Blaine Wolf

零零

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不穏

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翌朝、琥珀は重い瞼を開けると早速スマホを取り出した。
すると1件の通知が表示されていた。

「ごめん。
 しばらく会えなくなっちゃった。」

朝一に送られてきた春樹からのメールに、琥珀は愕然と肩を落とす。

琥珀「まじかぁ。ちょっと寂しい…。」

しかし、向こうが仕事の為仕方ない、と、琥珀は何とか寂しさを紛らわせようとゲームをやりだした。

学校に登校する時間は午後5時。
現在は午前7時なので、まだまだ時間はたっぷりあった。

琥珀「あー、ここ何とかなんねえのかなあ。」

ゲームに手こずって頭を抱えながら、スマホ画面に映る攻略サイトと睨めっこをする琥珀。

琥珀「よしよし、こうすりゃ後は余裕だろ。」

ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、難なくゲーム内のミッションをクリアしたが…。

琥珀「ん、電話が鳴ってる。」

突然琥珀のスマホから着信音が鳴り響き、画面には見知らぬ番号が映った。

琥珀「間違い電話か何かだろ…。」

そう言って、琥珀は鳴り続ける電話を取らずにゲームを続けた。

それが、自身の運命を酷く変えてしまうものとは知らずに…





琥珀「終わっったぁぁぁああ!!」

しばらく時間が経ち、攻略サイトに頼った琥珀はゲームクリアにまで辿り着いてしまったのだった。

琥珀「ふぅ…。てか今何時だろ……
   ……ん???」

時刻は午後5時10分。時間を忘れてゲームに没頭すれば案の定こうなるであろう。

琥珀「いやぁあああ!!!!
   遅刻じゃあぁああ!!」

琥珀は猛スピードで身支度をし始め、
大急ぎで外に出た。

10分程自転車を漕いでいると、ようやく学校の校門前までに辿り着くが…

琥珀「はぁ…。やっべ…吐きそう…。」

物凄いスピードで自転車を漕いで来た為、琥珀は既にヘトヘトになってしまっていた。

琥珀「ひとまず急いで自転車停めていこう…。」

他の生徒達の自転車が置かれる駐輪場では、空きがなかなか見つからない程にまで埋まってしまっていた。

実は丁度夕方の5時から全日制と定時制とで入れ替わる形となっていた。

琥珀「あ、またゴミが落ちてるし…。
   勘弁してくれよ全日共…。」

しかし最近では全日制のマナーの悪さが酷く目立っており、ゴミの散らかりも酷いものである。

琥珀「ゴミが邪魔で参るな…。教室行ったら捨てよう…。
   ったく、こんな事が無けりゃもっと急ぐ事も無かったのにぃ!!」

と、琥珀は自分で起こした問題を他のせいにしているが、この場合は勿論琥珀が問題なのである。

と、急いで教室に入った矢先、何かの衝撃と共に琥珀の視界は急に真っ暗になり、後ろに思い切り倒れてしまった。

「うわ!?黒井居たのかよ!?」

「ハクさん大丈夫!!?」

様々な声が飛び交う中、琥珀の意識は徐々にハッキリしていった。

琥珀「ん、んん…、目眩がぁ…」

そんな中、担任教師が教室に入ってくるや否や、驚いた顔をする。

担任「!黒井、大丈夫か?!」

琥珀「あ…先生…。大丈夫です。」

ぶつけた後頭部を擦りながら琥珀が起き上がると、クラスメイトの山野が琥珀に謝罪の言葉を述べてきた。

山野「ごめん黒井…。俺らさっきまで
   押し相撲してたんだけどさ。」

琥珀「…え、じゃあもしかしてさっきのって…。」

山野「押された俺の背中に激突…だな。」

琥珀「はぁ…。今後は気を付けてくれ…」

事が終わってもぎこちない雰囲気が続き、そのまま授業が始まった。

そしてその帰り、琥珀はヘトヘトになりながらも自転車のペダルを漕いでいた。

琥珀「…疲れた。」

ふと、春樹の顔が脳裏で横切る。

琥珀「…早く会いたいな。」

一人で帰る時に襲ってくる孤独感。
琥珀はまたもや寂しさが襲ってくるとは思わず、涙が出そうになった。

琥珀「…今日みたいに多少五月蝿い日が続けりゃ、
   こんな事には…。」





春樹「…疲れたあ…。琥珀から連絡来てねえかなぁ…
   ……ん?何だこれ。」

仕事から帰宅した春樹のスマホに、
またもや見知らぬ電話番号が映し出されていた。

春樹「……出てみるか。」

何を思ったのか、春樹はその電話番号に電話してみる事にした。

しばらくすると相手が出てきた。

春樹「…も、もしもし。」

「…………。」

しかし、相手から反応がない。

春樹「…あ、あの、もしもし?
   聞こえてますか?」

春樹は少々戸惑いながらも、相手に自身の声が届いているか聞いてみる。
…が、突然ブツブツとノイズが鳴りだした直後、相手が口を開き始めた。

「……えぇ、聞こえてますよ。」

声質から察するに、相手がすぐに男だと春樹は理解した。
男は最初から話を聞いているにも関わらず、ふざけた物言いで一言放つ。

春樹「…ふざけてるんですか?」

「いやいやとんでもない!
 まさか…貴方にその様なおふざけ・・・・等…」

春樹「……は?何言ってんだあんた。
   てか誰だ。」

「申し訳御座いませんが、名前は伏せさせて頂きます。」

春樹「おい、あんたから先に掛けてきたんだろ。
   名前ぐらい自分から名乗ったらどうなんだ?」

「ですから、それは出来ないと先程言った
   じゃありませんか。立花春樹・・・・さん?」

春樹「っ!!…何で俺の名前知ってんだよ。」

「それはそれはもう、貴方は有名人ですからねえ。
 …っと、長話はここまでにして、
 早速本題を言わせて頂きますが…。」

春樹「…悪いが、本題に入る前にこっちは警察呼ばせてもらう。」

「…おや、そうしたいなら構いませんが、連絡する前には…」

春樹「知るか。」

春樹はそのまま電話を切った。

春樹「…何なんだあいつ。さっさと警察に…」

春樹が110番に連絡をしようとしたその瞬間、

「みーつけた。」

春樹「がはっ!?…ぐっ…」

突如現れた黒服の男に腹部を殴られ、春樹は床に伏せる形で倒れてしまった。

そして黒服の男は何者かに報告の連絡をしだした。

「…もしもし、こっちは済んだぞ。
 …嗚呼、今からそっちに行く。」

微かに聞き取れたものの、徐々に視界は暗くなり始め…

春樹「……こ……はく…。」
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