覚醒勝王

桜苗

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始まりの始まり

落ち着くんだ。俺

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【視点:アーシア・ライディン】
「ふっ…はぁ、はぁ、グゥ!」
目の前にあった鏡のせいで胃の中が空になっていく。こんなに吐いたことが出来てたのは前世以来だ。そして、醜い僕もだ。口まわりの残りカスを拭いた。もう一度鏡を見てみると本当に僕なのかと思い込んでしまう。頭がイカれそうだ。若々しい手に若々しい顔立ち。僕の顔を見るのは何年ぶりなのか。ここが異世界…?という世界だ。それでも正直にいっても本当に慣れないものだ。僕は天井を見上げる。病室で見覚えのある天井だ。ここが異世界いや、異なる世界なのかも分からないほどの天井であった。
__あれは間違いだったのか……
僕はあの行動に後悔などしなかった。後悔しても遅いからしなかった。あれは僕がした行動だからだ。後悔などしても無駄だ。

僕はあの体育館の事を思い出した。あの時の僕は理解が出来なかった。どうして生まれ変わったのかを。すると、前世でよく耳にした一つの言葉が思い浮かぶ。輪廻転生。それは人が何度も生死を繰り返し、新しい生命に生まれ変わることだ。輪廻転生の輪廻は自転車のような車輪が回ること。遊園地の大きな回るやつが例えやすい。そして、転生は言葉通りの意味だ。生まれことだ。と小さい頃に先生に教われた。教わってた僕の友達はこういった。
「俺は宇宙人になりたい!」
「私は鳥になりたい!」
「僕は外国人!」
と生まれ変わることで一時期話題になるほどだった。しかし、輪廻転生などはないと小さい頃に父さんに吐きたいほど頭に叩き付けた。あの世は天国と地獄しかないのだと。つまりこの輪廻転生というのはただの理論、宗教の考え事だと僕の頭の中ではそういう感じに思った。だからあのアンバラの言葉が理解が出来なかったのだ。この輪廻転生という理論は存在したのだと。それに今のことだってそうだ。自分でした行動だから後悔などはしない。しかし、後悔するとなればあの少女のことだ。まずはあの名刀 にっかり青江を持っていること。理由は適当と言いそうだな。
__だが、あんな殺り方で…殺すなんて……
あの少女による殺人を思い出し、僕の背筋が凍った。震えるようで氷山に行ったのかと思えるように背筋が凍った。少女は僕を庇ってくれるのは本当にすごく嬉しかった。けどその後なのだ。彼女は瞬時に太った少年の胴体を斬りさらに追い討ちをかけるように首を斬ったのだ。血を出す腹から腸が飛び出てきた。そして、太った少年の血は僕の方にも飛び散ったのだ。正直怖かった。吐き気を催すような怖さ。特にあの少女が笑いながら殺すところが一番怖く感じた。見た限り殺人鬼の笑みだった。この殺人はまるで復讐ではなく単に快楽を求めては楽しむ、そんな殺人を行ってたのだ。スプラッタを見た気分だ。そして、あの笑い声も気持ち悪いほど思い出す。下手してたらこれまで見た怪奇映画よりも遥かに怖いものだ。鏡に青ざめる顔を叩いた。
__落ち着くんだ、俺。
これ以上はやめろと俺の頭の中が響く。あの少女は自分を守るために殺ったのだ。僕を守るはずがない。すると足元に何か踏んだような感覚があった。洗面の下を見るとそこには小さな蝋燭があった。
「なぜ、ここに?」
こっそりと取ってみると手に収めるほどの大きさだった。これを見て俺はある事を思い出した。輪廻転生と同時に教われた六道のことだ。
六道とは地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上の六つの道を総称したもの。その六道がこの蝋燭で例えられたのだ。これは本で何度かは見た事はあるが、こんな必要ない時にくるとは思わなかった。その時僕の中に疑問が浮かびだした。今いるところは地獄なのかと。本当に地獄ならば青い空と自然溢れる林は偽物と思わせる。でも、青い空と林は本物だった。手で触れても分かったのだ。温もりも感じたのだ。こんなの地獄のはずがない。もしもだとする。これ温もりが僕達の地獄場だとすればそれはもう絶望しかない。いや、当たってるかもしれない。それが僕らの宿命なのだから。僕は蝋燭を洗面所に置いた。今は今のこと考えるべきだと。

洗面所を出たがそこには彼女はいなかった。居なくていい。僕は大丈夫何だから。脇差にあるリボルバーを手にする。ここからは慎重だ。いつ敵が来るかも分からない。すると早速、右上から足音の音がした。僕は即座に反応し銃口を向けた。案の定誰もいなくそこには階段があった。僕は安堵がした。けど、安堵する暇はない。ここからが執念だ。僕はゆっくりと階段の端に寄り添い一段ずつ上がった。また、足音が聞こえた。僕はしゃがみ、上からの気配を伺った。上には人影が僕でも分かるように大きく映ってる。僕はいつでも打てるように構えた。相手が誰だろうと関係ない。ここは殺し合いの場なのだ。情けがかけてはいけないのだ。そうしなければ…死ぬのだ。すると、気づかれたか影が上に駆け上がったのだ。
「待て!」
僕は即座に追いかけた。影が駆け上がったのは三階。前世の僕なら二階で限界だったがこの若さのお陰で息を切らすことがないのだ。この体力は久しぶりだ。学生時代の新体操部で本能を発揮した以来かもしれん。階段の角に寄りかかり影の様子を伺おうとすると前から銃が見えたのだ。
__…嘘だろ!?
と僕は前から顔を出し前を見た。目の前にはいや、その奥には影がいたのだ。影の細い目は開いた。ん入ってた部屋に避難したのだ。僕は歯を食いしばった。
「くそぉ…」
僕は影を追いかけ部屋に入ったのだ。
部屋に入るとそこには本棚沢山あったのだ。どうやらここは図書室らしい。どの本も知ってるものばかりだ。僕は銃を構えたまま警戒しながら辺りを見渡した。たしかにここに人の気配がした。けど、何度みても人はいなかった。
__……妙だな。感じたのはこの部屋なんだが…
僕は前世からの元は勘が鋭いのだ。それは今になっても変わらなかった。この場所に来る前もその鋭さはより良く発揮した。噂では僕は《魔法使い》だの《占い師》だの言われた。たかが勘なのに…と思う憂鬱があった。他の場所か?と僕は図書室を後にした。その時だった。
「ゔあ゛ぁ!」
ガタン!
音と声が聞こえたから本棚を見ると目の前の本棚が倒れかけるのだ。僕は目を開きながらも即座に避けた。そして、避けた直後にその衝動で一発を撃ってしまった。しかし、影は避けた。意外とすばしっこい奴だ…。銃を改めて構え一歩歩き出した。また一歩、一歩とゆっくりと歩いた。やっぱり僕の勘は当たるんだと当然ながらと思った。すると、背後から人の気配を感じたのだ。僕は振り返るのが遅かった。その間もなく僕は押し倒された。そのせいで銃はクルクルと弾かれた。銃を持ってた手が抑えられた。このまま殺されると覚悟はした。と思いきや…
「ひぇ~。危ねぇ…」
聞き覚えのある女の声がした。目を開けるとそこには影ではなく彼女がいた。今一瞬、彼女が色男に見えていたのは僕だけだろうか。すると自然に僕は目を下に向けただ。何かに触られた気がしたのだ。見た先には彼女の手が僕の胸に触ってたのだ。すると、
「あ」
そして、今まで背いてた彼女の目が合った。
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