そして俺は召喚士に

ふぃる

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172話 最終調整②

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「…クラフト一回分か。」
 素材を抱え向かった先、猫獣人ビート族のプレイヤー、キリのところ。通話を繋げ、街の中で待ち合わせ。
「一応言っておくが、高レベル装備は工程が難しいし、まだ実装直後で初動テンプレも定まりきってねぇ。金印成功率は良くて7割ってとこだ。」
 金印、クラフトアイテムのグレードを示す通称だ。出来によってアイコンや名前に付く印から、金印・銀印・銅印と通称で呼ばれてる。
「失敗って言ってもロストする訳じゃないんだろ? なら出来は問わないよ。」
「…つってもプレッシャーかかんなぁ、もう。
 とりあえずこんなとこでもなんだ、パーティリストからテレポートーチに跳べるから、そこ来な。」
 言葉と共に表示されるパーティ勧誘通知。それを受け、言われた通りに場所を移す。


 テレポートーチ、確かハウジングエリアに置ける、移動の着地マーカーだ。
 ハウジングエリアはチュートリアルクエストで覗いただけだったが、広いエリア内に小分けされた土地があり、それをプレイヤーが買って好きに装飾できる要素だ。
 外観を少し見て回るだけでも、シンプルな民家風の家やホイップクリームのようなメルヘンチックな家、砦のような家もあれば、機能家具の為だけと思われる家屋だけの家もあったりと、バリエーションに溢れすぎていた。
 エリアも3種類、閑散とした村と街の住宅街と川沿いの集落風。
 ロード時間の間に、キリならどこ選ぶんだろうと思いつつ。

 着いた所はそのどこでもない、海岸だった。
「あれ、庭…?」
 テレポートーチの設置…というか任意で物を置けるのは私有地である庭だけのはず。
 …いや、確かセリフで説明されてたっけ。エリア丸ごと庭として自由にできる、土地代だけでかなり値が張る住宅が。
「庭ってゆーか、このエリア丸ごと私有地ってゆーか。
 これでもブルジョワ寄りなもんなんで。」
 屋台の店員風に配備された、マーケットだとかのNPCの前を通り過ぎ、木の板張りの海の家的な家へと入っていく。

 中は中で、また大きく様相が違っていた。
 コンパクトな外装とは裏腹に、石壁の地下基地のような間取り。下り階段へと繋がる廊下には、4つの小部屋がある。それぞれキッチンのような部屋、フラスコのある実験室、木材や織機のある部屋、炉のある部屋。それぞれクラフト職4種分という事だろう。
「ここが作業場か。」
「まぁな。作るだけなら携帯型作業台もあるけど、良いんだよ、専用作業台で作る時の演出が。
 …ちょっと作業に集中するぞ。」

 設置された炉に炎が灯り、鉱石素材が精製された金属板として台に置かれる。
 キリのキャラが小さい体躯に分不相応な程に長いハンマーを構え、手早く叩いて形を整えていく。
 ある程度形ができてきた所で、一旦手が止まる。調整の段階に入ったのだろう。
 5秒ほどの思考の間ののち、叩く事数回。更に5秒程置いて、数回叩き。
 それを繰り返し、金属の赤みが引いたところで、冷却水に移し。
 成果を示す完成エフェクトは、無事金色の光を放っていた。
 槍と斧の性質を併せ持つ新実装の武器、ハルバードが仕上がった。

「流石だな。」
「ま、シビアになったとはいえ基本は同じだから、こんなもんよ。
 ただ、こっからは完全に確率お祈りの運ゲー、エンチャントだ。」
 そう、装備の作成は2段階。ベースとなる武器自体の作成と、それに能力補正や特殊効果を付与するエンチャント。
 武器の出来によってエンチャント・スロット数が増える、エンチャントの為に武器の出来が求められる。見学側としては、ここからがクラフトの本番と言っても過言ではない。
「効果は物理攻撃力でいいか?」
「あぁ、それで頼む。」

 部屋を変え、フラスコの部屋。
 絨毯として敷かれた魔法陣の中央にさっきのハルバードを置き、円周上に5箇所ある丸の中に魔石が置かれる。
「聞いたよ。例の呪い、解決できたんだって?」
 赤い五芒星の魔法陣が地面に展開される傍ら、キリが聞く。
「まぁ、一応の解決、かな。」
「そうか。気がかりだったから、よかった。」
 言葉の上では肯定的だが、言い方には何やら曇ったものを感じた。
「…なんかあったのか?」
「いや、ちょっとつられて思い出す事があっただけだ、なんでもない。」
 輝きが増し、魔石それぞれが成功度の光を放つ。虹が3つ、金が2つだ。
「なんか随分当たってない?」
 虹3枠だけでも十分なラインだというのに、残りも金2ときた。
「…ざっと相場で見て素材の15倍ってとこか。」
「やっぱ稼げんだな、クラフト職って。」
「いや、普段はかなり地道なもんだよ。ジンクスってやつ。
 自分用とかフレ用に作るといいモンできんだけど、いざ稼ぎの為に量産ってなると、運が下振れたりでさ。」
 取引申請を受け、あちらの渡す物枠に、今出来上がったハルバードが選ばれ表示される。
「だから、お前が使う為に作ったからこその一振りだ。遠慮なく使ってくれ。」
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