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第二章
第9話 待てができない
「光輝! 明日はコラボ配信だぞ!!」
学校終わりの放課後。
俺はノーキと肩を並べながら下校していた。人通りの少ないこの道は、ふたりで歩くのにもってこいの場所だった。
「うん、楽しみだね。累、折角だし今日はオレの家に泊まりに来なよ。オフコラボしよう」
キラキラした笑みを浮かべながら、ノーキが俺に提案してくる。繋いでいた手が一瞬離れて──そうかと思えば、今度は互いの指先がぎゅっと絡まるよう繋がれた。俺はあからさまに肩を震わせると、頬を染めて頷く。
「い……いいけど! その、えっと……配信前は変なことすんなよ?!」
「良かった。オルの両親も出張でいないし、丁度いいね。美味しいオムライス作るよ」
「いや楽しみだけどさ!! 配信前は……」
「楽しみだね、累」
有無を言わせないイケメンスマイルに押し負けた俺は、頬を真っ赤に染めたまま、キッと男を睨むのだった。
* * *
『もうちょいでノーオル配信始まる!』
『待機完了!』
『楽しみすぎるwwww』
『コラボ楽しみ!!』
『スタンバイOK!』
『始まってないのにニヤけるwww』
『早くみたい笑笑』
『ノーオルコラボ楽しみ!!!』
配信開始まで、残り十分。
俺は必死に腰を抑えると、待てができなかったイケメン大型犬の背をぽこぽこと叩く。
「光輝お前……ダメって言ったんじゃん!」
「ごめん、累が可愛くて我慢できなかった。体調悪い……?」
「悪くねぇよ光輝のばーか!」
俺はムスッとしたまま急いで服を着替え、配信の準備を始める。対するノーキは、心配そうな表情でじいっと俺を見つめていた。
こういう時だけ小型犬のような雰囲気を出すのだから、怒りたくとも怒れない。
「累、無理させちゃった……? ごめんね、辛かったらすぐ言って」
あまりにもノーキが不安そうに言うので──耐えきれなくなった俺は、頬を真っ赤に染めて言った。
「辛くねぇよ……その、別に俺も……気持ち良かったし」
「……!!!」
恥ずかしくなってそっぽを向く俺を他所に。ノーキは、たちまち嬉しそうに目を輝かせると、強く俺を抱きしめてきた。
「ちょっ……光輝!? 配信始まるってば!」
「ごめん累が可愛すぎて」
ドキドキと高鳴る心臓をなんとか抑え、ノーキの胸を押し返す。素直に、まっすぐ想いを伝えてくれる彼の言葉に、俺まで恥ずかしくなってしまう。
でも……今は配信に集中だ!!
俺は、ぱちんっと自分の頬を叩くと、ぶんぶん左右に首を振る。そしてふーっと思い切り息を吐き、配信者モードに切り替えていく。
「ほら、光輝もちゃんと切り替えるぞ! 今日は大事な発表もしなきゃだしな!!」
俺の言葉を耳にするや否や。ノーキは返事をする代わりに、にっと優しく微笑んだ。
ばちんっと、ハイタッチの音が鳴る。俺たちは顔を見合せて笑うと、元気よく配信を始めるのだった。
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