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第二章
第24話 トラウマ
「……で? あんまり聞きたくは無いが、さっきの『勃ちました』って何があったんだ」
リハーサルを終え、ゲストであるノーキとオルの登場待つ間。僅かな休憩時間を利用して、平塚は小声で質問した。
彼の視線の先には黒髪マッシュの男性、キルが立っている。男は「ああ」と思い出したように顔を上げると、スマホを机に置いて淡々と答えた。
「オルに初めて会いました」
「やっぱりかァ! ……って、まてよ。お前まさかオルさんに変なことしてないだろうな!? 相手は高校生だぞ?!」
平塚が動揺混じりに声を荒らげる。対するキルは、すーっと大きく息を吸い込むと、無表情で言ったのだった。
「オルがあまりに可愛すぎて、我慢できなくて抱きしめました。いい匂いがしたし想像してた数億倍は天使と思ったし、声もやっぱり好き。コロコロ変わる表情も可愛いし、配信の時は元気でお調子者だけど、リアルはちゃんと良い子だし、おれに怯えながらも謝ろうとする姿勢に軽く興奮しました。
何より身長も小さくて、可愛くて、抱きしめた時の感覚が今でも忘れられない。平塚さん、『オル』という存在にマイナス部分なんて存在してなかったんです。やっぱりおれオルのことが──」
「分かった! 分かったから! ストップ! 愛が重すぎるぞお前……え、こわ」
止まらなくなったオルへの熱を一気に吐き出すキルを見て、平塚は引き気味になりながらも、何とかその場を抑えた。
だが次の瞬間。まっすぐ立っていたキルの身体は、後ろから伸びてきた腕によって後方へと引き寄せられてしまう。
「ねぇキル、なんの話してるの?」
キルの腰をぎゅうっと抱きしめて、男は上目遣いで尋ねる。現れたのは白髪の美少年、乙坂 柳(おとさか やなぎ)こと、ナギだった。
キルを見つめる彼の瞳にはやはり、ドス黒い執着が含まれているようだ。
「触んな……お前には関係ないだろ」
さっきまでオルという存在を熱く語っていたというのに。キルはあからさまに眉をひそめると、ナギから離れんと動き出す。
そんな二人の様子を、平塚は首を傾げて見ていた。
「関係なくないよ。なんでキルは『オル』って奴にばかり執着してるの? なんで諦めないの? 僕ならキルを幸せにできるよ。なんならオルさんになりきってもいい」
天使に見せかけた悪魔か。ナギは小さく微笑むと、キルの耳元でそう囁いた。
体格は違えど、同じくらいの身長のせいか。ふたりの視線はピッタリと重なって離れない。
「……お前、ふざけたこと言うなよ」
「ふざけてないよ。僕も、キルを手に入れる為ならなんだってするって決めてるの」
その言葉が引き金となったのか。キルは突然のナギの胸ぐらに掴みかかると、周りの目も気にせずに叫んだ。
「お前……あの時もそうやって、おれの人間関係を壊しただろ! 孤立して孤独になったおれを見て、嘲笑ってたんだろ?
一度告白を振られたからって、やることがきめェんだよ……! 誰のせいでこうなったと思ってんだ?」
そう言うとキルは、耳についたピアスを不安そうに触り出す。彼の表情には焦りと動揺が含まれていて──周囲はそんな彼の姿に、驚きが隠せないようだった。
「酷いなぁ。キルには僕が居たじゃん、孤独じゃなかったよ」
動揺するキルとは裏腹に。ナギは驚くほど綺麗な笑顔でキルを見つめていた。
そんな彼をキルは静かに睨み付ける。
その時だった。スタジオの入口方面から、スタッフの声が聞こえてきたのは。
「オルさんとノーキさん入りまーす!」
瞬間。さっきまで不安定だったキルが、分かりやすいくらいに表情を明るくさせた。そんなキルを見て、今度はナギが不機嫌そうに眉をひそめる。
「よろしくお願いします!!!!」
「お願いします」
オルとノーキの声が──冷えていたスタジオ内の空気を、一気に明るく変えてくれる。
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