【完結】陽キャのフリした陰キャ配信者がコラボきっかけで付き合う話

第三章

第5話 友達

 それから俺は、キルさんと共に映画を見ることになった。
 いま話題の超人気アクション映画だ。この映画には俺もちょうど興味があり、｢ノーキを誘って見に行こうかな｣と思っていたものだった。

 席はスクリーンから遠めと、人が少ない場所を選ぶ。薄暗い館内と、そこから流れる迫力のある音声と映像が、俺の心をワクワクさせた。するとどうだろう。

 突然、キルさんに手を握られる。
 驚きのあまりビクリと大袈裟に肩を跳ねさせると、目前の人物は笑いながら言った。

｢ごめん累、びっくりした？｣

｢び、びっくりするも何も……あっ、あの！ 俺、こ……恋人がいるので｣

 館内が薄暗いおかげで真っ赤になった俺の顔はバレていないだろう。

 それにしてもよく言ったぞ！ ノーキの名前は出して無いとはいえ、｢恋人がいる｣とはっきり言えるだなんて──昔の俺には考えられないことだ。

  しかし、キッパリ断った俺を他所に。キルさんは不思議そうに首を傾げると、俺の手を強く握って言った。

｢これくらい友達同士でもやるよ。もしかして累、おれのこと友達だと思ってない？｣

｢え！ いや……そんなことは｣

｢そう。じゃあ、いーね｣

 そう言うとキルさんは、前を向いて映画に集中してしまう。対する俺は、混乱状態から抜け出せないでいた。

 え……そうなのか？ 手を繋ぐのは友達同士でも有り得るのか！？ だとしたら俺、めっちゃ自意識過剰じゃないか……？

 それがただただ恥ずかしくて、キルさんにも申し訳なくて──俺はあまり映画の内容に集中出来なかった。