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帰還
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一時撤退したものの、ディアブロが俺たちを探しているのか、先ほどの方向から瓦礫のぶつかり合う音が依然として聞こえてきた。
「お前、大丈夫か」
俺は震えていた。
それは恐怖、絶望、様々な負の感情が混じりあっていた。
目の前で人が怪物になるのを見たんだ。
普通でいられるわけがない。
そう思いながら神谷を見ると考え事をしているのか真剣な顔をしていた。
「アレはもう何度も見た。」
神谷はぽつりと呟いてしばらく間をおいて続けた。
「親友がな。中学の帰り道だったんだ。髪の色を見ればわかるかもしれないが、俺はハーフで幼い頃はイギリスにいた。日本に来て初めて出来た友だちだったんだ。あいつを助けたいと思った俺は能力が発現した…けどダメだった。」
悲しそうな目をして俯いた神谷に何と言えばいいかわからなかった。
「あれはもう人間じゃない。殺るぞ。いきなり戦わせることになって悪いが、能力は使えそうか?」
「いや、わからない。あの時はたまたまだったから…」
「俺が引きつける。その間にどうにか使えるようにしてくれ。いくぞ…!」
無茶振りすぎる。何をどうやったらいいのかわからない。
神谷はカメレオンの前で華麗に動き、時折蹴りを入れていた。
俺はカメレオンに向かって走っていったが、あっけなく尻尾ではねとばされてしまう。
仰向けの状態で身動きが取れず、カメレオンに踏み潰されそうになったとき、目の前にいたそいつは膨れ上がって破裂した。
緑色の体液が俺に向かって降り注いだ。
呆気にとられていると聞いたことのある声が頭上からした。
「はいはーい、大橋さーん、大丈夫でしたか?」
顔を上げると園部が満面の笑みで微笑みながら見下ろしている。
「え、はぁ、何とか」
「よかったですねぇ、危うくペチャンコになっちゃうところでしたよぉー」
「ありがとう。神谷は?」
「そっちも殺っときましたよ?パァンって。風船みたいに?」
瓦礫の音がする方を見ると緑のペンキを被ったような神谷がこちらに向かって歩いてきていた。
「私の能力は【熱操作】何です。物質の温度を内側外側関係なく上げたり下げたり出来るんですよ。さっきのはヤツの身体中の水分をぜーんぶ沸騰させてバーンって!」
「貴様覚えておけよ…」
「神谷くんだって能力のインターバルでヤバかったじゃーん!感謝してね♡」
こうして俺の初戦闘は幕を閉じた。
本部に戻ってシャワー室に向かったとき、鏡の自分を見て驚いた。
神谷と同じで頭から緑色だった。
ディアブロの体液を落として例の広間に向かうと坂本が待っていた。
「お疲れ様でした。ご無事で何より」
「死にかけましたけどね。」
そう言うと坂本は静かに笑った。
「俺の能力って発動の条件とかあるんですか?」
「人それぞれ違うんです。初めてのことで疲れただろう。次の戦闘には私が行こう。君は休みながら神谷くんや園部くんにコツでも教えてもらうといい。」
「ありがとうございます。」
外に出ると光が眩しかった。
本部の外をじっくり見るのは初めてだ。
目の前は崖で下には沈む太陽に淡い色に染められた綺麗な海が広がっている。背中には山を背負っており、戦闘や隠れるのには持ってこいの場所のようだった。
何だったんだろう。あの成人式のときは。
いつまでも仲間に頼っていてはいけないと思い、頬を強めに叩いた俺は自室へ向かった。
「お前、大丈夫か」
俺は震えていた。
それは恐怖、絶望、様々な負の感情が混じりあっていた。
目の前で人が怪物になるのを見たんだ。
普通でいられるわけがない。
そう思いながら神谷を見ると考え事をしているのか真剣な顔をしていた。
「アレはもう何度も見た。」
神谷はぽつりと呟いてしばらく間をおいて続けた。
「親友がな。中学の帰り道だったんだ。髪の色を見ればわかるかもしれないが、俺はハーフで幼い頃はイギリスにいた。日本に来て初めて出来た友だちだったんだ。あいつを助けたいと思った俺は能力が発現した…けどダメだった。」
悲しそうな目をして俯いた神谷に何と言えばいいかわからなかった。
「あれはもう人間じゃない。殺るぞ。いきなり戦わせることになって悪いが、能力は使えそうか?」
「いや、わからない。あの時はたまたまだったから…」
「俺が引きつける。その間にどうにか使えるようにしてくれ。いくぞ…!」
無茶振りすぎる。何をどうやったらいいのかわからない。
神谷はカメレオンの前で華麗に動き、時折蹴りを入れていた。
俺はカメレオンに向かって走っていったが、あっけなく尻尾ではねとばされてしまう。
仰向けの状態で身動きが取れず、カメレオンに踏み潰されそうになったとき、目の前にいたそいつは膨れ上がって破裂した。
緑色の体液が俺に向かって降り注いだ。
呆気にとられていると聞いたことのある声が頭上からした。
「はいはーい、大橋さーん、大丈夫でしたか?」
顔を上げると園部が満面の笑みで微笑みながら見下ろしている。
「え、はぁ、何とか」
「よかったですねぇ、危うくペチャンコになっちゃうところでしたよぉー」
「ありがとう。神谷は?」
「そっちも殺っときましたよ?パァンって。風船みたいに?」
瓦礫の音がする方を見ると緑のペンキを被ったような神谷がこちらに向かって歩いてきていた。
「私の能力は【熱操作】何です。物質の温度を内側外側関係なく上げたり下げたり出来るんですよ。さっきのはヤツの身体中の水分をぜーんぶ沸騰させてバーンって!」
「貴様覚えておけよ…」
「神谷くんだって能力のインターバルでヤバかったじゃーん!感謝してね♡」
こうして俺の初戦闘は幕を閉じた。
本部に戻ってシャワー室に向かったとき、鏡の自分を見て驚いた。
神谷と同じで頭から緑色だった。
ディアブロの体液を落として例の広間に向かうと坂本が待っていた。
「お疲れ様でした。ご無事で何より」
「死にかけましたけどね。」
そう言うと坂本は静かに笑った。
「俺の能力って発動の条件とかあるんですか?」
「人それぞれ違うんです。初めてのことで疲れただろう。次の戦闘には私が行こう。君は休みながら神谷くんや園部くんにコツでも教えてもらうといい。」
「ありがとうございます。」
外に出ると光が眩しかった。
本部の外をじっくり見るのは初めてだ。
目の前は崖で下には沈む太陽に淡い色に染められた綺麗な海が広がっている。背中には山を背負っており、戦闘や隠れるのには持ってこいの場所のようだった。
何だったんだろう。あの成人式のときは。
いつまでも仲間に頼っていてはいけないと思い、頬を強めに叩いた俺は自室へ向かった。
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