189 / 231
189話 試運転
しおりを挟む
後日、いつもの河原。
新しい事を実践で試す前に、ハルルとの手合わせだ。
ハルルが振るうのはこれまでと同じ、愛用の剣に鞘を付けたままのもの。対するこちらはハルバード…ではなく、ナナノハの管理する中から借りた棍。
魔界の遠征組用にいくらか武器を多めに持ち込んでいて、その中で刃が無く、握り心地がハルバードに近い物を選択。流石に実力が上がってきてる実感がある中で、刃を振るうのには躊躇があった。
この間幽世で試した事を、現世でどれくらい使えるかの試運転も兼ねて。
召喚術の応用で人狼の時の姿を着ぐるみのように纏っての戦闘。相変わらず満月時と比べると劣るし、幽世の時より魔力の消耗が激しいが、それでも何らかの作用で普段よりはよっぽど動ける。
いっそ任意で満月時の状態にできないかとは考えたが、どうにも満月の日以外は違和感のひとつすら感じ取れないくらいに呪いは潜伏している。制御の為に切り分けた都合、ロロにも満月のルールは超えられないとの事だった。
怪物じみた相手では実感が薄かったが、対人となるとやはり使い慣れた長物は大きく状況に影響する。
接近しリーチの先端にハルルを捕らえるや否や、先制の一振り。受け流されてさらに潜り込まれるが、跳躍で頭上を越えながら背後に一撃。しかしそれをハルルは弾き、反動ですれ違い距離を取る。
ハルルの牽制の風弾、それを腕でかき消す。魔力の毛皮が他の魔力を弾くようで、多少の魔法攻撃なら無効化できる。
「その風貌、伊達ではないようですね。」
そう言いハルルが一気に踏み込む。
迎撃の猶予は無い、棍で受けつつ数歩分の距離を飛びのく。
接地、即反転。射程差有利を狙っての一振り。しかし何度も打ち合い間合いは把握されてる。リーチの先端を狙った一撃は、最低限のバックステップにより空を切る。
ハルルも同じように切り返し、懐に潜り込まれる。ハルルの剣の間合いは避けたかったが、今はブレーキで精いっぱい。棍を横に、ハルルの剣を受け止める。
「それで召喚の狼は?」
一時の静止の間に、ハルルが短く問う。
「ハルルとは戦わない、そういう信条だとさ。」
「なるほど。」
かかる圧が不意に解け、違う角度への衝撃。体勢を崩すまいと踏ん張ろうとしたところに、更に追撃。
気付けば地に膝を付き、鞘の剣先がまっすぐこちらに向けられていた。
「まだ武器にハンデある状態で、これなんだよな……。」
明確な決着、武器を収めたハルルの手を借り立ち上がる。
術の維持がしんどくなり、纏っていた体毛が滑り落ち、魔力の粒子となって消え去っていく。
「むしろ、ユートさんは私相手に頑張ってる方だと思いますよ。これでも、かつて騎士として重用された剣術を、一通りの継承は受けてますし。
仮に私たちの世界で活動したら、冒険者として名を揚げられるだけの実力はあるかと。」
そうか、普段の軽いテンションで失念してたけど、ハルルってエリートを自称できるくらいなんだっけ。
「ただ…最初にお会いした時と大分雰囲気が変わりましたね。」
「…みんなそう思ってるっぽい。」
思い返す、ショウヤとの温度差。更に思い返すと、キリも何か引っかかる様子が一瞬見えてた気がする。
「もちろん実力付いたのは喜ばしい事…ですが、教えを授ける対象と思ってた人がいつの間にか迫って来てると思うと思う所はありますし、視点が違えば近しい別の想いもあるかもしれませんね。」
新しい事を実践で試す前に、ハルルとの手合わせだ。
ハルルが振るうのはこれまでと同じ、愛用の剣に鞘を付けたままのもの。対するこちらはハルバード…ではなく、ナナノハの管理する中から借りた棍。
魔界の遠征組用にいくらか武器を多めに持ち込んでいて、その中で刃が無く、握り心地がハルバードに近い物を選択。流石に実力が上がってきてる実感がある中で、刃を振るうのには躊躇があった。
この間幽世で試した事を、現世でどれくらい使えるかの試運転も兼ねて。
召喚術の応用で人狼の時の姿を着ぐるみのように纏っての戦闘。相変わらず満月時と比べると劣るし、幽世の時より魔力の消耗が激しいが、それでも何らかの作用で普段よりはよっぽど動ける。
いっそ任意で満月時の状態にできないかとは考えたが、どうにも満月の日以外は違和感のひとつすら感じ取れないくらいに呪いは潜伏している。制御の為に切り分けた都合、ロロにも満月のルールは超えられないとの事だった。
怪物じみた相手では実感が薄かったが、対人となるとやはり使い慣れた長物は大きく状況に影響する。
接近しリーチの先端にハルルを捕らえるや否や、先制の一振り。受け流されてさらに潜り込まれるが、跳躍で頭上を越えながら背後に一撃。しかしそれをハルルは弾き、反動ですれ違い距離を取る。
ハルルの牽制の風弾、それを腕でかき消す。魔力の毛皮が他の魔力を弾くようで、多少の魔法攻撃なら無効化できる。
「その風貌、伊達ではないようですね。」
そう言いハルルが一気に踏み込む。
迎撃の猶予は無い、棍で受けつつ数歩分の距離を飛びのく。
接地、即反転。射程差有利を狙っての一振り。しかし何度も打ち合い間合いは把握されてる。リーチの先端を狙った一撃は、最低限のバックステップにより空を切る。
ハルルも同じように切り返し、懐に潜り込まれる。ハルルの剣の間合いは避けたかったが、今はブレーキで精いっぱい。棍を横に、ハルルの剣を受け止める。
「それで召喚の狼は?」
一時の静止の間に、ハルルが短く問う。
「ハルルとは戦わない、そういう信条だとさ。」
「なるほど。」
かかる圧が不意に解け、違う角度への衝撃。体勢を崩すまいと踏ん張ろうとしたところに、更に追撃。
気付けば地に膝を付き、鞘の剣先がまっすぐこちらに向けられていた。
「まだ武器にハンデある状態で、これなんだよな……。」
明確な決着、武器を収めたハルルの手を借り立ち上がる。
術の維持がしんどくなり、纏っていた体毛が滑り落ち、魔力の粒子となって消え去っていく。
「むしろ、ユートさんは私相手に頑張ってる方だと思いますよ。これでも、かつて騎士として重用された剣術を、一通りの継承は受けてますし。
仮に私たちの世界で活動したら、冒険者として名を揚げられるだけの実力はあるかと。」
そうか、普段の軽いテンションで失念してたけど、ハルルってエリートを自称できるくらいなんだっけ。
「ただ…最初にお会いした時と大分雰囲気が変わりましたね。」
「…みんなそう思ってるっぽい。」
思い返す、ショウヤとの温度差。更に思い返すと、キリも何か引っかかる様子が一瞬見えてた気がする。
「もちろん実力付いたのは喜ばしい事…ですが、教えを授ける対象と思ってた人がいつの間にか迫って来てると思うと思う所はありますし、視点が違えば近しい別の想いもあるかもしれませんね。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~
Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。
それでも、組織の理不尽には勝てなかった。
——そして、使い潰されて死んだ。
目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。
強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、
因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。
武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。
だが、邪魔する上司も腐った組織もない。
今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。
石炭と化学による国力強化。
情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。
準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。
これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、
「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、
滅びの未来を書き換えようとする建国譚。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
最初から最強ぼっちの俺は英雄になります
総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!
ユニークアイテムな女子(絶対的替えの効かない、唯一無二の彼女)「ゆにかの」
masuta
キャラ文芸
恋と友情、そして命を懸けた決断。青春は止まらない。
世界を股にかける財閥の御曹司・嘉位は、U-15日本代表として世界一を経験した天才投手。
しかし、ある理由で野球を捨て、超エリート進学校・和井田学園へ進学する。
入学式の日、偶然ぶつかった少女・香織。
彼女は、嘉位にとって“絶対的替えの効かない、唯一無二の存在”だった。
香織は、八重の親友。
そして八重は、時に未来を暗示する不思議な夢を見る少女。
その夢が、やがて物語を大きく動かしていく。
ゴールデンウィーク、八重の見た夢は、未曾有の大災害を告げていた。
偶然か、必然か……命を守るために立ち上がる。
「誰も欠けさせない」という信念を胸に走り続ける。
やがて災害を未然に防ぎ、再びグラウンドへと導く。
その中で、恋もまた静かに進んでいく。
「ずっと、君が好きだった」告白の言葉が、災害と勝負を越えた心を震わせる。
それぞれの想いが交錯し、群像劇は加速する。
一人ひとりが主人公。人生に脇役はいない。
現代ファンタジーとリアルが交錯する青春群像劇。
本作は小説家になろう、オリジナル作品のフルリメイク版です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる