【完結】陽キャのフリした陰キャ配信者がコラボきっかけで付き合う話

柴原狂

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第二章

第27話 飽きられてる?


 走早にトイレへ向かう。
 幸いこの通りに人はいないので、もう陽キャのフリをする必要もなさそうだ。俺は少し気を抜いた状態で、廊下を歩き進めていた。

 さあ、後はこの角を曲がれば……!

『わっかる!』

『ほんと共感しかないわ~!』

 そう思っていたのもつかの間。曲がり角の向こうから、女性の声がして足を止める。どうやらトイレ前の喫煙室で、話をしているようだった。

 やばい、ビビりすぎて思わず隠れてしまった。普通に堂々と行けばいいものの……俺としたことが、出鼻をくじかれた気分だ。
 すっかりタイミングを見失ってしまった俺は、いまさら動き出していいのか分からず、ジッとその場に留まってしまう。

 すると意図せずして……その人たちの声が耳に入ってきてしまった。

『いちいち何でも報告してくる彼氏ってだるくなーい?』

『分かるわ~冷めるよね』

『頼ってくるのもめんどくさいのよね。男なら頼られてなんぼじゃない?』

『うちの彼氏もそういうとこある!』

『いちいち私に選択権与えてこようとするけど、それが逆にめんどくさいのよね』

『そうそう、意思が無いのよ!』

『めんどいし別れちゃおうかな』

 なんかの愚痴大会が始まっている!
 思わぬところで女性たちの本音を聞いてしまった俺は、ぎゅっと胸が苦しくなっていくのを感じた。そして思ったのだ。


 ひょっとして今、俺がノーキにしてることも同じじゃないのか……?


 思い返してみると、俺はなんでもかんでもノーキに任せ切りだし、頼りきりだ。行動する時もノーキが居なきゃ何も出来ない。

 もしかしたら、こんな俺を、ノーキも本当は面倒に思ってるんじゃ──

 マイナス思考が止まらない。肩にグッと力が入っていくのが分かった。俺は拳を握りしめ、歯を食いしばる。

 もしかして俺……自分の事ばかりに集中して、ノーキのこと、何も考えてあげられなかったんじゃないか?

 ──飽きられてたら、どうしよう。

 ノーキが居ない生活なんて、もう俺には考えられない。あいつが居なくなってしまったら、俺はまた独りになってしまう。 
 ぐるぐると、嫌な考えばかりが頭に浮かぶ。俺は汗ばむ身体をぶるりと震わせ、ごくりと生唾を呑み込む。その時だった。

 俺の肩を、誰かがそっと掴んだのは。

 ビクリと身体を跳ねさせて、俺は素早く振り返る。するとどうだろう。
 そこにはなんと、タバコの匂いをまとった男性──


 キルさんが立っていた。




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