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第十四話 俊樹、ストリートピアノデビュー

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やった。梨穂ちゃんとスカイウォークでデートだ。
「じゃ、最初にデパート行って梨穂ちゃんの服を買おう。寝間着姿で連れていけないよ」

その後、車に乗って三島市内の大型ショッピングモールに梨穂ちゃんを連れていく。
しかし、寝間着姿でモール内を歩かせるわけにもいかない。駐車場に車を停めて

「俺が適当に見繕ってくるよ。ただスカイウォークに行くのだからスカートは適さない。吊り橋に吹く風でめくれちゃうからね。ジーンズのズボンでいいね?」
「いいよ。上着も適当で大丈夫。私はあまり服にこだわらないから。だけどサイズは?」
「ふふふっ、梨穂ちゃんを堪能した俺の頭の中にはチミのスリーサイズくらい把握しているよ。下着も買ってくるから」
「ふふっ、おじ様のエッチ」
「あ、靴のサイズだけ教えて」

そして俺はモール内に。靴と下着も含めて一通りの衣服を一万円以内に済ませた。
あまり高いのを買うのも何だしな。
下着はもろ俺の好みだ。今宵は『俺に脱がさせて』と頼んでみよう。女の子のパンティをずりおろして、あそこが見える瞬間、昨日まで素人童貞だった俺は是非ともやってみたいことだった。

車に戻ると待ちくたびれた梨穂ちゃん、あくびしていた。
「ごめん、少し長かったね」
「ううん、大丈夫。買ってきた服見せて」
「まあ、あまり期待しないでくれ。五十路男には二十歳の女の子に似合う服など、そう選べないからな」

「うふふっ、おじ様、こういう可愛い下着が趣味なの?白いパンティとブラ」
「そうだな、あと薄い桃色とか」
いそいそと後部座席で寝間着を脱いで下着を取り換えている梨穂ちゃん。眼福だ。
「そんなにガン見しないでよ。夜たっぷり隅々まで見せてあげるし」
「楽しみにしているよ。サイズは合った?」
「うん、ちょうどいいみたい。おじ様、服のセンスあるじゃない」
「そう?安物ばかりだけど気に入ってくれたら嬉しいよ。そろそろランチ時だしモール内で軽く食べていこうか」
「うん」

モール内に入り、二人で歩く。ちょっとしたデート気分だ。梨穂ちゃんは俺の右腕に抱き着いてくれる。憧れていたんだよな、こういうシチュエーション。
娘のような歳の梨穂ちゃん、何か本当に大好きになってしまいそう。性格がさっぱりしているし食後の食器洗いを自発的に申し出てくれたことが嬉しい。何より体が最高なんだ。

「ええと、フードコートはどこかな…」
梨穂ちゃんと一緒に店内案内図を見ていると
「ピアノの音…」
音の方角に顔を向ける梨穂ちゃん。
「へえ、ここストリートピアノが置いてあるのか。まあ大きなショッピングモールだし」
「ちょっと聴きにいかない?私、ピアノ音楽聴くの大好きなの」
「弾けるの?」
「ううん、全然。習いたいなぁと思っているうちに二十歳になっちゃった」
「じゃ、俺が弾くから聴いてくれる?」
「えっ?おじ様、ピアノ弾けるの?」
「まあ、趣味程度だよ。動画サイトに投稿するほどのもんじゃないし。何かリクエストある?」
「じゃ、じゃあ『妖滅の刀』の赤蓮花を」
「ああ、大ヒットしたアニメだね。映画も観に行ったよ」
「私も~!ガチ泣きしたもん!」

予期せずストリートピアノデビューとなったな。セイラシアでユズリィとリナチのためにピアノを弾いたけれど、二人は『プロデューサーは天才ピアニストだ』と俺の腕前を絶賛してくれた。まあ、当時彼女たちの生活の安全を担っていたのは俺だから、ちょっと盛って称賛したんだろうが。
さて、セイラシアではなく令和日本ではどうだろうか。音楽スキルを出しつつ、いっちょ弾いてみよう。
俺と梨穂ちゃんがピアノの場所に着いたころ、前に演奏していた人がピアノから立ち、備え付きの消毒液で鍵盤を拭いていた。なるほど、演奏後はああするのがエチケットか。俺も心掛けないと。

俺はピアノに着いて、赤蓮花を奏でた。梨穂ちゃん絶句していた。
そりゃ、自分にだらしない顔で腰を使っていた助平親父がピアノをそれなりに弾けたら驚くか。しかも譜面もなしに。
立ち止まって聴いてくれる人がどんどん増えてきた。もしかして、俺ってかなり弾けている?よし、ちょっと梨穂ちゃんにサプライズだ。劇場版主題歌の『焔』を赤蓮花からメドレーで繋げた。梨穂ちゃん俺の演奏する姿に釘付けですよ。
だけど、次は俺にサプライズだった。梨穂ちゃん『焔』を歌いだした。
びっくりしたよ。だって、滅茶苦茶歌が上手いんだもの。ピアノの音量に負けない声量も十分。何で、こんなに歌が上手い子が嬢をしていたのか分からない。すごいな、歌うま選手権に出場したら、絶対に上位いけるだろう。歌詞カードもなしに間違えず『焔』を歌う梨穂ちゃん。演奏しながら聴き惚れてしまったよ。

演奏を終わると、俺と梨穂ちゃんは盛大な拍手をもらった。こういうのに慣れていない俺と梨穂ちゃんは聴いてくれた人たちに照れ笑いを浮かべつつペコリと頭を下げて立ち去ろうとした時
「おじさん、演奏後の消毒」
「あ、いけね」
梨穂ちゃんナイス!マナー違反はいけない。あやうく忘れるところだった。『おじ様』と呼ばなかった心配りもいいね。


「おじ様、すごくピアノ上手じゃない!」
「梨穂ちゃんも歌がすごく上手でびっくりしたよ!」
何か密着度が上がっています。俺の右腕は梨穂ちゃんの両腕とおっぱいの谷間にロックされています。こんな嬉しいことはない…。
このあと、フードコートでパスタを食べて、改めてスカイウォークに出発した。
車内はピアノと歌の話で大盛り上がりだ。

「さて、梨穂ちゃん、そろそろスカイウォークに着くよ」
「うん、天気すごくいいし楽しみ」
「本当だな。天気でも雲があれば富士山は見えない時あるからね。まさに文字通り『雲隠れ』だよ」
「雲一つない快晴だものね。富士山、富士山♪」

駐車場に車を停めると、梨穂ちゃんはルンルン気分で助手席から出て
「おじ様、早く吊り橋に行こうよ!」
「ああ、ところで梨穂ちゃんは高いところ大丈夫?」
「大丈夫だよ。ふふっ」
「吊り橋の向こう側から滑車でビューンと降りていくアトラクションがあるみたいだから、やってみるかい?」
「やる!やってみたい!」
子供のようにはしゃぐ梨穂ちゃん。ああ、男ってのは女の子の笑顔のためなら何でもしちゃうんだな。だが、それがいい。
梨穂ちゃんも俺に甘えてくれて、とてつもなく嬉しい。

吊り橋を渡る料金を支払い、チケットを手に吊り橋に。吊り橋を渡る前から梨穂ちゃん大興奮。『SKYWALK』と大きい文字の看板があるのだけど、そこに陣取り
「写真を撮って!」
と、お願いされたので俺のスマホで撮ってあげた。今の梨穂ちゃんはスマホを持っていないので
「あとで転送してね」
もちろんです。でも、それって俺と連絡先を交換ということですよね。やったぜ。

吊り橋を渡り始めた。以前は一人で訪れたけれど、やはり女の子と一緒だと全然楽しさが違う。吊り橋の中ほどに立つと冠雪した富士山と駿河湾の見事な共演。
「わああ…」
梨穂ちゃん、見惚れています。聞けば彼女は千葉の松戸出身。富士山なんてわざわざ静岡に旅行に来ないと見られないものね。
「おじ様、連れてきてくれてありがとう」
満面の笑みでそう言ってくれた。嬉しいなぁ…。
「どういたしまして」
スカイウォークは三島の民間企業が架けた橋…。地元民なのに勉強不足で申し訳ないが社名は知らない。知らないけれど感謝したい。最高の笑顔を見られましたよ。

「きゃああああ~」
ロープにかかる滑車で地面に降りていくアトラクション。梨穂ちゃんは可愛い悲鳴をあげて楽しんでいる。ちなみに言うと俺は無理。高いの苦手。だからはしご車に乗る時は大変だったよ。
地面に着くと発着場近くにいる俺に手を振ってくれた。回りの人は俺たちのこと、どういう二人に見えるのかな。親子かな?恋人同士に見られていたらよいな。
時代劇に若い嫁さん娶っている剣客の爺さんいるでしょ。

吊り橋をあとにして、俺たちはスカイウォーク関連施設を回る。すると前回来た時には気づかなかったストリートピアノがここにも設置されていた。空を表す青色のピアノだった。
「おじ様、何か弾いてほしいな」
「梨穂ちゃんが歌詞カードなしで歌えるものは?」
「ううんと…おじ様分かるかな。『夏の歌姫』って曲なんだけど」
「それって…アイレボの花京院麗華の代表曲?」
「知っているのかライデ…もとい、おじ様!」
「そりゃあ、俺はPだしな」
「私もPなの!嬉しい!」
梨穂ちゃん、アイレボのPだったのか…。嬉しいな。アイレボが縁で嫁が出来た男を羨ましいと思っていた。ライブに同じくPである彼女を連れてくる若いやつも。
いつも一人でライブ行っていたからなぁ…。これから一緒にライブに行く未来もあるかもしれないな。いや、これは実現させたい。梨穂ちゃんの隣でアイドルたちに思いっきりコールしたいぞ。

「大丈夫だよ、弾ける」
「歌う!やったぁ!もちろんゲームサイズじゃなくてフルでお願いね!」
ピアノに着いて『夏の歌姫』の演奏を始めた。梨穂ちゃん、目がキラキラしているよ。

セイラシアにおいてリナチのリハビリのため数えきれないくらい弾いたから音楽スキルに練度も加わっている。
というか、これまたすげえ歌が上手いんだけど梨穂ちゃん。
セックスの時の喘ぎ声もたまらないけれど歌もいいな。俺のピアノより梨穂ちゃんの歌に立ち止まった人は聴き惚れている。はっきり言うが本家のリナチより上手い。
気持ちよさそうに歌うな。俺も楽しく演奏できるよ。というか歌詞カードも無くてフルで歌えるってすごくないか。

演奏を終えると盛大な拍手、俺はペコリと頭を下げて立ち去ろうとしたけれど、梨穂ちゃんは涙ぐんでいた。
「梨穂ちゃん?」
「ぐすっ、嬉しくて…。皆さん、聴いて下さりありがとうございました!」


余韻に浸っているのか、梨穂ちゃんはしばらく何も話さなかった。スカイウォークを出て車内でも静寂が続く。俺も気を利かせて話しかけなかった。東京方面の高速道路に入った。渋滞情報はないし、これならサービスエリアじゃなくて東京に着いてから夕食でも良さそうだ。
梨穂ちゃんは全然話さず車窓の風景を眺めていて、そのうち眠ってしまった。
何も話さなかった彼女だけど、ご機嫌斜めになっているわけじゃないことは伝わってきた。顔はずっと微笑だったし、何か面白いこと、楽しいことを考えていたんだろうと思う。いつか、それを俺に話してくれるといいな。

やがて都内に着き、俺は梨穂ちゃんに悪いと思ったけれど起こした。時刻はもう夜の八時になっていた。
「そういえば決めていなかった。病院か梨穂ちゃんの自宅、どちらに送っていけばいいんだっけか」
「自宅、というか寮だけど、あまり見られたくないな…。ボロアパートだから」
「そうなの?」
てっきり高級マンションに住んでいるものとばかり。
「高級ソープ嬢と言っても、みんな似たり寄ったりだよ。私は馬鹿な母と弟に搾取されていたからね。今日はおじ様とラブホに泊まる。明日、自宅に帰って病院にも行って財布とスマホを回収しないとね。黙って出てきたから心配もしているでしょうし」
「そうか。それじゃ夕食を済ませてからラブホに行こう」
「うん、今夜も可愛がってね」
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