26 / 228
レミレニア編
26話 合間の休息③
しおりを挟む
まだ夕日が深く差し込む夕方、見慣れた酒場。
いつもはラディと共にだったが今日は一人という、ちょっと慣れない感じ。普段は1テーブルで完結してた酒場が、今日は広く見える。
今日も中央付近のテーブルは宴模様。最初見た時は憧れもしたが、現状で手いっぱいな現状、まだ遠いという実感が切なくもある。
一応、食事場所としては冒険者でなくても利用できる。が、慣れたつもりでも一人でもそわそわする居辛さ。冒険者以外を見なかった事に、納得せざるを得ない。
注文したのは「雑肉焼き皿」。余った肉や、食用として不向きな肉を集め使った、味よりも安さを重視した一品だ。
食肉納品で駆け出しとしてはいい収入だったから、あえて注文する事もなかった品。けどやっぱりメニューにある以上は気になるし、頼んでみるならこういう時しかない。
見た目はよく見るような厚切り肉、だけどたっぷり乗った赤黒いソースの辛い匂いが鼻の奥を鋭く刺し、肉本来の匂いは全くと言っていいほど分からない。
興味止まぬまま、噛り付いてみる。…硬い。中まで強く火が通った肉はジューシーさをかけ離れ、本来の味もほぼ分からないほど。
しかし確かに硬いが、噛み応えがあると言えなくもない。なによりしびれるような辛みさ飲み水を手放せないが、肉の味を気にさせる隙間のない濃さ、酸味を交えて食の勢いを衰えさせないソースには、駄肉も無駄にさせないという意地を感じる。
大方食べ終わったあたりで、隣の席への訪問者。
この図々しさも、ちょっと久しぶりの感覚。
「よ、少年。調子どーよ。」
「だからその呼び方はどうにかしてくださいよ、コンジュさん。」
ジョッキ片手にいつの間にか。…酒場では普通の事なのだろうか?
「じゃあ早いとこ通り名決めなって。じゃないとずっと『少年』って呼び続けるぞ?」
「まぁ、考えておきます。
で、わざわざ話しに来たって事は、何かあったんすか?」
「新人の心配をするのに、理由なんて無粋じゃない。
依頼の成果を見るに大丈夫そうだけど、一応ね。」
一応という割には、見透かしてるような静かな確信が見える。
「…成果の上ではそうなんすけどね。ちょっと課題点というか、行き詰まりというか……。」
「なるほど、超えるべき壁に当たったわけね。いい冒険者ライフじゃない。」
「またそうやって茶化して。こっちだって大変なんですよ。」
「そういう苦労経験は多い方が、経験としていい思い出になるし、ね。
アタシは冒険者的な質問には答えは返せないけど、先輩は沢山いるんだから、頼っていいんだよ?」
聞こうにも、ラディの特異性から聞くに聞けず。…だけど頼る事を忘れたというのは、否定できない。
「そうですね、片隅には意識しておきます。」
「新入りに構いたいタイプの人だっているんだしさ。アタシみたいに。
質問は口実だよ。これを機に仲間は増やしておきな。それがアタシからできるアドバイス。」
当たり障りのない助言、だけど忙しさで忘れてた事だ。
とはいえ今日は完全に休日モード、明日からはと決め、今日のところは酒場を後にした。
いつもはラディと共にだったが今日は一人という、ちょっと慣れない感じ。普段は1テーブルで完結してた酒場が、今日は広く見える。
今日も中央付近のテーブルは宴模様。最初見た時は憧れもしたが、現状で手いっぱいな現状、まだ遠いという実感が切なくもある。
一応、食事場所としては冒険者でなくても利用できる。が、慣れたつもりでも一人でもそわそわする居辛さ。冒険者以外を見なかった事に、納得せざるを得ない。
注文したのは「雑肉焼き皿」。余った肉や、食用として不向きな肉を集め使った、味よりも安さを重視した一品だ。
食肉納品で駆け出しとしてはいい収入だったから、あえて注文する事もなかった品。けどやっぱりメニューにある以上は気になるし、頼んでみるならこういう時しかない。
見た目はよく見るような厚切り肉、だけどたっぷり乗った赤黒いソースの辛い匂いが鼻の奥を鋭く刺し、肉本来の匂いは全くと言っていいほど分からない。
興味止まぬまま、噛り付いてみる。…硬い。中まで強く火が通った肉はジューシーさをかけ離れ、本来の味もほぼ分からないほど。
しかし確かに硬いが、噛み応えがあると言えなくもない。なによりしびれるような辛みさ飲み水を手放せないが、肉の味を気にさせる隙間のない濃さ、酸味を交えて食の勢いを衰えさせないソースには、駄肉も無駄にさせないという意地を感じる。
大方食べ終わったあたりで、隣の席への訪問者。
この図々しさも、ちょっと久しぶりの感覚。
「よ、少年。調子どーよ。」
「だからその呼び方はどうにかしてくださいよ、コンジュさん。」
ジョッキ片手にいつの間にか。…酒場では普通の事なのだろうか?
「じゃあ早いとこ通り名決めなって。じゃないとずっと『少年』って呼び続けるぞ?」
「まぁ、考えておきます。
で、わざわざ話しに来たって事は、何かあったんすか?」
「新人の心配をするのに、理由なんて無粋じゃない。
依頼の成果を見るに大丈夫そうだけど、一応ね。」
一応という割には、見透かしてるような静かな確信が見える。
「…成果の上ではそうなんすけどね。ちょっと課題点というか、行き詰まりというか……。」
「なるほど、超えるべき壁に当たったわけね。いい冒険者ライフじゃない。」
「またそうやって茶化して。こっちだって大変なんですよ。」
「そういう苦労経験は多い方が、経験としていい思い出になるし、ね。
アタシは冒険者的な質問には答えは返せないけど、先輩は沢山いるんだから、頼っていいんだよ?」
聞こうにも、ラディの特異性から聞くに聞けず。…だけど頼る事を忘れたというのは、否定できない。
「そうですね、片隅には意識しておきます。」
「新入りに構いたいタイプの人だっているんだしさ。アタシみたいに。
質問は口実だよ。これを機に仲間は増やしておきな。それがアタシからできるアドバイス。」
当たり障りのない助言、だけど忙しさで忘れてた事だ。
とはいえ今日は完全に休日モード、明日からはと決め、今日のところは酒場を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
公爵家の次女ですが、静かに学園生活を送るつもりでした
佐伯かなた
恋愛
王国でも屈指の名門、公爵アルヴィス家。
その家には、誰もが称賛する完璧な令嬢がいた。
長女ソフィア。
美貌、知性、礼儀、すべてを備えた理想の公爵令嬢。
そして──もう一人。
妹、レーネ・アルヴィス。
社交界ではほとんど名前も出ない、影の薄い次女。
姉ほど目立つわけでもなく、社交の中心にいるわけでもない。
だが彼女は知っている。
貴族社会では、
誰が本当に優れているのかは、静かな場面でこそ分かるということを。
王立学園に入学したレーネは、
礼儀作法、社交、そして人間関係の中で、静かに周囲を観察していく。
やがて──
軽んじていた者たちは気づく。
「公爵家の妹」が、本当はどんな令嬢だったのかを。
これは、
静かな公爵令嬢が学園と貴族社会で評価を覆していく物語。
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
異世界に降り立った刀匠の孫─真打─
リゥル
ファンタジー
異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!
主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。
亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。
召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。
そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。
それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。
過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。
――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。
カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
異世界召喚に巻き込まれた女は男として生きる
白雪の雫
ファンタジー
水川 北斗(23)はオタクにして腐女子である事を除けば大学卒業後、企業に就職した何処にでもいる社会人だ。
そんな北斗が食堂で友人達と共に昼食を摂り終えたので事務所に戻ろうとしたその時、突然眩い光を放つ魔方陣のようなものが現れ食堂へと向かう吉田 真白(22)と共に吸い込まれてしまった。
「陛下!王母娘娘の神託通りに異世界の女・・・聖なる乙女の召喚に成功しました!」
「しかも二人です!」
「そうか!・・・・・・って一人は男ではないか!兵士よ、今すぐ男の方を追放するのだ!」
古代中国の皇帝っぽい格好をしている青年によって宮殿を追い出され、行く所がない北斗はホクトという青年として酒家で働く事になった。
ある日、北斗が作ったおやつを酒家の店主と女将(男である)が試食したところ、大絶賛。評判が評判を呼び北斗のお菓子目当てに今日も酒家に宿泊客が訪れる。
そんなある日、ある青年が酒家の店主と女将に告げる。
北斗を自分の屋敷の料理人として雇いたいと。
男しか存在しない世界で北斗は男として生きていこうとするのだが・・・どうやら雇い主は北斗に対して──・・・?
思い付きで描いたのでガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義です。
主人公は乙女(?)ゲームの世界であることを知りません。
色々と語られるのは真白サイドです。
夫に欠陥品と吐き捨てられた妃は、魔法使いの手を取るか?
里見
恋愛
リュシアーナは、公爵家の生まれで、容姿は清楚で美しく、所作も惚れ惚れするほどだと評判の妃だ。ただ、彼女が第一皇子に嫁いでから三年が経とうとしていたが、子どもはまだできなかった。
そんな時、夫は陰でこう言った。
「完璧な妻だと思ったのに、肝心なところが欠陥とは」
立ち聞きしてしまい、失望するリュシアーナ。そんな彼女の前に教え子だった魔法使いが現れた。そして、魔法使いは、手を差し出して、提案する。リュシアーナの願いを叶える手伝いをするとーー。
リュシアーナは、自身を子を産む道具のように扱う夫とその周囲を利用してのしあがることを決意し、その手をとる。様々な思惑が交錯する中、彼女と魔法使いは策謀を巡らして、次々と世論を操っていく。
男尊女卑の帝国の中で、リュシアーナは願いを叶えることができるのか、魔法使いは本当に味方なのか……。成り上がりを目論むリュシアーナの陰謀が幕を開ける。
***************************
本編完結済み。番外編を不定期更新中。
追放された没落貴族、拾った通信水晶で神々の配信者になる〜規格外チートと温かいご飯で古代竜もテイムして無双〜
黒崎隼人
ファンタジー
名門アークライト家の三男リオンは、魔力がないという理由で二十歳の誕生日に理不尽に家を追放されてしまう。
行くあてもなく彷徨い込んだ辺境の森で、彼は落ち葉に埋もれていた古びた通信水晶を見つける。
なんとその水晶は、天上界で退屈していた神々の暇つぶし用ネットワークに繋がっていたのだ!
「あなたの姿、神様たちがみんな見てるわよ!」
少し抜けた女神アリアのうっかりミスにより、リオンの生き抜くための姿は神々に生配信されることに。
生きるために危険な迷宮へと足を踏み入れたリオンだったが、神々からのお詫びの「祝福」により、彼自身も驚くほどの規格外の身体能力を手に入れる。
魔物を圧倒的な力で討伐する華麗な身のこなし。
迷宮の片隅で火を熾し、温かく美味しそうな食事を作る素朴な風景。
天上界には存在しないその新鮮な光景に、神々はたちまち大熱狂!
「これ、神様たちからの贈り物よ!」
配信のコメント欄が盛り上がるたび、強力な武器や未知の魔法、そして温かいパンや新鮮な食材といった「投げ銭」が天上界から次々と降り注ぐ。
迷宮で危機に陥っていた誇り高きエルフの弓使いルミナを温かいスープで救い、
配信から漏れ出る神々しい光を感じ取った純白の聖女クレアからは「神の御使い様」と崇められ、
ついには迷宮最深部で数千年の眠りについていた伝説の古代竜の孤独な心をも、その優しさで溶かしていく。
これは、すべてを失った青年が、神々と仲間たちの温かい光に導かれ、新しい領地で笑顔あふれる日々を切り拓いていく――世界で一番温かい神話の始まりの物語。
【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
レドゼンツ伯爵家の次女メルティは、水面に映る未来を見る(予言)事ができた。ある日、父親が事故に遭う事を知りそれを止めた事によって、聖女となり第二王子と婚約する事になるが、なぜか姉であるクラリサがそれらを手にする事に――。51話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる