31 / 84
一日目:いつものふたりで、いつもどおりに
それは人を愛する行為
しおりを挟む
「でもさ、交際する気がなくてもデートくらいはしても良かったんじゃないか? 向こうだって告白するのに勇気を振り絞ったのかもしれないし。デートしてみたらショウの気持ちが変わるってこともありえるだろ? 仮に相手が、しょ、処女だったとしても、ベッドまで行かなければ――」
「いや、セックスしないんだったらデートする意味ないだろ」
「……は!?」
その様は冗談を言っているわけでもなく、頭がおかしくなったわけでもなく、当然の常識を語るようだった。
ボクのただひとりの親友がこれほどまでに性欲に振り切れていたなんて……知りたくなかった。
「い、意味ないってどういうことだよ!」
「言葉通りの意味だけど。俺がナンパするのはセックスしたいからで、他意はないって。だから向こうにセックスする気がなかったらすぐ手を引くし、ナンパしたいから彼女は作らない。タクは驚いてるけど、ナンパする人間なんて頭の中まっピンクのそういうやつしかいないんじゃないか?」
「いや、確かに男が女性に声をかけるのは下心ありきなのかもしれないけど……それにしたってストレートすぎないか?」
「そうかー?」
男同士の話だとしても、そこまで下衆な感情を開けっ広げにするものだろうか。
デート=セックスだなんて、ボクには色々と刺激が強すぎる。
「いやだって……っ、セックスだぞ? 女性に声をかけるのはセックスしたいからですとかっ……そんな、そんなっ……あまりに軽薄すぎないか!?」
「逆に!」
抄がビシっとボクに向けてポテトを突き付けてきた。
しかし冷えて萎れたポテトはふにゃっと折れてしまっている。
「逆にだぜ。俺はタクがセックスを特別視しすぎていると思うけどな。一応言っとくけど、子作りじゃないんだぜ? 避妊はちゃんとしてるって」
「それは大前提だろ!」
避妊せずに不特定多数とのセックスを繰り返していたら、それはもうサイコパスの領域だろう。
「だったら猶更だ。確かにセックスは互いに裸になるし、公衆の面前で出来ることではないし、何より急所を擦り合わせる行為だ。だけどそれだけなんだよ。明かりを消せば羞恥は軽減できる。公衆の面前でできないことはセックスだけじゃない。急所を擦り合うのだって、リスクを負って何かを得ると考えればそこまで特別じゃないだろ?」
「それは……そうかもだけど……」
抄の価値観は、正直ボクには理解し難い。
言っている事がわからない訳ではないし、抄の論に対してなるほどと頷ける部分もある。
それでも、それをすんなりと受け入れる事ができないのは何故なのだろうか。
セックスを気軽に申し込む抄も。
それを承諾する女性がいるということも。
ボクの中で常識として落とし込むことができない。
「でもやっぱり、仲を深めた男女ならまだしも、初対面の相手とそんな……」
「そこも逆なんだよ、タク。初対面だからこそ、セックスなんだ」
「どういうことだ?」
「いいか、セックスは繊細なコミュニケーションだ。さっきはああ言ったけど、裸になるのが恥ずかしくないわけじゃない。慣れてる俺だって、人前で衣服を脱ぎ捨てれば少しは身構えちまうんだよ」
しょっちゅうボクの家で薄着になっている抄が言っても説得力はなかった。
しかし抄は冗談を言っているわけでもなさそうなので、真面目な顔をして相槌をしておくことにした。
「セックスは握手や会話と同じカテゴリーなんだ。ただ、それらよりも難しく、代わりに深く相手を理解することができる。セックスはそういう行為なんだ。だから、初対面こそセックスなんだ」
抄の態度は至って真面目だ。
セックスはコミュニケーションの一つであると、熱を入れて力説している。
ボクの気持ちもそれに動かされ始めている。
もしかしたら抄の言葉の方が正しいのかもしれないと。
ただ一つだけ言わせてもらえるのならば、ここはファミレスであり時間は昼間だ。
何度も何度もセックスと口にするスーツ美少女は人目を集めており、先ほどからチラチラと見られていることに、抄は気づいているのだろうか。
「おい、聞いてるか? タク」
「っ!」
抄は身を乗り出してボクに抗議の意思を示してきた。
こっちを見て、こっちの話に耳を傾けろと。
そんなことより、顔が近いよ……ショウ……。
「いや、セックスしないんだったらデートする意味ないだろ」
「……は!?」
その様は冗談を言っているわけでもなく、頭がおかしくなったわけでもなく、当然の常識を語るようだった。
ボクのただひとりの親友がこれほどまでに性欲に振り切れていたなんて……知りたくなかった。
「い、意味ないってどういうことだよ!」
「言葉通りの意味だけど。俺がナンパするのはセックスしたいからで、他意はないって。だから向こうにセックスする気がなかったらすぐ手を引くし、ナンパしたいから彼女は作らない。タクは驚いてるけど、ナンパする人間なんて頭の中まっピンクのそういうやつしかいないんじゃないか?」
「いや、確かに男が女性に声をかけるのは下心ありきなのかもしれないけど……それにしたってストレートすぎないか?」
「そうかー?」
男同士の話だとしても、そこまで下衆な感情を開けっ広げにするものだろうか。
デート=セックスだなんて、ボクには色々と刺激が強すぎる。
「いやだって……っ、セックスだぞ? 女性に声をかけるのはセックスしたいからですとかっ……そんな、そんなっ……あまりに軽薄すぎないか!?」
「逆に!」
抄がビシっとボクに向けてポテトを突き付けてきた。
しかし冷えて萎れたポテトはふにゃっと折れてしまっている。
「逆にだぜ。俺はタクがセックスを特別視しすぎていると思うけどな。一応言っとくけど、子作りじゃないんだぜ? 避妊はちゃんとしてるって」
「それは大前提だろ!」
避妊せずに不特定多数とのセックスを繰り返していたら、それはもうサイコパスの領域だろう。
「だったら猶更だ。確かにセックスは互いに裸になるし、公衆の面前で出来ることではないし、何より急所を擦り合わせる行為だ。だけどそれだけなんだよ。明かりを消せば羞恥は軽減できる。公衆の面前でできないことはセックスだけじゃない。急所を擦り合うのだって、リスクを負って何かを得ると考えればそこまで特別じゃないだろ?」
「それは……そうかもだけど……」
抄の価値観は、正直ボクには理解し難い。
言っている事がわからない訳ではないし、抄の論に対してなるほどと頷ける部分もある。
それでも、それをすんなりと受け入れる事ができないのは何故なのだろうか。
セックスを気軽に申し込む抄も。
それを承諾する女性がいるということも。
ボクの中で常識として落とし込むことができない。
「でもやっぱり、仲を深めた男女ならまだしも、初対面の相手とそんな……」
「そこも逆なんだよ、タク。初対面だからこそ、セックスなんだ」
「どういうことだ?」
「いいか、セックスは繊細なコミュニケーションだ。さっきはああ言ったけど、裸になるのが恥ずかしくないわけじゃない。慣れてる俺だって、人前で衣服を脱ぎ捨てれば少しは身構えちまうんだよ」
しょっちゅうボクの家で薄着になっている抄が言っても説得力はなかった。
しかし抄は冗談を言っているわけでもなさそうなので、真面目な顔をして相槌をしておくことにした。
「セックスは握手や会話と同じカテゴリーなんだ。ただ、それらよりも難しく、代わりに深く相手を理解することができる。セックスはそういう行為なんだ。だから、初対面こそセックスなんだ」
抄の態度は至って真面目だ。
セックスはコミュニケーションの一つであると、熱を入れて力説している。
ボクの気持ちもそれに動かされ始めている。
もしかしたら抄の言葉の方が正しいのかもしれないと。
ただ一つだけ言わせてもらえるのならば、ここはファミレスであり時間は昼間だ。
何度も何度もセックスと口にするスーツ美少女は人目を集めており、先ほどからチラチラと見られていることに、抄は気づいているのだろうか。
「おい、聞いてるか? タク」
「っ!」
抄は身を乗り出してボクに抗議の意思を示してきた。
こっちを見て、こっちの話に耳を傾けろと。
そんなことより、顔が近いよ……ショウ……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる