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第三章
第26話 客人
それから──無事に高校を卒業した俺たちは、配信活動を続けながらも大学生になった。
言わずもがな、俺の身長は相変わらず伸びていない。だが数々の試練を乗り越えた俺は、周りとコミュニケーションを図れるぐらいには成長していた。
「いやーでも、まさかこんな日が来るとはな!」
太陽の光が俺たちを照らす。俺は歩きながら元気いっぱいの笑顔でノーキを見た。
今日はとても、めでたい日なのだ。
俺は大きく息を吸うと、すぐ横で歩いている男に向かって、改めて言った。
「光輝、プロ入りおめでとう!」
そう。俺の大切な恋人──宇野 光輝ことノーキは、大学生になったこの度『プロゲーマー』になることが決定したのだ!!
俺の言葉を受け取った光輝は、思わず見惚れてしまうようなイケメンスマイルを浮かべると、優しい声で返事をする。
「ありがとう累。たくさん活躍するから見ててね」
「おう!」
多くの人とすれ違う中、二人は幸せオーラ全開で歩みを進める。
彼らの歩幅は、ズレることなくピッタリ揃っていた。
* * *
「……平塚さん。まだですか」
何故か緊張した様子で部屋をうろちょろと歩き回るキル。そんな彼の見慣れた姿に、平塚は大きなため息を吐いた。
「そう慌てんなキル。もう少しで着くそうだ。それにしても……あの事件から色々あったが、彼もよくOKしてくれたな」
平塚はボソボソと呟きながらお菓子の袋を開け出す。ちなみに、大量に広がるそれらのお菓子は、全てキルが選んだものだ。
「まあ、こうなりますよ。うちのチームが一番強いし、給料もいいし」
そう言いながら、キルは鏡で髪型を確認しだす。普段の無気力な彼からは考えられない行動に、平塚は思わず笑みをこぼす。
そう。これからやってくる『客人』がキルにとってどれほど重要か──それは、彼をずっと見てきた平塚が一番良く知っている。
* * *
こうみえて実は、今回の結果に一番驚いていたのは平塚だった。
ダメ元である人物に『ある提案』をしてみたら、なんと即OKの返事が来たのだ。流石の平塚でも声を上げてしまっただろう。
平塚は、彼らとキルの間で起きた『事件』を後から耳にした後、数時間に及ぶキルへの説教をした末──彼らへ心からの謝罪をしに行ったのだった。
あの時の平塚の丁寧な対応のおかげか。はたまた他の考えがあったのか。今回『思わぬ人物』がここへやってくることになった。
平塚は、綺麗に並べ終えたお菓子を見て「よしっ」と安心した表情を浮かべている。すると──
ぽんっと、誰かが平塚の肩を叩く。いや、こんな事をするのはひとりしかいない。
平塚が振り返るのを待つことなく、その男は一息で言った。
「平塚さん。やばいです、おれの心臓がドキドキ言ってます。あれ以来しっかり諦めたはずなのにやっぱり緊張する。ダメ元で提案しただけなのに、まさか『彼も』顔を見せてくれるとは思わなかったから、どんな顔すればいいか分からないです。いやあれから何回か顔は合わせてるけど……とりあえず握手は許されますよね? 許されますよね? 写真も撮っていいですか? 大丈夫でs──」
「すとーっぷ。キル、ダメだよ。僕以外の人を考える暇があるならグチャグチャにする」
いつもの様に平塚が止めるより先に、背後から伸びてきた腕によってキルの口はが塞がれてしまう。
その人物はドス黒い執着を含んだまま、綺麗な笑みを浮かべると、キルを見つめてにこりと笑った。
「ナギ……別に緊張ぐらいしてもいいだろ」
そう言いながらも、キルは心做しか頬を染めてそっぽを向く。昔の彼なら、暴言を吐いて無理やりナギの手を離しただろうに──なぜ抵抗しないのだろう?
妙に落ち着いた様子で話をする二人を見て、平塚は首を傾げる。
この僅かな時間で、彼らの間にどんな出来事が起きたのだろうか。まあ少なくとも、その時間は良い物だったに違いない。
平塚はそんなことを考えながら、ふたりの様子を笑顔で見守っていた。
その時だった──ガチャリ、と扉が開く音がしたのは。
「来たか」
「時間ピッタリだね~」
キルとナギが笑みを零す。どうやら、いよいよ彼らが来たらしい。
キルはごくり、と生唾を飲み込むと音のする方向へ注目を向けた。
「「失礼します」」
そこには──堂々とした声色で話す、二人の男が現れる。
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