15 / 15
第二章
第15話 自分の居場所はここだけ
しおりを挟む
フィーダはベットに乗っかり、バーブノウンの顔に自分の顔をぐっと近づけた。
バーブノウンは少しだけ顔を引いたが、表情はそのままだった。
「あれは、わたしが調子に乗ってやってしまったことなの! バーブを試そうとか、そんなことは全く考えていないの!」
「あはは……。全く、フィーダは優しいなあ……。でも、本当は試したかったんでしょ? 隠さなくても大丈夫だよ。僕はどうせ役立たずだし……」
「―――っ!」
「ぶっ!?」
嘆くバーブノウンに、フィーダは肩を震わせながらだんだんと怒りを募らせ、遂に限界だったフィーダはバーブノウンにビンタを食らわせた。
バーブノウンは体ごと吹っ飛び、ベットから落ちて近くにある壁に打ち付けられた。
「フィ、フィーダ!?」
「いちいちうるさい! そんな弱音を吐くバーブはバーブじゃない!」
「―――!」
「バーブは悪くないの! 全部はわたしが悪いの!」
「フィ、フィーダ……?」
フィーダは思い切った行動に出た。
バーブノウンを正面から抱きしめたのだ。
バーブノウンは大きく目を見開く。
「いつも、バーブは全部自分が悪いって抱え込む癖がある。わたしはもう分かってる。わたしはもうそれを見るのはつらい……。だから、わたしからお願いがある」
「な、なに?」
フィーダはバーブノウンを強く抱きしめた。
そして、1つ間を空けて口を開いた。
「わたしにも相談して」
「―――!」
「今日はわたしのせいでバーブを追い込んでしまったけど……それ以外の理由でバーブが居なくなっちゃうって考えたら……わたし、わたし……!」
「フィーダ……」
フィーダの声は震え始め、そして目からは涙が流れていた。
最初はすすり泣きだったフィーダが、次第に嗚咽へと変わっていった。
「えぐっ、うぐっ……! ごめんねバーブ……本当にごめんね……! わたしのせいで、こんなにバーブを追い込むことをしてしまって……うう……」
「―――」
自分の肩で泣き続けるフィーダを見つめるバーブノウン。
バーブノウンは優しくフィーダを包み込むように抱きしめた。
「ごめんねフィーダ……。心配、かけちゃって……。うん、今度からはフィーダにもちゃんと言うようにするよ。フィーダが泣かないように……」
「バーブ……!」
バーブノウンは一筋の涙を流していた。
フィーダは最高の仲間であり、運命の相手だと改めて感じたのだった。
(なんだろう……。体や心が温かいような、熱いような……)
バーブノウンは自分の体と心に違和感を感じながらも、大したことでもないと考え、フィーダが泣き止むまでこのままでいた。
この『大したことでもない』が、後に大きく変わっていくことを、この時はまだバーブノウンは気づかなかった。
◇◇◇
「―――」
「―――もう大丈夫?」
「うん……大丈夫」
やっと心を落ち着かせることが出来たフィーダ。
ゆっくりとバーブノウンから体を離した。
「―――本当にごめんねバーブ。わたしが調子に乗ってしまって……」
「いや、僕もフィーダが泣いちゃうくらいまで心配かけちゃって……」
「じゃあ、お互い様ってことで……」
「そうだね、あはは……」
2人は笑い合った。
先程までは鉛のように重い空気が流れていたのに、いつの間にか和やかな空気に変わっていた。
「ねえバーブ、ちょっと目瞑ってもらっても良い?」
「えっ、うん」
バーブノウンはフィーダに言われた通り、目を瞑った。
するとフィーダは、こめかみの髪の毛を耳にかけた。
そして、頬を赤くすると、バーブノウンの顔に近づけた。
「―――」
「―――!?」
唇に妙な感触が伝わり、バーブノウンは驚いて目を開けると、眼の前には目を瞑るフィーダの顔があった。
そしてもう1つ……自分の唇が、フィーダの唇に触れていたのだ。
驚きが大きすぎて、バーブノウンは身動きすら取れない。
しばらくすると、フィーダはバーブノウンから顔を離した。
頬を赤くしながら上目遣いで見てくるフィーダを見たバーブノウンは、思わずフィーダが可愛いと思ってしまうのであった。
これは子供を可愛がる意味での感情ではない。
バーブノウンの心臓が大きく、早く鼓動する。
「フィ、フィーダ……。な、何でこんなこと……」
「―――わたしがそうしたかっただけ。嫌だった……?」
「―――い、嫌ってわけじゃ……。ただ、びっくりしすぎて……」
(まさか……? いや、フィーダがそんなことを思うような人物ではないはず。だから、多分嬉しい感情を大胆に見せてきたのかもしれない。うん、絶対そうだ)
フィーダは銀竜《シルバードラゴン》、文化は自分たち人間とは全く異なる。
バーブノウンはそう思い込ませ、心を落ち着かせた。
「すう……はあ……すう……はあ……」
深呼吸を2回ほどすると、バーブノウンは何とか平常心を保つことができた……はずだった。
「―――」
「―――!?」
もう一度フィーダの顔を見ると、視線を逸したまま頬を赤くしていた。
その表情が、バーブノウンにとってはいつもと違うフィーダに見えたのだ。
こういうものには疎いバーブノウンでさえ、まるで恋する少女のように見えてしまった。
バーブノウンは首を横に振り、勘違いしないようにする。
絶対に自分に対してそんな感情を持つ人なんていない……そう考えているからだ。
「フィ、フィーダ。その……これからはちゃんとフィーダにも相談するよ。もう、自分で抱え込まないようにするから。だから、これからもよろしくお願いします!」
「―――! うん、これからもよろしくね、バーブ」
お互いに笑い合う2人。
その様子は、まるで誰もが羨ましがる仲の良いカップルのようだった。
バーブノウンは少しだけ顔を引いたが、表情はそのままだった。
「あれは、わたしが調子に乗ってやってしまったことなの! バーブを試そうとか、そんなことは全く考えていないの!」
「あはは……。全く、フィーダは優しいなあ……。でも、本当は試したかったんでしょ? 隠さなくても大丈夫だよ。僕はどうせ役立たずだし……」
「―――っ!」
「ぶっ!?」
嘆くバーブノウンに、フィーダは肩を震わせながらだんだんと怒りを募らせ、遂に限界だったフィーダはバーブノウンにビンタを食らわせた。
バーブノウンは体ごと吹っ飛び、ベットから落ちて近くにある壁に打ち付けられた。
「フィ、フィーダ!?」
「いちいちうるさい! そんな弱音を吐くバーブはバーブじゃない!」
「―――!」
「バーブは悪くないの! 全部はわたしが悪いの!」
「フィ、フィーダ……?」
フィーダは思い切った行動に出た。
バーブノウンを正面から抱きしめたのだ。
バーブノウンは大きく目を見開く。
「いつも、バーブは全部自分が悪いって抱え込む癖がある。わたしはもう分かってる。わたしはもうそれを見るのはつらい……。だから、わたしからお願いがある」
「な、なに?」
フィーダはバーブノウンを強く抱きしめた。
そして、1つ間を空けて口を開いた。
「わたしにも相談して」
「―――!」
「今日はわたしのせいでバーブを追い込んでしまったけど……それ以外の理由でバーブが居なくなっちゃうって考えたら……わたし、わたし……!」
「フィーダ……」
フィーダの声は震え始め、そして目からは涙が流れていた。
最初はすすり泣きだったフィーダが、次第に嗚咽へと変わっていった。
「えぐっ、うぐっ……! ごめんねバーブ……本当にごめんね……! わたしのせいで、こんなにバーブを追い込むことをしてしまって……うう……」
「―――」
自分の肩で泣き続けるフィーダを見つめるバーブノウン。
バーブノウンは優しくフィーダを包み込むように抱きしめた。
「ごめんねフィーダ……。心配、かけちゃって……。うん、今度からはフィーダにもちゃんと言うようにするよ。フィーダが泣かないように……」
「バーブ……!」
バーブノウンは一筋の涙を流していた。
フィーダは最高の仲間であり、運命の相手だと改めて感じたのだった。
(なんだろう……。体や心が温かいような、熱いような……)
バーブノウンは自分の体と心に違和感を感じながらも、大したことでもないと考え、フィーダが泣き止むまでこのままでいた。
この『大したことでもない』が、後に大きく変わっていくことを、この時はまだバーブノウンは気づかなかった。
◇◇◇
「―――」
「―――もう大丈夫?」
「うん……大丈夫」
やっと心を落ち着かせることが出来たフィーダ。
ゆっくりとバーブノウンから体を離した。
「―――本当にごめんねバーブ。わたしが調子に乗ってしまって……」
「いや、僕もフィーダが泣いちゃうくらいまで心配かけちゃって……」
「じゃあ、お互い様ってことで……」
「そうだね、あはは……」
2人は笑い合った。
先程までは鉛のように重い空気が流れていたのに、いつの間にか和やかな空気に変わっていた。
「ねえバーブ、ちょっと目瞑ってもらっても良い?」
「えっ、うん」
バーブノウンはフィーダに言われた通り、目を瞑った。
するとフィーダは、こめかみの髪の毛を耳にかけた。
そして、頬を赤くすると、バーブノウンの顔に近づけた。
「―――」
「―――!?」
唇に妙な感触が伝わり、バーブノウンは驚いて目を開けると、眼の前には目を瞑るフィーダの顔があった。
そしてもう1つ……自分の唇が、フィーダの唇に触れていたのだ。
驚きが大きすぎて、バーブノウンは身動きすら取れない。
しばらくすると、フィーダはバーブノウンから顔を離した。
頬を赤くしながら上目遣いで見てくるフィーダを見たバーブノウンは、思わずフィーダが可愛いと思ってしまうのであった。
これは子供を可愛がる意味での感情ではない。
バーブノウンの心臓が大きく、早く鼓動する。
「フィ、フィーダ……。な、何でこんなこと……」
「―――わたしがそうしたかっただけ。嫌だった……?」
「―――い、嫌ってわけじゃ……。ただ、びっくりしすぎて……」
(まさか……? いや、フィーダがそんなことを思うような人物ではないはず。だから、多分嬉しい感情を大胆に見せてきたのかもしれない。うん、絶対そうだ)
フィーダは銀竜《シルバードラゴン》、文化は自分たち人間とは全く異なる。
バーブノウンはそう思い込ませ、心を落ち着かせた。
「すう……はあ……すう……はあ……」
深呼吸を2回ほどすると、バーブノウンは何とか平常心を保つことができた……はずだった。
「―――」
「―――!?」
もう一度フィーダの顔を見ると、視線を逸したまま頬を赤くしていた。
その表情が、バーブノウンにとってはいつもと違うフィーダに見えたのだ。
こういうものには疎いバーブノウンでさえ、まるで恋する少女のように見えてしまった。
バーブノウンは首を横に振り、勘違いしないようにする。
絶対に自分に対してそんな感情を持つ人なんていない……そう考えているからだ。
「フィ、フィーダ。その……これからはちゃんとフィーダにも相談するよ。もう、自分で抱え込まないようにするから。だから、これからもよろしくお願いします!」
「―――! うん、これからもよろしくね、バーブ」
お互いに笑い合う2人。
その様子は、まるで誰もが羨ましがる仲の良いカップルのようだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
この作品の感想を投稿する
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる