そして俺は召喚士に

ふぃる

文字の大きさ
99 / 231

99話 養生と思案の末①

しおりを挟む
 目が覚めたのは、まだ薄暗い時間帯。
 もう少し休んでいよう、そう思い掛け布団を持ち上げしばらくうとうと。
 やがて日が昇り、部屋の中が明るくなっていき。
 すっとイメージして具現化させるウルフ、生活感の無い質素な部屋、ベッドすぐ隣にいるナナノハ……。
「うわっ、な、なに!? どうしてここに!?」
 動揺でイメージが崩れ、ウルフが消失する。
「具合、大丈夫ですか?」
「昨日よりはまだマシ…かな、多分。
 ていうか何でここに!? いつから!?」
「少々話の進展があったので、待ってました。」
 そう言うナナノハの手には、小さい帯状の物が。もしかして昨日言ってた…いや、これは確か……。
「昨日言ってた物は、ここでは調達が難しく時間がかかるものでした。
 でも、代わりに便利な物の持ち出し許可を貰ってきました。」
 持ち上げ陽に照らされ、脈のような模様が光沢としてあらわになる。
「これってもしかして、ハルルが着けてた…?」
「はい、『隠匿の輪』と称された物。支給品限りなので、持ち出しの許可を貰ってきました。
 『その世界に存在しないものを隠す』用途として作られた物ですが、その本質としては『認識を曖昧にする事で既知の情報で補完させる』という働き。
 その効力を応用して添えられた副次機能、なんだと思います?」
「ごめん、まだそこまで頭回らな──」
 思い当たった回答、というよりは思い返してみての違和感。
 ハルルと最初に出会った時、それと学校で再び会った時の奇妙な違い。
「言語の概念化、とでも言うべきでしょうか。音声を媒介に、言葉に乗せた意思そのものを相互伝達できるのです。」
 …つまり自動翻訳みたいなもの、か。
「けど、じゃあナナノハは何で? こっちでも着けてるのか?」
「ボクはただゲートの座標のズレから何年か早くに着いて、聞いて覚えただけなので。
 見た目も自力でどうにかできますし、向こうでも着けてはいません。」
 今なんかさらっと凄い事言ってた気がするが、この状況の上で今更だろう。

 折角なんだし、と受け取り付けてみる。
 一瞬、浮遊感のような奇妙な感覚。とりあえず起動はした、んだろうけど……。
「…何か変わった、のかな…?」
「着けた本人にそんな大きな変化があったら、本業に支障が出ちゃいますし。
 どうでしょう。この言葉、分かりますか?」
 明確な違和感。
 音としては、この街の人が使ってた言葉と思われる。なのに、日本語も同時に聞こえる…ように錯覚してる?
 同じ声が同時に2つしゃべっている。その状態の気持ち悪さが、頭の奥底に響く。
「聞き取れる…けど、ハルルと話してた時と違う、なんか変な感じ。2つの声が重なってるような。」
「…おそらく、こちらの言葉を聞いて、存在を知ってしまったからでしょうね。
 それでも使えてはいるようで、よかったです。」
 こんな状態でも、無いよりはよっぽど助かる、か。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

秘書と社長の秘密

廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。 突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。 ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?

レオナルド先生創世記

山本一義
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...