上司に連れられていったオカマバー。唯一の可愛い子がよりにもよって性欲が強い

追及偏

リスクが増えました

　ツキの言葉通り、もう体が興奮し始めてしまっている。
　性器に血液が集まろうとしていて、意識を緩めたりしたらすぐにでも大きくなってしまうだろう。

　そんなことは、自分が一番よくわかっている。

「っ……あっ、あと、何秒ですか？」
「んー？　えーっと……残り３０秒です♪」

　半分までは耐えきったと考えるべきか。
　あと半分も残っていると思うべきか。

　実際の時間はどう足掻いても変わらないが、体感時間は精神状態でいくらでも変えられる。
　体を拘束されている以上、心の持ち様でなんとかするしかないのだけれど――

「時間も無くなってきちゃったから、私もそろそろ本気出そうかなー♡　ちゅっ♡　れろれろ♡　ちゅるっ♡　ぇろっれろっ♡」

　ツキが思考する余裕なんて与えてくれるはずもなく、
　すぐさま頭の中はツキの舌が這いずる音でミチミチになってしまった。

　このままでは本当にまずい。
　なんとかしないと、成す術もなく負けてしまう。

「あっ、あっ……つっ、ツキさんっ！」
「なんですか？」
「っ、耳を舐めるのと吐息の吹きかけを止めてくれたら……」
「止めたら……？」
「っ……っ……」
「ふーん、アキラさんってそういう小狡い時間稼ぎするんですねー……♡　それなら、もう終わらせちゃおうかなー♡」
「ちっ、ちがっ……っ、つっ、ツキさんのことを、その……積極的に愛します……」
「積極的にとは？」
「たっ、ただツキさんにされるがままになることを許容するだけじゃなくて……ツキさんの望むままに、動きます」
「……その言葉、もう取り消せないですよ♡」

　ぬちゃっとした水音を立てながら、ツキの舌が耳から離れていった。

　なんとか一命は取り留めたようだ。
　負けた時のリスクは高まってしまったが、そもそも同性とのセックスを許容する時点で高すぎる。
　負けが確定しなかったことを考えれば仕方ないと考えるしかない。

　そして、これでツキは攻め手を二つも失った。
　残り時間はもう２０秒を切っているだろうから、ここから逆転勝利できる目は十分に――

「ところでアキラさん♡」
「っ！？」

　突然、ツキが耳元へ唇を寄せて囁いた。
　部屋には他に誰もいないのに、
　まるでひそひそ話をするかのように、
　殆ど音にならないウィスパーボイスで。

「っ、と、吐息が当たってます！　ルール違反ですよ！」
「耳元で喋ったら少しくらいは当たっちゃいますよ。吹きかけてはいないですから、ルール違反じゃありません♡」

　確かに、ツキは吐息を吹きかけているわけじゃない。

　しかし、耳元で囁かれるだけでも体中に震えが伝播するような心地だ。
　耳が濡れているせいか、頭の中でツキの声が反響しているような感覚に陥ってしまう。

　耳への攻めを禁止というルールにしておけばよかったと、早くも後悔が胸中に渦巻いている。

「アキラさん、一つ忘れていることがあると思いませんか？」