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新雪と現場とAIと
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大雪が降った後の次の日は見事なまでに快晴だった。日の光が新雪に当たり、宝石のように美しくきらめいている。
その絶景に囲まれた登山道を一台のGT-Rが登っていった。雪道対応のタイヤを着せられたその車の中には運転手の他に2人の背広の上からダウンコートを羽織った男が乗っている。
「事件じゃなければスキーでもしたかったねえ」
そう話すのは神之目透、現在地元警察において、若手最強の刑事と呼ばれている男だった。遺体を口づけしそうなほど間近で観察したり、高い料金を掛けて事件を再現するような変態の域に到達した刑事である。
キレ長の目にハーフマッシュという髪型。一時期はイケメンで通っていたのだが、先にあげた周りから見れば奇行ともいえる行動に加え、彼が自身の最初の事件で犯人の行動パターンを掴むため、特急列車に75回乗車し、しかもその乗車賃を経費で落とすという経理部も真っ青の捜査方法をとったことによりその通説は割れた皿のように砕け散った。
「ははっそうですねー」
その彼のぼやきに柔らかく答えたのは彼の同僚、中村章だった。中村は基本誰にでも敬語で話すような穏やかな性格の刑事で、この人間性の放つゆったりとした雰囲気のおかげか癖の強い刑事である彼のまがまがしい気配は中和されている。
現在、彼らが向かっているのは雪山に出現した事件現場だった。
昨日の夕方、猟師である夫が猟に行ったきりになったとの連絡があった。妻は心配で手が震えていたのか何度も電話を落としてしまったらしい。
結局、猟師は今日の朝、警察と消防団の合同捜索隊により遺体で発見された。額に引っ搔き傷のようなものが残っていたことから熊に突進され内臓が破裂したことによる事故と今のところは判断されている。
ただ、もしかしたらと念には念を込めてということでこの2人が出向くことになった。
「なるほど、ここが現場ねえ。ははは。いつも通り、男しかいねえ」
現場に到着した2人は周囲を見回した。彼らの他にも刑事たちが数人集まっている。
左右は木々で囲まれており、登山道の真ん中に件の猟師が仰向けに倒れていた。確かに額には引っ搔き傷のようなものが刻まれている。
周りを見ると熊らしき足跡が木々の方向に向かっており、木々の手前で途絶えていた。雪に埋もれたのか、その足跡はつま先が無かったが、大きさから考えて大人のクマのものだろう。
「これはもう、熊じゃないですか?」
中村が問う。そのまま中村はごそごそとスマートフォンを取り出した。
「でもこんな時期に熊出るかなあ?冬眠してると思うんだけど」と周りの刑事が少し疑問を口にした。
確かにこの時期に熊が出たという報告はない。だが、もし出ていたとしたら徹底的に警戒を呼び掛ける必要があった。冬眠明けの熊ほど危険な動物は少なくともこの日本にはいないのだ。
刑事達が犯人である可能性の高い熊の話をしている間にその間も彼は足跡を見たり、遺体を超至近距離で観察していた。
「んー? この足跡、爪先がない……。あ……そういうことか」
「あー。仏さんの位置は動かすなよ。……もうそろ回収しなきゃだな」
なにやら彼が独り言をぶつぶつ呟いているのが聞こえてくる。周りの刑事達も慣れたもので彼の奇行はもはや一種の名物のようなものだ。
「神之目さんはどう思いますか?」
「ああ、これは多分……」
彼が返答しようとした途端
『事件の可能性が高いです』と彼の声に被せるように女性の声がした。
突如としてその場に響いた女性の声。周りの刑事達は聞こえるはずのない声に驚いたように周りを見回す。女性の声はどうやら中村のスマホから聞こえているらしい。遺体の間近にいた彼は中村の方を鋭く見据えながら振り返る。
『皆様、初めまして。私は犯人逮捕補助AI アイリーンと申します』
とその女性―いやAIは言葉を繋いだ。
その絶景に囲まれた登山道を一台のGT-Rが登っていった。雪道対応のタイヤを着せられたその車の中には運転手の他に2人の背広の上からダウンコートを羽織った男が乗っている。
「事件じゃなければスキーでもしたかったねえ」
そう話すのは神之目透、現在地元警察において、若手最強の刑事と呼ばれている男だった。遺体を口づけしそうなほど間近で観察したり、高い料金を掛けて事件を再現するような変態の域に到達した刑事である。
キレ長の目にハーフマッシュという髪型。一時期はイケメンで通っていたのだが、先にあげた周りから見れば奇行ともいえる行動に加え、彼が自身の最初の事件で犯人の行動パターンを掴むため、特急列車に75回乗車し、しかもその乗車賃を経費で落とすという経理部も真っ青の捜査方法をとったことによりその通説は割れた皿のように砕け散った。
「ははっそうですねー」
その彼のぼやきに柔らかく答えたのは彼の同僚、中村章だった。中村は基本誰にでも敬語で話すような穏やかな性格の刑事で、この人間性の放つゆったりとした雰囲気のおかげか癖の強い刑事である彼のまがまがしい気配は中和されている。
現在、彼らが向かっているのは雪山に出現した事件現場だった。
昨日の夕方、猟師である夫が猟に行ったきりになったとの連絡があった。妻は心配で手が震えていたのか何度も電話を落としてしまったらしい。
結局、猟師は今日の朝、警察と消防団の合同捜索隊により遺体で発見された。額に引っ搔き傷のようなものが残っていたことから熊に突進され内臓が破裂したことによる事故と今のところは判断されている。
ただ、もしかしたらと念には念を込めてということでこの2人が出向くことになった。
「なるほど、ここが現場ねえ。ははは。いつも通り、男しかいねえ」
現場に到着した2人は周囲を見回した。彼らの他にも刑事たちが数人集まっている。
左右は木々で囲まれており、登山道の真ん中に件の猟師が仰向けに倒れていた。確かに額には引っ搔き傷のようなものが刻まれている。
周りを見ると熊らしき足跡が木々の方向に向かっており、木々の手前で途絶えていた。雪に埋もれたのか、その足跡はつま先が無かったが、大きさから考えて大人のクマのものだろう。
「これはもう、熊じゃないですか?」
中村が問う。そのまま中村はごそごそとスマートフォンを取り出した。
「でもこんな時期に熊出るかなあ?冬眠してると思うんだけど」と周りの刑事が少し疑問を口にした。
確かにこの時期に熊が出たという報告はない。だが、もし出ていたとしたら徹底的に警戒を呼び掛ける必要があった。冬眠明けの熊ほど危険な動物は少なくともこの日本にはいないのだ。
刑事達が犯人である可能性の高い熊の話をしている間にその間も彼は足跡を見たり、遺体を超至近距離で観察していた。
「んー? この足跡、爪先がない……。あ……そういうことか」
「あー。仏さんの位置は動かすなよ。……もうそろ回収しなきゃだな」
なにやら彼が独り言をぶつぶつ呟いているのが聞こえてくる。周りの刑事達も慣れたもので彼の奇行はもはや一種の名物のようなものだ。
「神之目さんはどう思いますか?」
「ああ、これは多分……」
彼が返答しようとした途端
『事件の可能性が高いです』と彼の声に被せるように女性の声がした。
突如としてその場に響いた女性の声。周りの刑事達は聞こえるはずのない声に驚いたように周りを見回す。女性の声はどうやら中村のスマホから聞こえているらしい。遺体の間近にいた彼は中村の方を鋭く見据えながら振り返る。
『皆様、初めまして。私は犯人逮捕補助AI アイリーンと申します』
とその女性―いやAIは言葉を繋いだ。
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