真水のスライム

ふぃる

文字の大きさ
145 / 228
シント編

144話 夏フェス⑤

しおりを挟む
「もーセイルさんまちましたよ!」
 再確認しても約束の時間にはまだ早いが、ラディは既にそこに居た。
「いやでもまだ時間前──」
「ラディは待てても、祭りは待ってくれないんですよ?」
 いつになく積極的なラディに手を引かれ、人込みの隙間を抜けていく。


 そうして連れてこられた屋台群。
 さっきまで居た場所とは様相が変わり、奥行きの深い屋台たち。
 品は並べてあるが、どうやら単純に「売る」というものではないらしい。広く取られた屋台の空間、そこに並べられた物や子供を主とした人々の様子、どうやら景品を賭けた遊び場のようだ。

 その中でも目的の場所を見つけていたようで、歩みは迷いなく進んでいく。
 そして、並びの中の一件の前で足を止める。
「お、いいタイミングで戻ってきたな嬢ちゃん。
 丁度待ちが少なくなったとこだ。やってくか?」
「はい、今度こそ。」
 プレイ中の人を除き、待ちは2組といったとこか。
 景品は変わった木彫りなどの装飾品。待ってる間に眺めてるのを見てか、ラディが解説を挟んでくる。
「ねつけ?という東国のお守りらしいです、あの木彫り。
 それが取りたくって。」
 なるほどそれで合流するまで……。
 だとかそうこう言ってる内に、順番がやってきた。

「嬢ちゃんの方がやるのか?」
「はい、おねがいします。」
 …てっきり、僕に取って欲しいからかとばかり。
 ラディにおもちゃのボウガンがラディに渡される。模造品といえどゴム仕込みがされており、弾は撃てるようになっている。
「弾は5発、棚から完全に落とせたら獲得だ。
 頑張りな!」
 すっとボウガンを構えるラディ。その瞬間の表情変化を見逃さなかった。
 …完全にガチの目だ。
 周りの喧噪など無いかのような静かな集中は、一発で目当ての品を射抜く事すら容易だった。

「や、やるなぁ嬢ちゃん。
 ほら、こいつが『報酬』だ。」
 あくまで英傑ごっことしての体裁だろう、やや台本がかったセリフと共に木彫り細工が手渡される。
 手のひらサイズに満たない小型のアクセサリー。刻印されてるエンブレムは、二つの輪が目立つデザインのものだ。
「ありがとうございます。
 それで、その、これをセイルさんに……。」
 表情こそまだ読める程にはできてはいないが、言葉の調子には気恥ずかしさが含まれている。
「…いいのか? ラディが欲しかったんじゃ…?」
「だってセイルさんがんばりすぎてて、一緒にいない時間もふえて、前みたいに無茶しそうで不安で。
 だから、せめてものあんぜんきがん?というものを。」
 ラディ自身、よくは分かっていない様子。だけどそれでも、ラディなりに頑張った結果なのだろう、
「…分かった。有難く貰うとしよう。
 じゃあ代わりに、そうだな……。」
 少し思案、だが答えはすぐそこにあった。
「残り4発、代わりに僕がやっていいかな?」
「おう、嬢ちゃんがいいなら別に構わないぜ。」
 ラディが見守る中、次の弾を手に取りボウガンを構える。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

公爵家の次女ですが、静かに学園生活を送るつもりでした

佐伯かなた
恋愛
王国でも屈指の名門、公爵アルヴィス家。 その家には、誰もが称賛する完璧な令嬢がいた。 長女ソフィア。 美貌、知性、礼儀、すべてを備えた理想の公爵令嬢。 そして──もう一人。 妹、レーネ・アルヴィス。 社交界ではほとんど名前も出ない、影の薄い次女。 姉ほど目立つわけでもなく、社交の中心にいるわけでもない。 だが彼女は知っている。 貴族社会では、 誰が本当に優れているのかは、静かな場面でこそ分かるということを。 王立学園に入学したレーネは、 礼儀作法、社交、そして人間関係の中で、静かに周囲を観察していく。 やがて── 軽んじていた者たちは気づく。 「公爵家の妹」が、本当はどんな令嬢だったのかを。 これは、 静かな公爵令嬢が学園と貴族社会で評価を覆していく物語。

私の存在

戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。 何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。 しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。 しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

追放された没落貴族、拾った通信水晶で神々の配信者になる〜規格外チートと温かいご飯で古代竜もテイムして無双〜

黒崎隼人
ファンタジー
名門アークライト家の三男リオンは、魔力がないという理由で二十歳の誕生日に理不尽に家を追放されてしまう。 行くあてもなく彷徨い込んだ辺境の森で、彼は落ち葉に埋もれていた古びた通信水晶を見つける。 なんとその水晶は、天上界で退屈していた神々の暇つぶし用ネットワークに繋がっていたのだ! 「あなたの姿、神様たちがみんな見てるわよ!」 少し抜けた女神アリアのうっかりミスにより、リオンの生き抜くための姿は神々に生配信されることに。 生きるために危険な迷宮へと足を踏み入れたリオンだったが、神々からのお詫びの「祝福」により、彼自身も驚くほどの規格外の身体能力を手に入れる。 魔物を圧倒的な力で討伐する華麗な身のこなし。 迷宮の片隅で火を熾し、温かく美味しそうな食事を作る素朴な風景。 天上界には存在しないその新鮮な光景に、神々はたちまち大熱狂! 「これ、神様たちからの贈り物よ!」 配信のコメント欄が盛り上がるたび、強力な武器や未知の魔法、そして温かいパンや新鮮な食材といった「投げ銭」が天上界から次々と降り注ぐ。 迷宮で危機に陥っていた誇り高きエルフの弓使いルミナを温かいスープで救い、 配信から漏れ出る神々しい光を感じ取った純白の聖女クレアからは「神の御使い様」と崇められ、 ついには迷宮最深部で数千年の眠りについていた伝説の古代竜の孤独な心をも、その優しさで溶かしていく。 これは、すべてを失った青年が、神々と仲間たちの温かい光に導かれ、新しい領地で笑顔あふれる日々を切り拓いていく――世界で一番温かい神話の始まりの物語。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

夫に欠陥品と吐き捨てられた妃は、魔法使いの手を取るか?

里見
恋愛
リュシアーナは、公爵家の生まれで、容姿は清楚で美しく、所作も惚れ惚れするほどだと評判の妃だ。ただ、彼女が第一皇子に嫁いでから三年が経とうとしていたが、子どもはまだできなかった。 そんな時、夫は陰でこう言った。 「完璧な妻だと思ったのに、肝心なところが欠陥とは」 立ち聞きしてしまい、失望するリュシアーナ。そんな彼女の前に教え子だった魔法使いが現れた。そして、魔法使いは、手を差し出して、提案する。リュシアーナの願いを叶える手伝いをするとーー。 リュシアーナは、自身を子を産む道具のように扱う夫とその周囲を利用してのしあがることを決意し、その手をとる。様々な思惑が交錯する中、彼女と魔法使いは策謀を巡らして、次々と世論を操っていく。 男尊女卑の帝国の中で、リュシアーナは願いを叶えることができるのか、魔法使いは本当に味方なのか……。成り上がりを目論むリュシアーナの陰謀が幕を開ける。 *************************** 本編完結済み。番外編を不定期更新中。

異世界召喚に巻き込まれた女は男として生きる

白雪の雫
ファンタジー
水川 北斗(23)はオタクにして腐女子である事を除けば大学卒業後、企業に就職した何処にでもいる社会人だ。 そんな北斗が食堂で友人達と共に昼食を摂り終えたので事務所に戻ろうとしたその時、突然眩い光を放つ魔方陣のようなものが現れ食堂へと向かう吉田 真白(22)と共に吸い込まれてしまった。 「陛下!王母娘娘の神託通りに異世界の女・・・聖なる乙女の召喚に成功しました!」 「しかも二人です!」 「そうか!・・・・・・って一人は男ではないか!兵士よ、今すぐ男の方を追放するのだ!」 古代中国の皇帝っぽい格好をしている青年によって宮殿を追い出され、行く所がない北斗はホクトという青年として酒家で働く事になった。 ある日、北斗が作ったおやつを酒家の店主と女将(男である)が試食したところ、大絶賛。評判が評判を呼び北斗のお菓子目当てに今日も酒家に宿泊客が訪れる。 そんなある日、ある青年が酒家の店主と女将に告げる。 北斗を自分の屋敷の料理人として雇いたいと。 男しか存在しない世界で北斗は男として生きていこうとするのだが・・・どうやら雇い主は北斗に対して──・・・? 思い付きで描いたのでガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義です。 主人公は乙女(?)ゲームの世界であることを知りません。 色々と語られるのは真白サイドです。

「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。

秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。 「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」 第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。 着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。 「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。 行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。 「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」 「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」 氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。 一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。 慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。 しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。 「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」 これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。

処理中です...