真水のスライム

ふぃる

文字の大きさ
30 / 228
レミレニア編

30話 幕間:冒険者の酒場

しおりを挟む
「なるほど、しくみはわかりました。」
 ラディの片腕が弓を模り、動きを再現。相変わらず薄い感情表現だが、今楽しんでるのくらいは分かるようになってきた。
「しかし、こんなもので、いりょくが出るのでしょうか?」
「これでも魔法戦闘が普及する前は、遠距離の主力武器だったんだよ。それくらいには威力はあるさ。」

「ところで、もう1つ気になったのですが。」
 弓を腕に戻しながら、ラディが再度。
「さかばって、何で『酒場』なのです?
 みんな、目的はおさけではないのに。」
「まぁ、今も酒も振舞われるけど、メインでない事は確かだよな。
 これは成り立ちが関係してるんだ。」
「さかばの成り立ち?」
「厳密には『今の酒場』の成り立ちだな。
 元々あった酒場が、在り方が変わって今の形になったんだ。」
 一息の間を開け、続ける。
「約700年前…前に話したアスレィが居た頃の時代だ。
 人は別の国の人との戦いに備えてて、魔物対策に割かれる戦力はほとんど無かったんだ。」
「冒険者もいなかった、のです?」
「あぁ、だから民間は自分らで戦って身を護るしかなった。
 けど誰もが戦力になれる訳ではない。
 魔法が不得意な人、治療系の術士、そういった人の分のしわ寄せも行って、辺境部はジリ貧だったんだとか。」
「たたかえる人が、無茶をしてた、と。」
「そ。だからなるべく労力を分担できるように、担当を決めたり情報交換したり、コミュニティが出来上がっていった。
 だけど、雰囲気で回してた、ふわっとした関係性。情報にズレが生じたり、不完全なものだった。」
「つたわる内に、まちがった話がつたわった、と?」
「それもあるし、人から人にの連続だから情報が古くなったりもね。
 だから1つの情報が回された。『各地の代表同士で集まろう』、と。」
「それが今のギルドなのです?」
「そう、だけど場所に難儀した。
 誰かの自宅は『最初から順列を決めてるようなもの』としてダメとされ、だけどそれなりの広さがあって利用できる場所。
 そこで目を付けられたのが、仕事は主に夜、暇してる事の多い『昼間の酒場』だ。」
「さかば自体は、その前からあったんですね。」
「少し栄えた所にある贅沢な店、が当時の酒場だったそうだ。
 情報共有の場として酒場は便利で、店側としても純粋に収益アップ。
 定期的に酒場での会議は行われたわけだ。」
 一息つき、さらに続ける。
「そこに巻き込まれに行ったのが、暇を余した腕自慢だ。噂に釣られて見に行った、とかだろうな。
 ともあれ平穏が退屈なタイプの人らが、会議中の酒場に交じり始めたんだ。」
「それが今の『冒険者』?」
「立場的にはそうだな。
 そいつらにとっては魔物と戦う事自体が道楽であり目的、お気持ち程度の謝礼で戦力となってくれる彼らに、魔物討伐を『依頼』したんだ。」
「だいたい形になってきましたね。」
「もちろん依頼のやりとりも酒場的に収益につながる要素、依頼主も受け手もお得意さん。
 依頼のやり取りが円滑になるよう酒場側もサポートし始めたんだ。
 そうなるといよいよ責任者…今でいうギルドリーダーを据えて、酒場との連携を本格的にした。
 あとは組織として確立するのは時間の問題よ。」
「そのなごりで今も『酒場』と呼ばれてる、と。なっとくです。」
「ま、あくまで成り立ち方の1つだ。全ての国で同じ事が起こった訳じゃないし、違う形でギルドが出来た所もあるらしい。
 けど最も多いものとして、この話になぞらえて各地で『酒場』と呼称が統一されたんだとさ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

処理中です...