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81話 明るみ⑨
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「まずは、前提となる話を少々。」
改まり、ハルルが話し始める。
「かつて、私たちの世界には『魔王』という概念がありました。
特定の魔物個体が強大な魔力を持ち『魔王』と呼ばれ、辺り一帯を満たす魔力の影響で他の魔物も強化され、災害となる。
討伐してもしばらくののち、また別の魔王が現れる。その状態が続いてました。
しかし、700年程前に現れた、特に強大な魔王が討伐されたのち、新たな魔王は現れなくなっていました。」
一息の間ののち、ハルルが続ける。
「ですが、その「魔王」と同じ現象が、つい最近確認されました。
そして発生の原因を調査した結果、空間の変位と座標の…いえ、細かい話は今は省きましょう。
結果を言えば、この世界の同質のものと共鳴している事が分かりました。
このままでは魔王の再来となってしまう。だからその対処に遣わされたのが、私たちです。」
いきなり思考の整理が追い付かなかった。
魔王がどうこうというのは、突飛ながらもまだ分からないでもない話。けどそれが──
「同質のって…じゃあその『魔王』ってやつが、こっちの世界にいるのか?」
「魔王という形をとっているかは定かではありません。
生物なのか現象なのか、それとも他の形なのかすら定かではなく、地道に探るしかなく。
それも全くの未知の場所での活動。人員が集まらないのも道理というもの。」
…仮に「突然海外で暮らす」って想像しただけでも結構嫌なのに、それ以上の事じゃそうなるか。
「でも、ユートさんと見た『こちらの世界』の情報を資料に加えたら、人員が数倍になったんです!
…とは言っても、元の人数が少なすぎて、まだ十分に足りてるとは言えませんけどね。
未知は未知でも『知らないものがある』という取っ掛かりがあると大分違うようで、さらに増員が見込めるそうです。」
「でも、俺別にそんな大した事……。」
「前にも言ったでしょう。私の知りたい事の多くは、あなたにとってはおそらく常識。
それは、私以外の者にとっても同じ事。
協力的な姿勢も、エリアリーダーから結構信用されてるんですよ。
だから情報の認可が下りたんです。」
「でも、それのどこが聞いて問題になる事なんだ?
魔王の事とか確かにちょっと驚いたけど、それくらいじゃ……。」
「そう、肝心な話はここから。
この世界、そして私たちの世界。
この2つは、同じ歴史を辿った平行世界のようなのです。」
突然のぶっこみ。
まって、同じ歴史っていうんなら何で…?
「私たちの世界からすればここは遥か過去、神話として語られる時代。
なので、その神話が今回の件に関わってるのでは、というのが今の見解です。」
「じゃあその『神話』ってもしかして…?」
「えぇ、おそらくこの世界からすればまだ未来の事。
なので、ここから先は特に秘匿情報です。」
なるほど…それは確かに公にしたらロクな事にならないのは明白……。
「その神話では、最高神『ゴデュラ』が魔法という概念を広めたとあります。
ゴデュラは5人の属性神を定め、魔法の開祖となり。
そして反魔法派と争い、鎮圧した、と。
…こちらの世界を見る限り、相当な文明を犠牲とするほど、大規模な争いだったようですね。」
語るハルルの物憂げな様子は、嘘や冗談で言ってるものではないと確信できるものだった。
「なので、こちら側の目的は『魔力共鳴の原因の究明及び解決』。
その一環として、神話となった荒事にも関わるかもしれません。」
改まり、ハルルが話し始める。
「かつて、私たちの世界には『魔王』という概念がありました。
特定の魔物個体が強大な魔力を持ち『魔王』と呼ばれ、辺り一帯を満たす魔力の影響で他の魔物も強化され、災害となる。
討伐してもしばらくののち、また別の魔王が現れる。その状態が続いてました。
しかし、700年程前に現れた、特に強大な魔王が討伐されたのち、新たな魔王は現れなくなっていました。」
一息の間ののち、ハルルが続ける。
「ですが、その「魔王」と同じ現象が、つい最近確認されました。
そして発生の原因を調査した結果、空間の変位と座標の…いえ、細かい話は今は省きましょう。
結果を言えば、この世界の同質のものと共鳴している事が分かりました。
このままでは魔王の再来となってしまう。だからその対処に遣わされたのが、私たちです。」
いきなり思考の整理が追い付かなかった。
魔王がどうこうというのは、突飛ながらもまだ分からないでもない話。けどそれが──
「同質のって…じゃあその『魔王』ってやつが、こっちの世界にいるのか?」
「魔王という形をとっているかは定かではありません。
生物なのか現象なのか、それとも他の形なのかすら定かではなく、地道に探るしかなく。
それも全くの未知の場所での活動。人員が集まらないのも道理というもの。」
…仮に「突然海外で暮らす」って想像しただけでも結構嫌なのに、それ以上の事じゃそうなるか。
「でも、ユートさんと見た『こちらの世界』の情報を資料に加えたら、人員が数倍になったんです!
…とは言っても、元の人数が少なすぎて、まだ十分に足りてるとは言えませんけどね。
未知は未知でも『知らないものがある』という取っ掛かりがあると大分違うようで、さらに増員が見込めるそうです。」
「でも、俺別にそんな大した事……。」
「前にも言ったでしょう。私の知りたい事の多くは、あなたにとってはおそらく常識。
それは、私以外の者にとっても同じ事。
協力的な姿勢も、エリアリーダーから結構信用されてるんですよ。
だから情報の認可が下りたんです。」
「でも、それのどこが聞いて問題になる事なんだ?
魔王の事とか確かにちょっと驚いたけど、それくらいじゃ……。」
「そう、肝心な話はここから。
この世界、そして私たちの世界。
この2つは、同じ歴史を辿った平行世界のようなのです。」
突然のぶっこみ。
まって、同じ歴史っていうんなら何で…?
「私たちの世界からすればここは遥か過去、神話として語られる時代。
なので、その神話が今回の件に関わってるのでは、というのが今の見解です。」
「じゃあその『神話』ってもしかして…?」
「えぇ、おそらくこの世界からすればまだ未来の事。
なので、ここから先は特に秘匿情報です。」
なるほど…それは確かに公にしたらロクな事にならないのは明白……。
「その神話では、最高神『ゴデュラ』が魔法という概念を広めたとあります。
ゴデュラは5人の属性神を定め、魔法の開祖となり。
そして反魔法派と争い、鎮圧した、と。
…こちらの世界を見る限り、相当な文明を犠牲とするほど、大規模な争いだったようですね。」
語るハルルの物憂げな様子は、嘘や冗談で言ってるものではないと確信できるものだった。
「なので、こちら側の目的は『魔力共鳴の原因の究明及び解決』。
その一環として、神話となった荒事にも関わるかもしれません。」
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