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サンタクロースの こない夜
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「おにいちゃん。アコちゃんとこ、どうしてサンタさん、こないの。」
「ことしはきっとくるよ、アコ。ことしこなくても、らいねんかならずくるよ。」
さとしくんは、妹のアツ子ちゃんに、こんななぐさめを言ったものの、あまり自信がもてませんでした。
とくに、「ことしはきっと」はむりだとわかっていました。なぜって、おこずかいがそんなにたまっていなかったからです。でも、「らいねんかならず」は、なんとかなりそうな気がしたのです。半分ほんとで、半分ほんとでないことを言ってしまったのです。
「アコちゃん。ほら、お空を見てごらん。あそこに青く光ってるお星さまがあるでしょ。あれが、アコちゃんのおかあさんだよ。わかるかい。」
「うん。アコ、わかる。青く、光ってる。」
「そうだよ。ぼく、おとうさんに教わったんだ。」
「アコ、おとうさんに、会いたいな。」
「うん。さとにいちゃんも会いたいな。でも、おとうさんは大事なお仕事で、いま外国に行ってるからね。アコが小学生になるまでには、きっと帰ってくるって言ってたから、それまで三人で待とうね。」
「うん、待とうね。」
さとしさんが「三人で」と言ったのは、妹のアコちゃんと、おばあちゃんの三人のことなのです。おばあちゃんは、おとうさんのおかあさんです。
おとうさんは、去年の春、会社の仕事で、海外出張にでかけてしまったので、いまは三人でるすばんをして、おとうさんの帰りを待っているのでした。
おかあさんは、アツ子さんがまだよちよち歩きのころ病気でなくなったので、アツ子さんは、おかあさんのことはあまりおぼえていません。
でも、さとしさんは小学一年生だたので、おかあさんのことはよくおぼえていました。
(おかあさんは背が高くて、とても手が長くて、その長い手でよくぼくをだっこしてくれたっけ。山なみ小学校へ入学するとき、学校まで手をつないでくれたよね。二人で家の前で記念写真をとったよね。それから、おかあさんはしゃがんで、ぼくの肩に両手をおいて、「おめでとう。これからもよろしくね。」って言ったよね。それなのに、それからしばらくして死んでしまったんだ。どうして、ぼくやアコをのこして死んでしまったの、おかあさん。)
さとしさんはアコちゃんの肩に手をおきながら、そっと青い星に呼びかけました。
わずかに、星がちかちかと光りをなげかけました。さとしさんのなみだで、青い光りがぼうっとかすみました。
「ねえねえ、あなた。そうよ、そこでひとりきりで青い光をだしてる、あなた。」
「あら、わたしのことかしら。そういうあなたは、このあいだこちらに、引っこしてきた方ね。なにかしら。」
「ほら、あそこの縁側で、二人の兄妹があなたのお話をしているのを、わたし、聞くともなく聞いてしまったの。」
「わたしも聞いててよ。そうなの、あの子たちって、おかあさんに早くに死なれて、とてもえお気の毒なのよ。」
「かわいそね。せめて、サンタクロースのおみやげでもあればいいのにね。」
「サンタクロースも、このごろ数が少なくなってしまったからねえ。」
「そうね、それにトナカイもね。」
「あまり、空をかけてるところを見かけなくなったわねえ。」
「おにいちゃん。アコの家、エントツがないからサンタさん来てくれないのかなあ。」
「エントツ❓️あるじゃないか、お風呂の。」
「あんなトタンの、小さいのじゃ、はいれないよ。」
「そうかな。そんなことはないと思うよ。ヒサシくんとこもカツジくんとこも、あんなエントツだよ。」
「じゃ、なんでアコのとこには来てくれないの。」
「だから、らい年はかならずくるって。おにいちゃんの言うこと、信じてよ。」
「ふうん、らい年か。」
アツ子さんは、なかなかなっとくしません。
「アコちゃん。じゃ、おにいちゃんが、クリスマスのうた、おしえてあげようか。」
「うん。アコ、おしえてほしい。」
「うん。じゃ、いくよ。ジングベ、ジングベ、ジングオーザエー。」
「おにいちゃん。ジングベってなんなの。」
「ジングさんてことだよ。ほら、となりのおじいさん、たろべえっていうだろ。だから、ジングベだよ。」
「ふうん。オーザエーは❓️
「う~ん。だから、お星さまのかたまりを星座っていうでさはょ。その、王座のことだよ。」
「ふうん。」
「ほら、お星さまを見てごらん。いま、ちかって光ったでしょ。そうだそうだって、おかあさんが言ってるんだよ。」
「あっ、光った。」
「ほら、あなた。あんなこと言ってるわよ。」
「かわいいわね。すっかりわたしをおかあさんだと思ってるのね。」
青い星は、そう言うと、長い手をさしのべて、子どもたちを青い光りでつつんだのでした。
「ところで、さっきの話だけど・・・」
「なあに。サンタクロースのプレゼントのこと❓️」
「そうよ。なんとかならないかしら。あなた、いいアイデアないの。」
「星は、光るほか、なにもできないのよ。」
「そうね。つらいわね。」
「そうだ。ひとつだけ、いいアイデアがうかんだわ。」
「あら、うれしいわ。どんな❓️」
「ほうき星さんに、たのむのよ。」
「でも、ほうき星さんが、いつやってくるかがもんだいよ。」
「だいじょうぶ。もうすぐ、ここを通りかかるわよ。」
青いお星さまは、ほうき星さんにおねがいごとをしました。いったい、どんなことをたのんだのでしょうね。
青いお星さまは、自分のお姉さん星の近くを、ほうき星さんに飛んでほしいとおねがいしたのでした。
それも盛大に、光りをふりまいて❗️
その夜のことです。異国でそれとなく空を見上げた、二人の幼な児のおとうさんは、大きなほうき星の流れるのを目にしました。そのほうき星の流れた跡に、青いお星のお姉さん星がまたたいてしたのでした。
おとうさんは、青白く光る姉星をながめているうちに、ふいに、亡くした妻と児らのことに思いが至りました。
(ああ、あの子らはいまごろどうしているだろうか。おかあさんがいなくて、不憫なことだ。)
クリスマスイヴの晩でした。
おばあさんは、外国のおとうさんから届いたプレゼントを、そっと、子どもらの枕もとにおきました。それから、そっと、ふすまをしめました。
(おしまい)
「ことしはきっとくるよ、アコ。ことしこなくても、らいねんかならずくるよ。」
さとしくんは、妹のアツ子ちゃんに、こんななぐさめを言ったものの、あまり自信がもてませんでした。
とくに、「ことしはきっと」はむりだとわかっていました。なぜって、おこずかいがそんなにたまっていなかったからです。でも、「らいねんかならず」は、なんとかなりそうな気がしたのです。半分ほんとで、半分ほんとでないことを言ってしまったのです。
「アコちゃん。ほら、お空を見てごらん。あそこに青く光ってるお星さまがあるでしょ。あれが、アコちゃんのおかあさんだよ。わかるかい。」
「うん。アコ、わかる。青く、光ってる。」
「そうだよ。ぼく、おとうさんに教わったんだ。」
「アコ、おとうさんに、会いたいな。」
「うん。さとにいちゃんも会いたいな。でも、おとうさんは大事なお仕事で、いま外国に行ってるからね。アコが小学生になるまでには、きっと帰ってくるって言ってたから、それまで三人で待とうね。」
「うん、待とうね。」
さとしさんが「三人で」と言ったのは、妹のアコちゃんと、おばあちゃんの三人のことなのです。おばあちゃんは、おとうさんのおかあさんです。
おとうさんは、去年の春、会社の仕事で、海外出張にでかけてしまったので、いまは三人でるすばんをして、おとうさんの帰りを待っているのでした。
おかあさんは、アツ子さんがまだよちよち歩きのころ病気でなくなったので、アツ子さんは、おかあさんのことはあまりおぼえていません。
でも、さとしさんは小学一年生だたので、おかあさんのことはよくおぼえていました。
(おかあさんは背が高くて、とても手が長くて、その長い手でよくぼくをだっこしてくれたっけ。山なみ小学校へ入学するとき、学校まで手をつないでくれたよね。二人で家の前で記念写真をとったよね。それから、おかあさんはしゃがんで、ぼくの肩に両手をおいて、「おめでとう。これからもよろしくね。」って言ったよね。それなのに、それからしばらくして死んでしまったんだ。どうして、ぼくやアコをのこして死んでしまったの、おかあさん。)
さとしさんはアコちゃんの肩に手をおきながら、そっと青い星に呼びかけました。
わずかに、星がちかちかと光りをなげかけました。さとしさんのなみだで、青い光りがぼうっとかすみました。
「ねえねえ、あなた。そうよ、そこでひとりきりで青い光をだしてる、あなた。」
「あら、わたしのことかしら。そういうあなたは、このあいだこちらに、引っこしてきた方ね。なにかしら。」
「ほら、あそこの縁側で、二人の兄妹があなたのお話をしているのを、わたし、聞くともなく聞いてしまったの。」
「わたしも聞いててよ。そうなの、あの子たちって、おかあさんに早くに死なれて、とてもえお気の毒なのよ。」
「かわいそね。せめて、サンタクロースのおみやげでもあればいいのにね。」
「サンタクロースも、このごろ数が少なくなってしまったからねえ。」
「そうね、それにトナカイもね。」
「あまり、空をかけてるところを見かけなくなったわねえ。」
「おにいちゃん。アコの家、エントツがないからサンタさん来てくれないのかなあ。」
「エントツ❓️あるじゃないか、お風呂の。」
「あんなトタンの、小さいのじゃ、はいれないよ。」
「そうかな。そんなことはないと思うよ。ヒサシくんとこもカツジくんとこも、あんなエントツだよ。」
「じゃ、なんでアコのとこには来てくれないの。」
「だから、らい年はかならずくるって。おにいちゃんの言うこと、信じてよ。」
「ふうん、らい年か。」
アツ子さんは、なかなかなっとくしません。
「アコちゃん。じゃ、おにいちゃんが、クリスマスのうた、おしえてあげようか。」
「うん。アコ、おしえてほしい。」
「うん。じゃ、いくよ。ジングベ、ジングベ、ジングオーザエー。」
「おにいちゃん。ジングベってなんなの。」
「ジングさんてことだよ。ほら、となりのおじいさん、たろべえっていうだろ。だから、ジングベだよ。」
「ふうん。オーザエーは❓️
「う~ん。だから、お星さまのかたまりを星座っていうでさはょ。その、王座のことだよ。」
「ふうん。」
「ほら、お星さまを見てごらん。いま、ちかって光ったでしょ。そうだそうだって、おかあさんが言ってるんだよ。」
「あっ、光った。」
「ほら、あなた。あんなこと言ってるわよ。」
「かわいいわね。すっかりわたしをおかあさんだと思ってるのね。」
青い星は、そう言うと、長い手をさしのべて、子どもたちを青い光りでつつんだのでした。
「ところで、さっきの話だけど・・・」
「なあに。サンタクロースのプレゼントのこと❓️」
「そうよ。なんとかならないかしら。あなた、いいアイデアないの。」
「星は、光るほか、なにもできないのよ。」
「そうね。つらいわね。」
「そうだ。ひとつだけ、いいアイデアがうかんだわ。」
「あら、うれしいわ。どんな❓️」
「ほうき星さんに、たのむのよ。」
「でも、ほうき星さんが、いつやってくるかがもんだいよ。」
「だいじょうぶ。もうすぐ、ここを通りかかるわよ。」
青いお星さまは、ほうき星さんにおねがいごとをしました。いったい、どんなことをたのんだのでしょうね。
青いお星さまは、自分のお姉さん星の近くを、ほうき星さんに飛んでほしいとおねがいしたのでした。
それも盛大に、光りをふりまいて❗️
その夜のことです。異国でそれとなく空を見上げた、二人の幼な児のおとうさんは、大きなほうき星の流れるのを目にしました。そのほうき星の流れた跡に、青いお星のお姉さん星がまたたいてしたのでした。
おとうさんは、青白く光る姉星をながめているうちに、ふいに、亡くした妻と児らのことに思いが至りました。
(ああ、あの子らはいまごろどうしているだろうか。おかあさんがいなくて、不憫なことだ。)
クリスマスイヴの晩でした。
おばあさんは、外国のおとうさんから届いたプレゼントを、そっと、子どもらの枕もとにおきました。それから、そっと、ふすまをしめました。
(おしまい)
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