浮気したあなたたちのことなんて、もう知りません。私は幸せになりますけどね。

月橋りら

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二章

第20話 お茶会

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◇◇◇
「あらこんにちは」

ミカに提案されて、私が皇宮内を散歩していたときーー出会ったのは、皇妃殿下だった。
コーネリアにいるとき、彼女の噂は聞いたことがある。

現皇妃ミランダは、子爵家から皇家へと出された後妻であり、皇帝との子供はいない。
そして、皇太子ーーアレクシス様との関係は、良好ではなく、むしろ嫌悪している、と。

「…ミランダ皇妃殿下にご挨拶申し上げます」
「こんにちは、セシリア嬢」

その薄っぺらい笑みは、何を隠しているのだろう。
ただひとつ分かることは、この人は危険であるということーー。

「今度、お茶会をしますの。帝国の「主賓」であるあなたがいらっしゃれば、皆さん喜ぶと思うのよ。ぜひきてくださいな」
「……ありがとうございます。ぜひ参加させていただきますわ」

私はまだ、コーネリアの貴族。そして、コーネリアが帝国アスレリカここの配下にある限り、皇妃殿下からのお誘いは断れないーー。それに、探るには今のうちに誘いに応じておいた方が得策。十分、警戒が必要だ。

「こんにちは、セシリア嬢。みなさんもうお揃いですよ」
「皇妃殿下。本日はお招きいただき光栄でございます」
「よしてちょうだい。さ、座って」

まず紅茶が出される。皇妃殿下が口をつけたので、私たちもそれに倣う。
大丈夫、毒は入っていない。皇妃ともあろう方が、簡単にその座を追われるようなことはしたくないはずだからーー。

「そういえばセシリア嬢。アレクシスと大変仲がよろしいようね」
「いえ…とても。殿下にはエスコート役をしていただいただけですわ」

そう、私は今、目をつけられているのだ。ーー敵と仲良くする、得体の知れない女として。

「いつコーネリアに帰られますの?」

誰かが聞く。そうか、私は「主賓」だから帰らなければおかしいーー。

「…まだ未定ですの。ですが、何もない限りはもうすぐだと思いますわ」
「そうですのね」

この人たちに、アレクシスを狙っている人はいないだろうーー皇妃の取り巻きたちだ。だが、このままでは、関係を怪しまれるだろう。殿下とたまに「視察」に行っていることは内緒にした方がよさそうね。

「今日は大変楽しかったですわ」
「ええ、ありがとうございました」

ふぅ、やっと終わったーー。

私は部屋に戻る。

「どうでした?皇妃殿下は」
「リカ…。そうね、良い方だったわ」

そうーー今のところは。

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