真水のスライム

ふぃる

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シント編

最終話 そして

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 エンに伝手を頼み、援軍を呼んでもらい。
 待ってる間の問答で、ラディにはもう余計な手を出さないという言質は取れた。
 ただその理由が「ここまで自我が育ったんならフォーマットかけるより観察したい」というのが癪ではあるが、今はそれだけでも十分。


 その後の処理は早かった。

 シントに戻って数日、テムスさんの進言でチーム旋風陣に匿われていた。
 そこで聞いたが、動乱の翌日に自分達を発見したのはタァだったとの事。無事を確認できたとはいえ不安でもあったようで、真っ先に飛びついてきた。
 一方ミレースさんは業務と私情の狭間で複雑そうで、最低限のやり取りを除き不干渉を貫いていた。
 それだけに報せが来た時の気の緩み様は、見てて凄まじいものだった。
 コンジュに仕組まれた手配は解かれ、暫く振りに自由の身だ。

 その報せを持ってきたエンが、他にも色々と言伝を預かってる、との事だった。


「……まさかあの時既に『無茶苦茶した後』、だったなんてね。」
 大通りの交差を広く見渡せるカフェ、エンが報道誌と街並みを見ながら言う。
 本来なら穏やかな街角を一望できたのだろうが、今やどこを見ても爪に裂かれた跡が目に入る。

 報道の関心は「赤霧の鎧」の方に寄っていた。
 記事としては目撃者へのインタビューとか、調査の結果魔王と同質の魔力の痕跡が確認されたとか、そういう話。
 路地裏の事も否定的に書いてはあるが、メインの話題からは外れている。というのは目論見通り。


「で本題入るね。
 まずコンジュの事、とりあえず調査が済むまで身柄は拘束されるって。」
「あの戦闘の事か?」
「…それが痕跡の荒れ様から事実確認が厳しくて、その方面はあまり追及できないみたい。
 けど、それをきっかけとして調べたら色々と失態が出てきたんだって。
 だから予算横領だとか備品の不正利用とか、そういう方面で裁く事になるってさ。」
「…抜け目ないな。」

「もう一つ、ラディ君の事。
 こっちでも事情は聞いた。扱いとして『魔物』じゃなくて人工的な『道具』、だから問題無いって。」
「…物、ですか。」
 そうラディがぼそりとつぶやく。
「と言うと聞こえは悪いけどね、魔物を徹底的に廃してきたここで合法として通す為に、そういう事にしてくれたって形。」
 エンとしても思う所はある様子。
 その気持ちも分かるが、それ以上にラディがもっと自由に居られる方向性への期待度の方が高かった。
「あとは…そう、その『現出の輪』も、そのまま持っててだって。
 実用記録の有用性は高いから、責任者が代わって試運転続行、という名目で。
 魔石も全面的とまではいかないけど、工面してくれるって。」
「…随分とこっちにいいようにしてくれるんだな。」
「それだけコンジュの好き勝手に迷惑してた人も居たって事。
 少ないけど全面的な味方もできてる、って事は覚えておいてあげて。」
 直接の関わりが無い人をあてにしようとは思わないが、一応留意はしておこう。

「それで、これからどうするつもり?
 当初のシントでの目的は済んだわけだけど。」
 伝達という役割が終わり、緩んだ様子でエンが聞く。
「そうだな、関わった事ではあるし、この動乱の行く末は最後まで見届けたい。
 『赤霧の鎧』の話題を作れたのも、この南門地区だけだったし。」
「ラディ君もそれでいいと思う?」
 …あくまでラディの方に手綱を握らせたいのが、ひしひしと伝わってくる。
「ラディとしても『路地裏』のみんなの事は放っておきたくないし、見届けるくらいなら。
 …次から無茶しようって時は、ちゃんと話してくださいよ?」
「分かったよ。」
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