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転落王太子…しかし?
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愚かな王太子の伝承がある。名はオルソン・ド・セントエベール
舞踏会において、婚約者である公爵令嬢カチュア・ベルグランドに対して一方的に婚約破棄を告げる。
その王太子オルソンの横には男爵令嬢のミランダ・サオシュヤントが立っていた。ミランダはオルソンと共にカチュアを罵る。王立学園において貴女に散々いじめられたと。
これは事実無根であり、ミランダのすべて自作自演であったが愚かなオルソンはまんまとその言葉に騙されてしまう。彼は何かと言えば『次期国王として自覚を持て』と言わんばかりに、諫言を申し立てるカチュアを疎んじていた。そこをつけ狙ったようにミランダはオルソンに近づいたのだ。己が次期王妃となるために。
カチュアはもはやつける薬はないと申し開きもせず城を立ち去る。
国王と王妃、つまりオルソンの父母は知らせを聞き激怒。
才媛の誉れ高いカチュアなら、あまり出来の良くない息子でもそれなりの王になれるやもしれぬと国王はカチュアの父に頼み込み、婚約が成った。それをオルソンは台無しにしてしまう。
幸いにしてこの国セントエベールは平和な国で、周辺諸国とも外交上関係は良好だ。
乱世では自分の息子では乗り切れないが平時ならと判断し、せめて才媛の妃と思っていたのに、すべてご破算となってしまう。
息子たるオルソンにカチュアに謝罪しろと告げるも、もはやオルソンは聞く耳持たずミランダを妻にしたいと言って譲らなかった。
その時に入ってきた知らせはカチュアのベルグランド公爵領が近隣の貴族領と共に独立を宣言、国交断絶も告げてきた。この時点でセントエベール王国は海を持たない国となってしまった。
あの愚か者が次期国王ではセントエベールに未来はないと判断されたのだ。王太子オルソンの短慮が乱世の発端となってしまうのだ。
結果、セントエベール王国は滅び、カチュアの王配であるアルベルトが王領を併呑してサントス王国を建国する。アルベルトは豪勇の騎士であり人を惹き付ける魅力があった。カチュアもそれに惹かれた女だ。アルベルトの知恵は人並みであるが、不足しているところは優秀な閣僚たちが支えた。その筆頭はカチュアであることは言うまでも無い。
元王太子である国王オルソンは逃走したが、ミランダは稀代の悪女として処刑場の露と消えた。カチュアをこれでもかと罵りながら。
◆ ◆ ◆
女王カチュアとアルベルトの治世はすでに二代目となり、アルベルトは天寿を全うした。
妻のカチュアは存命だが悩みが絶えない。カチュアの子たる二代目国王が病で急逝してしまう。その後の後継者問題がこじれたのだ。
そんなカチュアに唯一の癒しがあった。ある吟遊詩人の存在だ。
絵画に優れた初老の吟遊詩人がいる。カチュアはその吟遊詩人の描いた絵に心を奪われた。人物画や風景画も人の心を打つことこのうえなく一日中見ていても飽きない。
また、その吟遊詩人の歌声とその歌詞は聴く者たちを感動させているというではないか。
しかし遠い他国の者であり、その吟遊詩人の歌を聴くことは叶わない。
しばらくし、ついにサントス王国に内乱が生じて、国の実権は重臣に奪われてしまう。
サントス王国は二代で潰えてしまい、先代女王のカチュアは城からも追い出されて平民に落とされてしまう。
旧王国の女王の存在など新たな支配者には邪魔になるだけなのだ。命を奪われないだけ感謝しろということだ。新たな国はメイヤール王国と云う。次々と国の名前が変わり、領民はさぞ迷惑であろう。
失意のなか、貧しい暮らしをしていくカチュアだが、前からその歌声を聴きたいと思っていた吟遊詩人がメイヤール王国を訪れていると知った。
ぜひ、歌を聴きたいと思うも、もはやカチュアには彼が歌うその場に行くことさえ出来ない。病で余命いくばくもないのだ。だが予想外なことに、その吟遊詩人本人がカチュアの住むあばら家に訪れたのだ。
「あ、あなたが吟遊詩人のミンウ・ルーカス?」
「その通りにございます」
カチュアは戸惑う。老いてはいるが、その面影には見覚えがあった。
「分かりませんか?」
「…まさか」
「はい、元セントエベール王国の国王オルソンにございます」
「…!オルソン?」
吟遊詩人ミンウとなったオルソンはカチュアが横になっているベッド脇の椅子に座った。
「どうした。もう、がんばれないか」
「…………」
「ははは…お互い老境に達した今、過去の確執など、もはやどうでもいいだろう」
「…そうね」
「私の人生は恥多きものだったが…それが絵と歌に反映されたか、人並み以上に評価されることになった。世の中、何が幸いするか分からんな」
「…私を怨んでいるの?」
「逆恨みも甚だしいが一時期は怨んだものだ。しかし自業自得よ。今となってはミランダも愛しく思う。私に見せた優しさと微笑みがすべて芝居であったとしても、王太子と云う重圧を和らげてくれたのも事実ゆえな。つくづく男とは愚かなものよ」
そう微笑み、オルソンは竪琴を手に取った。
「聴いてくれるか?」
「ええ」
吟遊詩人ミンウは歌う。透き通るような歌声、そしてカチュアを想う歌。カチュアは目を閉じ、うっとりとして聴き入った。
歌い終えたあと、ミンウは持ってきた包みを解いて一枚の絵画を見せた。若き日のカチュアを描いた美人画だ。
「…素晴らしいわ。でもオルソン…。私はこんなに美人じゃなかったわよ」
苦笑するカチュアにオルソンは
「何を言うか。そなたはこの絵画の何倍も美しかったよ。無論、今もな」
「ありがとう…」
カチュアに睡魔が襲う。分かる。この眠りは二度と覚めないであろうと。
オルソンもカチュアが召されるであろうことが分かった。
だが、オルソンは悲しみを見せることなく優しく微笑み
「思えば婚約者であったと云うに、そなたと手を繋いだこともなかったな」
「そういえば…そうね…」
カチュアは布団から右手を出した。皺だらけの手を。その手をオルソンは握り
「良かったな、ようやく愛する夫に会えるぞ」
「ええ…やっと…」
「うんと甘えろよ」
「もちろんよ…」
吟遊詩人ミンウは歌う。召されるカチュアが安らかに眠れる優しき、心地よき歌を。
カチュアは召された。胸に手を添えて瞑目するオルソンであった。
オルソンはこの後も吟遊詩人として世界を放浪し、カチュアに遅れること14年後に天に召された。
◆ ◆ ◆
「「…………!?」」
ワケが分からなかった。
「「こ、これって…あの…舞踏会?」」
オルソンは傍らにミランダを抱き、婚約者カチュアの前に立っていた。オルソンには今の事態が分からないが、どうやらカチュアも同じらしい。何が何やら分からないと云う驚きに満ちた顔をし、周囲を見渡していた。
さすが両名とも老人になるまで一度は生きたというか、オルソンとカチュアは互いを見つめて今この場所に戻ったことを察した。どういう現象が起きてこうなったのかは分からないが、どうやら現実ということだけは分かる。
ミランダだけが違うらしい。いつまで経っても言葉を発しないオルソンに焦れたか小声で
「オルソン様、どうされたのです?カチュア様に婚約破棄を告げませんと」
「ミ、ミランダ…」
「…は、はい?」
若い、そして美しいかつての愛妻。セントエベール王国が滅ぶ時はヒステリックに夫を罵り、かつての愛しさなど吹き飛んだが今はまだ王妃にならんと思い、幾重にも猫をかぶっている状態。
それでも愛おしいと思う。騙されていると分かっているのに愛おしい。本当に男は愚かだと思う。
やがてオルソンはカチュアに決意込めたまなざしを見せる。
「カチュア!すまないが、このミランダを側室とすることを許してほしい!」
婚約破棄後の展開を知るのはカチュアも同じ。国が割れて乱世に突入し、勝ったのはいいがその後が悪い。夫アルベルトが生きているうちは良かったが、その後は後継者争いで内乱が生じてしまい国は二代しか続かなかった。
愛しき夫アルベルトと会い、もう一度愛を育みたいと云う気持ちもあるが、この婚約破棄が端を発し罪もない人々が戦争で死ぬことになる。それは避けたいカチュアはオルソンの意図を察し
「何かと思えば…。かようなことをいちいち婚約者たる私に訊ねる必要はありません。殿下には国のため多くの子をなしてもらわねばならないのですから」
「そっ、そうか!許してくれるか。ミランダ、奥向きのことはカチュアの言うことをよう聞くようにな!彼女は我が国一番の才媛だ!」
「えっ、ええ?」
話が全然違い、予想外の展開に驚くミランダだが、一国の王の側室もミランダからすれば大出世である。それを正妻となる婚約者が認めたとなれば、婚約破棄より良き展開では無いかと考え直す。王妃になれば奥向きの面倒さはうかがい知れる。それをカチュアがやってくれるのだから。
「カ、カチュア様、今後もよろしく」
「ええ、共に手を携え、殿下を支えていきましょう」
ニコリと微笑むカチュアにオルソンは歩み
「話は決まった!ではカチュア、踊ろうか!」
「はい、喜んで」
ミランダは引き、オルソンはカチュアと踊る。そして小声で
「よう、とっさに合わせてくれたな」
カチュアは踊りながら苦笑して答えた。
「まあ、一度はババアになるまで生き、宮廷の権謀術策もイヤになるほど経験していますからね。あのくらいは」
「とっさにしては我ながらいい案と思ったが、よう許してくれた。ありがとう」
「側室のこと?まあ、いいんじゃないの。あの子も権力欲の魔酒から解放されれば、それなりの淑女になるかもしれないし」
「ふふ、何がどうしてこうなったか分からないが夢のようだ。カチュアとミランダをもう一度愛することが出来るのだから」
「たまに歌を聴かせてよ、ミンウ」
「もちろんだ。しかし、そなた踊りがヘタだな」
「しっ、仕方ないでしょ!何年ぶりと思っているのよ。アンタだってヘタじゃない!」
「ははは、まあヘタ同士楽しく踊ろう。これからよろしくな、カチュア」
この後、名君として名を残すオルソン・ド・セントエベール。彼の歌と絵は王国の文化として花開き、彼の両隣にはカチュアとミランダと言う賢婦人がいた。オルソンと2人の妻との仲睦まじさは王国の発展にも繋がり、そして自慢にもなったと言う。
めでたしめでたし
舞踏会において、婚約者である公爵令嬢カチュア・ベルグランドに対して一方的に婚約破棄を告げる。
その王太子オルソンの横には男爵令嬢のミランダ・サオシュヤントが立っていた。ミランダはオルソンと共にカチュアを罵る。王立学園において貴女に散々いじめられたと。
これは事実無根であり、ミランダのすべて自作自演であったが愚かなオルソンはまんまとその言葉に騙されてしまう。彼は何かと言えば『次期国王として自覚を持て』と言わんばかりに、諫言を申し立てるカチュアを疎んじていた。そこをつけ狙ったようにミランダはオルソンに近づいたのだ。己が次期王妃となるために。
カチュアはもはやつける薬はないと申し開きもせず城を立ち去る。
国王と王妃、つまりオルソンの父母は知らせを聞き激怒。
才媛の誉れ高いカチュアなら、あまり出来の良くない息子でもそれなりの王になれるやもしれぬと国王はカチュアの父に頼み込み、婚約が成った。それをオルソンは台無しにしてしまう。
幸いにしてこの国セントエベールは平和な国で、周辺諸国とも外交上関係は良好だ。
乱世では自分の息子では乗り切れないが平時ならと判断し、せめて才媛の妃と思っていたのに、すべてご破算となってしまう。
息子たるオルソンにカチュアに謝罪しろと告げるも、もはやオルソンは聞く耳持たずミランダを妻にしたいと言って譲らなかった。
その時に入ってきた知らせはカチュアのベルグランド公爵領が近隣の貴族領と共に独立を宣言、国交断絶も告げてきた。この時点でセントエベール王国は海を持たない国となってしまった。
あの愚か者が次期国王ではセントエベールに未来はないと判断されたのだ。王太子オルソンの短慮が乱世の発端となってしまうのだ。
結果、セントエベール王国は滅び、カチュアの王配であるアルベルトが王領を併呑してサントス王国を建国する。アルベルトは豪勇の騎士であり人を惹き付ける魅力があった。カチュアもそれに惹かれた女だ。アルベルトの知恵は人並みであるが、不足しているところは優秀な閣僚たちが支えた。その筆頭はカチュアであることは言うまでも無い。
元王太子である国王オルソンは逃走したが、ミランダは稀代の悪女として処刑場の露と消えた。カチュアをこれでもかと罵りながら。
◆ ◆ ◆
女王カチュアとアルベルトの治世はすでに二代目となり、アルベルトは天寿を全うした。
妻のカチュアは存命だが悩みが絶えない。カチュアの子たる二代目国王が病で急逝してしまう。その後の後継者問題がこじれたのだ。
そんなカチュアに唯一の癒しがあった。ある吟遊詩人の存在だ。
絵画に優れた初老の吟遊詩人がいる。カチュアはその吟遊詩人の描いた絵に心を奪われた。人物画や風景画も人の心を打つことこのうえなく一日中見ていても飽きない。
また、その吟遊詩人の歌声とその歌詞は聴く者たちを感動させているというではないか。
しかし遠い他国の者であり、その吟遊詩人の歌を聴くことは叶わない。
しばらくし、ついにサントス王国に内乱が生じて、国の実権は重臣に奪われてしまう。
サントス王国は二代で潰えてしまい、先代女王のカチュアは城からも追い出されて平民に落とされてしまう。
旧王国の女王の存在など新たな支配者には邪魔になるだけなのだ。命を奪われないだけ感謝しろということだ。新たな国はメイヤール王国と云う。次々と国の名前が変わり、領民はさぞ迷惑であろう。
失意のなか、貧しい暮らしをしていくカチュアだが、前からその歌声を聴きたいと思っていた吟遊詩人がメイヤール王国を訪れていると知った。
ぜひ、歌を聴きたいと思うも、もはやカチュアには彼が歌うその場に行くことさえ出来ない。病で余命いくばくもないのだ。だが予想外なことに、その吟遊詩人本人がカチュアの住むあばら家に訪れたのだ。
「あ、あなたが吟遊詩人のミンウ・ルーカス?」
「その通りにございます」
カチュアは戸惑う。老いてはいるが、その面影には見覚えがあった。
「分かりませんか?」
「…まさか」
「はい、元セントエベール王国の国王オルソンにございます」
「…!オルソン?」
吟遊詩人ミンウとなったオルソンはカチュアが横になっているベッド脇の椅子に座った。
「どうした。もう、がんばれないか」
「…………」
「ははは…お互い老境に達した今、過去の確執など、もはやどうでもいいだろう」
「…そうね」
「私の人生は恥多きものだったが…それが絵と歌に反映されたか、人並み以上に評価されることになった。世の中、何が幸いするか分からんな」
「…私を怨んでいるの?」
「逆恨みも甚だしいが一時期は怨んだものだ。しかし自業自得よ。今となってはミランダも愛しく思う。私に見せた優しさと微笑みがすべて芝居であったとしても、王太子と云う重圧を和らげてくれたのも事実ゆえな。つくづく男とは愚かなものよ」
そう微笑み、オルソンは竪琴を手に取った。
「聴いてくれるか?」
「ええ」
吟遊詩人ミンウは歌う。透き通るような歌声、そしてカチュアを想う歌。カチュアは目を閉じ、うっとりとして聴き入った。
歌い終えたあと、ミンウは持ってきた包みを解いて一枚の絵画を見せた。若き日のカチュアを描いた美人画だ。
「…素晴らしいわ。でもオルソン…。私はこんなに美人じゃなかったわよ」
苦笑するカチュアにオルソンは
「何を言うか。そなたはこの絵画の何倍も美しかったよ。無論、今もな」
「ありがとう…」
カチュアに睡魔が襲う。分かる。この眠りは二度と覚めないであろうと。
オルソンもカチュアが召されるであろうことが分かった。
だが、オルソンは悲しみを見せることなく優しく微笑み
「思えば婚約者であったと云うに、そなたと手を繋いだこともなかったな」
「そういえば…そうね…」
カチュアは布団から右手を出した。皺だらけの手を。その手をオルソンは握り
「良かったな、ようやく愛する夫に会えるぞ」
「ええ…やっと…」
「うんと甘えろよ」
「もちろんよ…」
吟遊詩人ミンウは歌う。召されるカチュアが安らかに眠れる優しき、心地よき歌を。
カチュアは召された。胸に手を添えて瞑目するオルソンであった。
オルソンはこの後も吟遊詩人として世界を放浪し、カチュアに遅れること14年後に天に召された。
◆ ◆ ◆
「「…………!?」」
ワケが分からなかった。
「「こ、これって…あの…舞踏会?」」
オルソンは傍らにミランダを抱き、婚約者カチュアの前に立っていた。オルソンには今の事態が分からないが、どうやらカチュアも同じらしい。何が何やら分からないと云う驚きに満ちた顔をし、周囲を見渡していた。
さすが両名とも老人になるまで一度は生きたというか、オルソンとカチュアは互いを見つめて今この場所に戻ったことを察した。どういう現象が起きてこうなったのかは分からないが、どうやら現実ということだけは分かる。
ミランダだけが違うらしい。いつまで経っても言葉を発しないオルソンに焦れたか小声で
「オルソン様、どうされたのです?カチュア様に婚約破棄を告げませんと」
「ミ、ミランダ…」
「…は、はい?」
若い、そして美しいかつての愛妻。セントエベール王国が滅ぶ時はヒステリックに夫を罵り、かつての愛しさなど吹き飛んだが今はまだ王妃にならんと思い、幾重にも猫をかぶっている状態。
それでも愛おしいと思う。騙されていると分かっているのに愛おしい。本当に男は愚かだと思う。
やがてオルソンはカチュアに決意込めたまなざしを見せる。
「カチュア!すまないが、このミランダを側室とすることを許してほしい!」
婚約破棄後の展開を知るのはカチュアも同じ。国が割れて乱世に突入し、勝ったのはいいがその後が悪い。夫アルベルトが生きているうちは良かったが、その後は後継者争いで内乱が生じてしまい国は二代しか続かなかった。
愛しき夫アルベルトと会い、もう一度愛を育みたいと云う気持ちもあるが、この婚約破棄が端を発し罪もない人々が戦争で死ぬことになる。それは避けたいカチュアはオルソンの意図を察し
「何かと思えば…。かようなことをいちいち婚約者たる私に訊ねる必要はありません。殿下には国のため多くの子をなしてもらわねばならないのですから」
「そっ、そうか!許してくれるか。ミランダ、奥向きのことはカチュアの言うことをよう聞くようにな!彼女は我が国一番の才媛だ!」
「えっ、ええ?」
話が全然違い、予想外の展開に驚くミランダだが、一国の王の側室もミランダからすれば大出世である。それを正妻となる婚約者が認めたとなれば、婚約破棄より良き展開では無いかと考え直す。王妃になれば奥向きの面倒さはうかがい知れる。それをカチュアがやってくれるのだから。
「カ、カチュア様、今後もよろしく」
「ええ、共に手を携え、殿下を支えていきましょう」
ニコリと微笑むカチュアにオルソンは歩み
「話は決まった!ではカチュア、踊ろうか!」
「はい、喜んで」
ミランダは引き、オルソンはカチュアと踊る。そして小声で
「よう、とっさに合わせてくれたな」
カチュアは踊りながら苦笑して答えた。
「まあ、一度はババアになるまで生き、宮廷の権謀術策もイヤになるほど経験していますからね。あのくらいは」
「とっさにしては我ながらいい案と思ったが、よう許してくれた。ありがとう」
「側室のこと?まあ、いいんじゃないの。あの子も権力欲の魔酒から解放されれば、それなりの淑女になるかもしれないし」
「ふふ、何がどうしてこうなったか分からないが夢のようだ。カチュアとミランダをもう一度愛することが出来るのだから」
「たまに歌を聴かせてよ、ミンウ」
「もちろんだ。しかし、そなた踊りがヘタだな」
「しっ、仕方ないでしょ!何年ぶりと思っているのよ。アンタだってヘタじゃない!」
「ははは、まあヘタ同士楽しく踊ろう。これからよろしくな、カチュア」
この後、名君として名を残すオルソン・ド・セントエベール。彼の歌と絵は王国の文化として花開き、彼の両隣にはカチュアとミランダと言う賢婦人がいた。オルソンと2人の妻との仲睦まじさは王国の発展にも繋がり、そして自慢にもなったと言う。
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ლ(^o^ლ)
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YES!
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