追放者の冒険

うまチャン

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第二章

第15話 自分の居場所はここだけ

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 フィーダはベットに乗っかり、バーブノウンの顔に自分の顔をぐっと近づけた。
バーブノウンは少しだけ顔を引いたが、表情はそのままだった。

「あれは、わたしが調子に乗ってやってしまったことなの! バーブを試そうとか、そんなことは全く考えていないの!」

「あはは……。全く、フィーダは優しいなあ……。でも、本当は試したかったんでしょ?  隠さなくても大丈夫だよ。僕はどうせ役立たずだし……」

「―――っ!」

「ぶっ!?」

 嘆くバーブノウンに、フィーダは肩を震わせながらだんだんと怒りを募らせ、遂に限界だったフィーダはバーブノウンにビンタを食らわせた。
バーブノウンは体ごと吹っ飛び、ベットから落ちて近くにある壁に打ち付けられた。

「フィ、フィーダ!?」

「いちいちうるさい! そんな弱音を吐くバーブはバーブじゃない!」

「―――!」

「バーブは悪くないの! 全部はわたしが悪いの!」

「フィ、フィーダ……?」

 フィーダは思い切った行動に出た。
バーブノウンを正面から抱きしめたのだ。
バーブノウンは大きく目を見開く。

「いつも、バーブは全部自分が悪いって抱え込む癖がある。わたしはもう分かってる。わたしはもうそれを見るのはつらい……。だから、わたしからお願いがある」

「な、なに?」

 フィーダはバーブノウンを強く抱きしめた。
そして、1つ間を空けて口を開いた。

「わたしにも相談して」

「―――!」

「今日はわたしのせいでバーブを追い込んでしまったけど……それ以外の理由でバーブが居なくなっちゃうって考えたら……わたし、わたし……!」

「フィーダ……」

 フィーダの声は震え始め、そして目からは涙が流れていた。
最初はすすり泣きだったフィーダが、次第に嗚咽へと変わっていった。

「えぐっ、うぐっ……! ごめんねバーブ……本当にごめんね……! わたしのせいで、こんなにバーブを追い込むことをしてしまって……うう……」

「―――」

 自分の肩で泣き続けるフィーダを見つめるバーブノウン。
バーブノウンは優しくフィーダを包み込むように抱きしめた。

「ごめんねフィーダ……。心配、かけちゃって……。うん、今度からはフィーダにもちゃんと言うようにするよ。フィーダが泣かないように……」

「バーブ……!」

 バーブノウンは一筋の涙を流していた。
フィーダは最高の仲間であり、運命の相手だと改めて感じたのだった。

(なんだろう……。体や心が温かいような、熱いような……)

 バーブノウンは自分の体と心に違和感を感じながらも、大したことでもないと考え、フィーダが泣き止むまでこのままでいた。
この『大したことでもない』が、後に大きく変わっていくことを、この時はまだバーブノウンは気づかなかった。









◇◇◇









「―――」

「―――もう大丈夫?」

「うん……大丈夫」

 やっと心を落ち着かせることが出来たフィーダ。
ゆっくりとバーブノウンから体を離した。

「―――本当にごめんねバーブ。わたしが調子に乗ってしまって……」

「いや、僕もフィーダが泣いちゃうくらいまで心配かけちゃって……」

「じゃあ、お互い様ってことで……」

「そうだね、あはは……」

 2人は笑い合った。
先程までは鉛のように重い空気が流れていたのに、いつの間にか和やかな空気に変わっていた。

「ねえバーブ、ちょっと目瞑ってもらっても良い?」

「えっ、うん」

 バーブノウンはフィーダに言われた通り、目を瞑った。
するとフィーダは、こめかみの髪の毛を耳にかけた。
そして、頬を赤くすると、バーブノウンの顔に近づけた。

「―――」

「―――!?」

 唇に妙な感触が伝わり、バーブノウンは驚いて目を開けると、眼の前には目を瞑るフィーダの顔があった。
そしてもう1つ……自分の唇が、フィーダの唇に触れていたのだ。
驚きが大きすぎて、バーブノウンは身動きすら取れない。
しばらくすると、フィーダはバーブノウンから顔を離した。
 頬を赤くしながら上目遣いで見てくるフィーダを見たバーブノウンは、思わずフィーダが可愛いと思ってしまうのであった。
これは子供を可愛がる意味での感情ではない。
バーブノウンの心臓が大きく、早く鼓動する。

「フィ、フィーダ……。な、何でこんなこと……」

「―――わたしがそうしたかっただけ。嫌だった……?」

「―――い、嫌ってわけじゃ……。ただ、びっくりしすぎて……」

(まさか……? いや、フィーダがそんなことを思うような人物ではないはず。だから、多分嬉しい感情を大胆に見せてきたのかもしれない。うん、絶対そうだ)

 フィーダは銀竜《シルバードラゴン》、文化は自分たち人間とは全く異なる。
バーブノウンはそう思い込ませ、心を落ち着かせた。

「すう……はあ……すう……はあ……」

 深呼吸を2回ほどすると、バーブノウンは何とか平常心を保つことができた……はずだった。

「―――」

「―――!?」

 もう一度フィーダの顔を見ると、視線を逸したまま頬を赤くしていた。
その表情が、バーブノウンにとってはいつもと違うフィーダに見えたのだ。
こういうものには疎いバーブノウンでさえ、まるで恋する少女のように見えてしまった。
 バーブノウンは首を横に振り、勘違いしないようにする。
絶対に自分に対してそんな感情を持つ人なんていない……そう考えているからだ。

「フィ、フィーダ。その……これからはちゃんとフィーダにも相談するよ。もう、自分で抱え込まないようにするから。だから、これからもよろしくお願いします!」

「―――! うん、これからもよろしくね、バーブ」

 お互いに笑い合う2人。
その様子は、まるで誰もが羨ましがる仲の良いカップルのようだった。
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