部消された!」
「ではお掃除も終わりましたし、そろそろ時間ですね。お嬢さん方も面倒ごとは嫌でしょうから、是非とも「何も無かった」そう言う事でお願いしますね」
女はそう言うとネズミと呼ばれた男と共にその場から消え、暫くすると王都の警備隊が駆けつけて来たのだった。
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