死の間際、あなたは親友ですか?

papporopueeee

文字の大きさ
52 / 84
二日目:生まれて生きて、その先に

願った先に居る者は

しおりを挟む
「なっ……なっ……!」

 突然の事態に頭がついてこない。
 何を言えばいいのかもわからず、舌が上手く動かない。
 ただ足だけが、本能で後退りを始めている。

「これまでも抵抗を示す人間はいた。だが、ここまでの無様を晒すのは貴様が初めてだ」
「な、なに言って……だって……期限は……」
「下手に猶予を与えるというのも考えものだな。今後の教訓とすることにしよう」

 死ねない理由を問いもしない。
 遺言を待つこともない。
 もう、いつボクの首が落ちてもおかしくはない。
 瞬きをしたその瞬間には、血を吹き出す自分の胴体を見ているのかもしれない。

 興奮が冷め、熱が冷め、どっと汗が吹き出す。
 寒くて、冷たくて、怖くて。

 まだ、ボクは死にたくない。

「やっ、約束……! 三日後って約束したじゃないか!!」
「確かに猶予は与えた。遺言を、死ねない理由を探させるための期間をくれてやった。潔く、死への覚悟を固めさせるために与えたものだったが、貴様には意味をなさなかったようだ。明日まで待とうと、貴様はその死に様を醜く汚すだけだ。したがって、ここで殺してやる」

 死ね神の言い分はふざけている。
 死ぬ覚悟を固めるためだなんて、そんなの死ぬ理由探しだ。

 しかしルールを作ったのは死ね神で、力を持っているのも死ね神だ。
 弱者であるボクが何を言おうと、死ね神の決定を覆すことはできない。

 必要なのは時間だ。
 何でもいい。
 時間を稼がなければならない。
 一秒も、コンマの時間さえ惜しい。
 早くしないと、本当にボクは死んでしまう。

「っ、ね、願いは? 願いを叶えてくれるんだろ? ぼ、ボクはまだ願いを口にしないのに、なのに殺すっていうのか?」
「死後の願い……良かろう。貴様には意味がなく、気休めにもならぬだろうがな」
「い、意味がないなんてことはないだろ。て、転生とかなら、内容によってはこのまま生きているよりもずっと有意義なはずだし……」
「……転生か。貴様の友人と同じ願いを抱くのならば叶えよう」

 転生。
 抄が美少女に生まれ変わったように、死ね神はこちらの要望を叶えた上で転生させる。

 ただしこの時代への転生は許さないと、死ね神は大学で言っていた。
 それでも、例えば百年後の日本ならばまだマシだ。
 例え容姿がこのままで、特殊な能力なんてなくても。
 赤子の頃からこの記憶を引き継げるのならば、それは人生において大きなアドバンテージとなる。

 ……記憶。
 突然、その言葉が引っかかった。

「……っ」

 気付いてはいけないと本能が警告している。

 思い起こされる記憶は、ボクが忘れようとしていたことで。
 それに触れてはならないとわかっているのに。
 ボクの口は掠れて震えた声を吐き出していた。

「……も、もしかしてだけど、転生って、ショウにしたのと――」
「無論、同じだ」

 死ね神は抄を殺した。
 その遺灰から少女を作り出し、成長させた。
 そして、死ね神はその少女に、高伊勢抄の記憶を植えつけた。

 同じだ。
 あの日のことを思い返して、ボクが思うことは、あの日と何も変わらない。

「それは……それは、ボクじゃない……。お前の言う転生で新しく生まれるのはボクじゃない……! ボクの記憶を持っただけの別人だ! そんなの、意味がないじゃないか……!」

 それはずっと目を背けていたこと。
 死ね神の転生によって生まれるのは、伊那西拓ではあってもボクではない。

 転生したボクがボクじゃないなら。
 それなら今の抄は――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

処理中です...