小鳥遊医局長の結婚

月胜 冬

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再出発

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今泉はアメリカへとやって来た。

エアポートで迎えに来た冬を見つけると、走り寄り、きつく抱き合い長い間口づけを交わした。

「ずっと ずっと会いたかった…。」

今泉は冬を息が出来ないほど強く抱きしめた。

「静さん…寂しい思いをさせて本当にゴメンね。」

家に帰るまでの道のりが、長く感じられた。車の運転をしながらも、信号待ちで何度もキスをした。

「こんなに痩せてしまって。」

青になったのにも気が付かず、後続車からクラクションを何度も鳴らされた。

「僕はもう大丈夫だから。」

家に戻ると、ベビーシッターが今ふたりともお昼寝中ですと言った。

荷物を玄関に置くと、簡単に今泉を紹介し、子供達の寝室へ行きふたりがすやすやと眠る姿を今泉は愛おしそうに眺めた。

では、これで...とシッターさんに挨拶をして、玄関から送り出してすぐにふたりは何度もキスを重ねた。


冬は恥ずかしそうに笑い、寝室へと今泉の手を引いた。

ドアを閉めると冬は激しく今泉の唇を貪りながら、コートを脱ぐと、今泉は冬のワンピースのジッパーを下げた。

冬は今泉のジャケットを脱がし、シャツのボタンをひとつずつ外した。キスの音と、クスクスと笑う声が部屋に響いた。今泉は下着姿の冬をベッドに押し倒すと、肌蹴たシャツを脱ぎズボンのベルトを外した。

ふたりともお互いの存在を確かめあいたかった。

「トーコさんこそ、少し痩せたね。」

今泉が耳元で囁きながら、冬のブラのホックを外した。

「静さんこそ…。」

痩せてほっそりとした顔を優しく撫でた。

…もう 一生僕は離れないよ。

…ええ。私もよ。

今泉は肩から胸、腰と冬の存在を確かめるように触れた。優しく唇にキスをした今泉の唇を激しく冬は求めた。

舌を絡め、何度も吸った。今泉の呼吸が荒くなるのを冬は感じた。舌の先から痺れるような快感が走った。今泉の手が冬の下腹部へと降りていき、既に興奮でぷっくりと膨れた蕾に静かに触れた。

…ああ。

冬はじわじわと、蜜が流れ出すのを感じた。

…クチュ。

今泉の指は入るべき場所に侵入すると、その温かさを確かめるように、暫く留まっていた。

「トーコさんの大好きな場所でしょう?」

キスの合間に今泉は囁いた。

…うん。

細い指はゆっくりと探るように浅い場所で長い間留まり、冬の反応を舐めるように見ていた。
そのもどかしさに冬の腰は、いやらしく動いた。

…じらさないで。

今泉は微笑みながら、冬の唇を離れ、頬、耳元と這った。

「あったかい。」

冬は熱い息を肌で感じながら、目が合うたびに微笑んだ。

胸のカーブまで舌がたどり着くと、先端を避けて蠢いた。今泉の鼻が硬くなった突起に触れた。
ビクンと反応した冬の体を愛おしそうに眺めていた。

「相変わらず、感じやすいんだね。」

胸の先端のスイッチを指の腹で小刻みに動かした。

「あぁ。」

声は上擦り、皮膚の上を小さな電流が走り続けた。冬の中の指は優しく撫でるように動きはじめ、冬の荒くなる呼吸に合わせて徐々にその強さを増した。

今泉の唇が冬の脚の間へと降りていき、蕾を左右に舌先で弄んだ。

「ふぅ。」

冬が大きなため息をつき、甘く強い刺激にビクビクと内腿が攣れた。

「私も…口でしたい。」

今泉は、微笑み冬の跨き、濡れた冬の唇の傍へと近づけた。それは、硬くはち切れんばかりにそそり立っていた。それの先には透明な液がキラキラと光っていた。

「静さん…の…気持ちが良いって言ってるわ。」

手で掴みゆっくりと上下させながら、先端を口に含んだ。お互いの甘い喘ぎ声が、より一層、興奮を高めた。

「あぁ。気持ちが…いい。」

冬の手の動きに合わせ今泉の腰が動いた。冬はゆっくりと体を起こし、今泉を仰向けに寝かせた。再び口に含み舌を絡めた。

「腰が…勝手に動いちゃう…。」

動かすたびに、今泉は小さな声で喘いだ。先端、ハート形の隙間を通り、裏側へと舌を這わせながら手は休みなく動いていた。

「静さん…可愛い。」

冬の蜜もトロトロと流れ出し、シーツを濡らした。

「駄目だよ…本当に…気持ちが良いんだ…ぅぅ…ぁぁ。」


口内の隙間で唾液が思わせぶりな音をさせ始めた。

「そんな音させたら…あっあっ。」

今泉の顔は快感で歪んだ。

「あぁ…もうトーコさんに、入れたい…入れたいよぅ。」

冬の髪を優しく掻きあげながら嘆息をもらし懇願した。

「おねだりをもっと聞いて…いたい。」

冬の手が動くたびに、今泉の下半身は魚のように跳ねた。

「お願い…挿れさせて。」

燃えるような熱い手で冬の顔を撫でた。

「ちゃんと…言って?」

冬はいやらしくうるんだ瞳で見つめた。

…小悪魔トーコさんだ。

「僕のおちんち●をトーコさんのおまん●に入れたい。」

今泉は躊躇いもなく卑猥な言葉を冬に囁いた。

「静さんからエッチな言葉を聞くと、とっても興奮しちゃう。」

髪を優しく梳いていた指先に時々力が入り、動かすたびに今泉の形の良い唇から吐息が漏れ始めた。

「うぅ…あぁ…気持ち…いいよぅ…あぁ…」

「お願い…もう挿れさせて。トーコのお●んこを…掻きまわしたい。」

今泉は冬を押し倒し、蜜が溢れるそこにズブズブと差し込んだ。

…あぁ。

「入れちゃった♪」

今泉もとても興奮していた。

「もう…動かしたい。すっごく動かしたいよ。」

今泉は深く挿したまま、冬に言った。

「トーコさんも僕にお願いして?」

冬は今泉の腰に足をしっかりと巻き付けていた。ため息をつきながら、今泉は囁いた。

「お願い…聞かせて。」

「いや…恥ずかしい。」

冬は深く繋がったまま今泉を押し倒し、騎乗位になると、今泉の腰を掴み、ゆっくりと上下に動いた。

「うっ…うっ…駄目…だ…よ。」

今泉の腰が動き出した。

「もう…止められない…よ。」

今泉は激しく冬を突き始めた。

「先に…いかせて?…後でいっぱい…愛してあげるから。」

今泉はがっしりと冬の腰を掴み、冬を何度も突いた。

「あぁ…静さん…トーコにいっぱい…出して。」

冬は荒い息の中で、今泉を蕩けそうな目で見つめながら言った。

「だ…め…ぁぁ。」

冬の中でピクピクと動くのが分かり、同時に今泉の下半身が痙攣した。冬がゆっくりと今泉から降りた。

「いっぱい…出ちゃった…ありがとう。」

冬の中から白い愛が太ももを伝い流れ出ていた。

「お口で綺麗にしてあげる。」

冬はいまだに硬く立ち上がっている今泉を口に含んだ。

「あ…ちょ…やめ…て…刺激が…ぁぁ。」

今泉の下半身が口の動きに合わせ、ビクビクと動いた。

「静さん…虐めるの…とっても楽しい♪」

冬は嬉しそうに丁寧に愛撫した。

「今度は僕が虐める番だよ。」

冬の顔を両手で挟み、ゆっくりとその口から肉棒を引き出した。

「どうやって虐めようかな♪」

冬を押し倒し、嬉しそうに今泉は囁いた。

冬をベッドに寝かせると、欲望を吐き出したばかりのその中へと押し入った。

「いやらしいトーコさんが沢山みたいんだ。時間はいっぱいあるから、たっぷり虐めてあげる。」

深く浅く動いた。長い間じらされて、冬は今泉の腰に絡めた足に力を入れて、深い所へと誘った。

「駄目だよ…もうイキたいんでしょう?」

今泉は意地悪な笑みを浮かべた。

「うん…深いのが欲しいの。」

冬は自分の強い鼓動を耳で感じた。

「まだ駄目。トーコ。もう少し我慢しなさい。」

快感が冬の身体を温かく包み始めたのにも関わらず、それ以上でもそれ以下でも無くそれはプラトーを保ち続けた。それはまるで快感の飽和状態を待っているかのようだった。

「イキたいの…に…。」

膣は不随意に今泉を締め付け始めた。

「うん…感じるよ。トーコが僕のおちん●んを締め付けているから。」

今泉に合わせ、脚と腰に力を入れて、深い所へと誘った。

「まだ深いのは駄目だっていったでしょ?我慢できない子にはあげません。」

今泉は冬から離れてしまった。

…ああ…静さんの意地悪。

「我慢出来ないなら指でしてあげる。」

3本の指がズブリと冬の中に押し込めた。

「ああ!」

第二関節まで押し込むと、指の腹で時間を掛けて愛撫を繰り返した。

「あぁ…嫌…指じゃ…いやぁ。」

愛液で潤った内部は、持続的な痙攣を起こし始めていた。腰がリズミカルに動き始め、今泉の肩に置かれた冬の指に力が入った。

「腰をこんなに動かして…トーコはとってもエッチだね。」

…言葉攻めは駄目だっ…てば。

「あん…あん…あっ…。」

「そんなに締め付けたら駄目だよ…。こんなにここを濡らして。」

今泉は、冬の乳首を強く指でつまんだ。
大きく膨らみ始めた花弁の中の蕾を親指の腹で小刻みに動かした。

「あっ…あーっ。いっちゃうぅ…。」


指の動きが早くなり、冬の身体はビクビクと痙攣をし始めた。

「イっていいよ…トーコ…僕の顔を見ながらイって。ほら…。」

…うっううううっ。

冬の身体は大きくのけぞると、くったりと力が抜けたにも関わらず、脚の筋肉が不随意に引き攣れていた。指を引き抜くと、冬は小さな声をあげた。

「トーコは、良い子だね。とっても可愛かったよ。」

…静さん…Sっ気あったのか。

「指じゃ…嫌だって…いったのに…。」

ぐったりと目を閉じたまま、冬はその場を動けなかった。

「良い子には、ご褒美にこれをあげようね♪」

おもむろに、深々と肉棒を冬の中に突き刺した。

「あぁ…イッたばかりだから...だめぇ。」

冬は力なく抵抗した。

「だから…良いんじゃない♪ほら深いところが良いんでしょう?」

深いところを何度も何度も突きあげた。

「ほら…先が当たってる。気持ちが良かったんだね。入り口が…降りてきてるよ。」

冬の身体はすぐに反応し始めて、繋がれた場所が熱くビクビク蠢き、その存在を主張し始めた。

「あぁ…コリコリとしたのが僕のおち●ちんの先に当たってるよ。」

愛液と精液に塗れた接続部からは、粘着質な音が聞こえ始めた。

「うぅ…そんなに突いたら…駄目ぇ。」

…はぁ…はぁ…はぁ。

冬は息も絶え絶えに訴えた。

「トーコの身体は…こんなに気持ちが良いって言ってるよ。」

…うぅ…うぅっ。

今泉は冬をうつ伏せにするとお尻を引き寄せ、硬さを保持したままのそれを押し込めた。

「じゃぁ場所を変えて、少し休憩。」

…静さんの馬鹿。

「こんな…全然…休憩…じゃ…ない。」

弾けるような音が部屋に響き続けた。今泉は冬に覆いかぶさると、後ろから冬の胸を乱暴に揉んだ。

「また…い…く…。」

今泉の熱く荒い息が冬の耳元にかかった。

「トーコ駄目だよ。僕と…一緒にいかなく…ちゃ。」

冬がベッドに胸をつけたまま、お尻を突き出している格好は、いやらしく、今泉を再び興奮させた。

「待て…ない。」

冬が身悶えシーツをしっかりと握った。

「あっ…トーコ…一緒に...いく…いく…よ。」

今泉は冬の腰をしっかりと掴み、密着させたまま小さな声をあげた。そして、ゆっくりとはなれると二人ともベッドへと倒れ込んだ。

「トーコさん。とっても愛してる。」

冬をそっと抱き寄せた。



+:-:+:-:+:-:+:-:🐈‍⬛+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+


今泉が家を出て行き半年が経った。冬の居場所についての手掛かりは無いままだった。

独りでは広すぎる部屋…だったが、小鳥遊は引っ越しをする気になれなかった。

「久し振りに食事にでも行きませんか?」

麻酔科医局長に食事へ誘われた。
今泉は藤田に何も話して居ないようだった。

余計な詮索はされないと思うが、言う必要も無いと思っていた。いつもの小料理屋で待ち合わせをした。

「この間、今泉先生からメールが来ましてね、アメリカで麻酔科専門医の資格をとるそうです。驚きました。」

藤田は、一瞬表情が硬くなった小鳥遊の顔をちらりと見た。

…きっと…冬と一緒にいるんだ。

「そうですか…。」

そして小鳥遊は何事も無かったかの様に、
まだ湯気が立つうな重を一口食べた。

「まぁ…詮索はしませんが、あなたにお伝えしようと思いまして。」

…藤田は気遣いから暫く声を掛けずに居たのか。

冬は留学中と言ってあるし、今泉はアメリカ…だとすれば、三人の関係に何かあったに違い無いと思われるのが普通だ。

「私達のように年齢を重ねて来ると、相談出来る人も限られてしまいますからね。僕で何かお役に立てることがありましたら、いつでも相談に乗ります。」

藤田は静かに言った。

小鳥遊は暫く考えて、重い口を開いた。

「折角そう言って頂いたので、お言葉に甘えてしまいますが…実は…。」

藤田はそれを聞くと 口に運ぼうとしていたお猪口を持つ手が止まった。

「おやすいご用です。後でメールします。院内メールではなくプライベートのメールでお願いします。それからこのメアドは、病院関係者は知りませんので…。」

藤田は、太く逞しい手で、小鳥遊のがっしりとした肩に手を乗せた。

「分かりました。お忙しいところありがとうございました。僕の友人にも医者は居ますが、流石に自分の事となると…。」

小鳥遊が恐縮すると、お気持ちは良くわかりますからと藤田は微笑んだ。

「今度ぜひうちに遊びに来てください。男ばかりでむさ苦しいですが。」

と藤田はまた笑った。

+:-:+:-:+:-:+:-:🐈‍⬛+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+

「婚姻届の事でしょう?ええ…知ってたわ。母からのメールに書いてあったから。」

ベッドの隣に潜り込んだ冬の体を今泉はすぐに抱き寄せた。

「小鳥遊先生は、とてもショックを受けていたよ。」

冬は今泉を確認するようにしっかりと腕を絡ませ、甘く優しいその懐かしい香りを胸いっぱいに吸い込んだ。

「私は…それを聞いてホッとしたの。変よね。結婚なんて所詮書類上のことなのよ。皮肉にもそれを証明しちゃった。」

冬は寂しそうに言った。

「だけど…トウコさんは、本当にそれで良かったの?」

…静さん痩せちゃったね。

「結婚にこだわっていたのは、あの人。私は結果的に良かったと思ってる。」

冬の微笑みは複雑な感情が入り混じっているように今泉には見えた。

…まだトウコさんは傷つき続けてるんだ。

冬の額に優しくキスをした。

「ごめんね…もうこの話はやめよう。」

今泉は荷物を片付ける暇も無く、薬物依存の施設に入った。それは本人が強く希望したことでもあった。

冬は好きな時に面会にいけるし、部屋に子供達と一緒に宿泊も出来た。車で1時間程のところにある施設は、緑が多く川や湖が近くにありハイキングや釣り、キャンプなども楽しめた。一日休みがあると必ず今泉の処へ足を運んだ。小さなキッチンで料理を作ることも出来た。

「シズは幸せものだね。奥さんも双子ちゃんもいつも来てくれて。」

今泉の担当セラピストが笑った。セラピスト、看護師、身の回りの世話をするスタッフなど5名ほどが今泉の担当として働いていた。

+:-:+:-:+:-:+:-:🐈‍⬛+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+

「フルタイムの講師の職を、君は断ったんだって?しかも准教授にって押して貰ってたらしいじゃないか。」

看護計画を作るためにPCとにらめっこしている冬にドクター・スミスは声を掛けた。

「ええ…何でそれを知ってるの?」

「あの教授は古くからの友達でね、僕が君を引き留めているんじゃないかって言われちゃったんだよ。」

大きなお腹を震わせて笑った。

「あら…それはごめんなさい。人に教えるよりは、こうやって働いている方が好きなの。」

「彼女は気が変わったらいつでも連絡をくれって言ってたよ。あの人もそろそろリタイアが近いから、後継者を探してるんだよ。」

とうこが生き生きと働いている姿を見ていてドクター・スミスは,教員にしてしまうのは勿体ないと思っていた。

「子育てや結婚で仕事を離れていたし、その分取り戻さなきゃって思ってる。あ…丁度良かった。このCTなんだけど、病巣ってここだけ?ここにもあるように思うんだけど。」

PC上の画像ってなんて見難いのかしら?よくこれで先生達判るわね…と独り言のように文句を言った。

「トーコ。悪いけど、一緒に体位変換手伝ってくれない?」

准看護師が冬に声を掛けた。

「わかったー今行く!」

「やれやれ…相変わらずだね。」

准看護師の後を追いかける冬の背中を見ながらドクタースミスは笑った。

+:-:+:-:+:-:+:🐈‍⬛-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+

「ねぇ。最近はどうして休みの日に家に居ないの?」

ネイサンと久しぶりに食堂でばったりとあった。

「夫が日本から来たの。知り合いの家に今居るんだけど、それで休みの度に子供を連れて出かけたりしているの。働く場所を見つけたりもしなくっちゃいけないし。」

薬物依存のリハビリ施設に入っているとはネイサンには言えなかった。

「旦那さんって何をしてる人?」

最後に残していた卵焼きを食べている冬を見ながらネイサンは、紙のバックに入った“弁当もどき”をゴソゴソと開けた。

「日本で麻酔科医…してた。その手続きで忙殺されているから。」

ネイサンはそれ以上何も聞かなかった。

「僕の可愛いハナもカイ元気かい?」

時計をちらりと見ながらネイサンはサンドウィッチを頬張った。

「あなたの…じゃ無いから!私の可愛い子供達なんだから。」

冬はムッとしていった。

「それより彼女とはうまく言ってるの?」

「うん。まぁまぁかな。最近やっと彼女の家から出て、マンションを借りたんだ。凄いでしょ?」

…凄いでしょって…最近まで根無し草生活してたのね。

冬は苦笑した。

「そうよ。人をあてにしないでしないで、自分で最初からそうやって暮らせば良いのよ。医者の癖にヒモのような生活して…お給料ちゃんと貰ってるんだから。」

…それが当たり前でしょう?馬鹿だ。

「家に誰か居ないと寂しいんだよね。」

「じゃぁお手伝いさんでも頼めば良いじゃない。紹介してあげよっか?」

彼女を家政婦扱いしているんだろうなという予測はすぐに出来た。

…そんなんじゃ幾らモテても彼女とっかえひっかえになっちゃうよな。無自覚のロクデナシって迷惑よね。

「トーコを見てたら、それも良いなと思えてきた。」

ネイサンは二つ目の野菜の何も入っていないハムとチーズのサンドウィッチに取り掛かった。

「そうよ…自分の母親ぐらいの年齢の人なら、間違いも起こらないだろうし、昼間の3時間ぐらい来てもらって掃除や洗濯、食事の準備をして貰えば良いんだから。」

「トーコは、よく一人で寂しくないね。」

ネイサンはじっと冬を見つめた。口の端にはパン屑がついていた。無邪気な少年というか、面倒を見なくちゃいけない気にさせるというか。

「ひとりじゃないわ。華ちゃんだって、夏さんだって私には居るし。」

冬は自分の口の端を指さした。

「子供と、大人じゃ違うでしょう?」

ネイサンは慌ててナプキンで口を拭いた。

「お互いに支えあったり、話をしたり…君には“大人の友達”が必要だよ。」

「あなたは何故支えてもらうことが前提なの?確かに友達には悩みを話したり相談したりするけれど、相談する時にはその悩みは解決してる…何故なら、自分で既に答えが出てるから。」


冬は家から持ってきた緑茶を飲み席を立った。

「トーコ。誰もが君のように強く無いんだよ。」

ネイサンは立ち去る冬の背中に向かって言うと、冬は突然くるりと向き直った。

「私だって強く無い。強く無くても戦わなきゃいけない時がある。それが今の私なの。」

+:-:+:-:+:-:+:🐈‍⬛-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+

小鳥遊は、都内にある大きなビルの前に居た。内科、外科、美容整形、小児科、肛門科などが入っており、ビルのテナント全てがクリニックだった。
―――時任メンタルクリニック

病院よりも一回り小さなエレベーターに乗ると懐かしいリゾールの香りが淡く漂い小鳥遊の鼻をくすぐった。受付で手続きを済ませ、待合室の椅子に座った。会社帰りのサラリーマンや、高校生、リクルートスーツの女性が待っていた。

暫く待たされてから診察室に呼ばれた。診察室…と言うよりは、誰かのうちの客間のようだった。座り心地の良さそうな大きなソファーが2台にテーブルセット。

「こんばんは。」

小鳥遊が挨拶すると、その男は立ちあがり握手を求めた。

「初めまして,小鳥遊先生。精神科医の時任です。麻酔科の藤田先生からのご紹介だそうで…。」

時任は小柄な男だった。ごま塩頭の髪はふさふさとしており、綺麗に整えられていた。白衣は着ておらず、ポロシャツにスラックスといういで立ちだった。

「どうぞおかけください。」

小鳥遊が座ったのを確認してからゆっくりと丸椅子に座った。

「脳外科だそうですね。」

時任は物腰が穏やかそうな男だった。

「はい。」

フカフカのソファーは座り心地が良すぎて、逆に居心地が悪かった。診察では無く、誰かの家に遊びに来たような錯覚を起こしてしまう。

「外科系のドクターには結構多いんですよ。自覚されていない方が殆どですが。」

時任は藤田から話を聞いているようだった。

「こちらに来られると言うことは、既にご自分でお調べになっていると思いますが、性嗜好障害の決定的な治療法は無いんです。ホルモン療法などはありますけれど,それで完治するわけではありません。」

「はい…。」

小鳥遊は静かに聞いていた。

「今日は色々お話を細かく伺うことになりますが、もし答えたく無かったら、答えて頂かなくても結構です。」

時任は物腰がとても穏やかだったが、ハキハキと話した。

「判りました。」

「メールでやり取りさせて頂きましたが、間違いないと思います。ただ鬱病などと被っている事もありますし、ご足労願ったわけです。あなたが今、一番お困りの事や悩んでいることは何ですか?生活に支障を来たしていることです。」

静かに射抜く様な目で小鳥遊を見つめた。

「僕の行動で…大切な人を傷つけて、失ってしまいました。」

苦々しいあの時のことが蘇ってきた。

「奥様…ですか?」

時任はずばりと聞いた。

「はい。」

「それまでは、夫婦関係は円満だったと言うことですか?」

「ええ…説明するのは難しいのですが…。」

小鳥遊は奇妙な三角関係についても詳しく説明をした。興味深そうに、静かに小鳥遊の話を聞きながら、メモを取っていた。

理解はされなくとも時任に吐露することが出来ただけでも、心が軽くなったような気がした。



































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