弟は勇者様で、兄はみんなから愛されている聖女様

papporopueeee

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ゴブリン殲滅編

治癒の祈祷は密着していないと十二分に効果が発揮されない

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「~~っ……さ、さあ、ボクの背に腕を回してください? つ、強く抱いてもらわないと、ち、治癒の祈りも効きが悪いですから」

 本当はそんなことは無い。
 治癒の祈りにそんな制限が無いことをボクは知っている。

 でも教典にはそう書いてあるから。
 これはあくまで教典に従っているだけだから。
 信徒にとってはボクの言葉はただの指示でしかないから。

 おねだりだなんて思われてるわけがないし、恥ずかしがる理由がどこにも無い。

「はっ、はいっ! し、失礼いたしますっ!」
「~~っ、も、もっと強くです。きょ、教典にもそう書かれていますから、これは大事な、そういう儀式ですから」

 物の考え方は十人十色で、そのバリエーションは豊富な方が何かと良い。
 でも教典の解釈は統一されていなければならない。
 そこに差があると宗派が生まれ、軋轢が生じてしまうから。

 教典に聖女を強く抱擁すべしとあれば、信徒は強く抱かなければならない。
 個々の筋力によって強さに差があるのは当然だけれども、少なくとも当人が強く抱いたと認識していないと、色々と良くない。

 だからボクは懇願する。
 強く抱いて欲しいと。

「こ、これでいいでしょうか!」
「あっ……はぅっ……~~――っ」

 密着する身体と身体。
 服越しとはいえ、あまりにも近すぎる距離。

 濃い雄の匂いが鼻の奥まで広がって、
 興奮して上昇した体温が互いを温めて、
 彼の鼓動がこちらの心臓にまで響いている。

 全身を覆われるほどの体格差に、ボクの脳が勝手に降参準備を始めているのがわかる。

「あっ……あぁっ……」
「せ、聖女様……聖女様?」
「――はっ……お、お祈りを始めますね!」

 飛びそうになってしまっていた意識をギリギリのところで手繰り寄せ、ボクは強く抱擁し合ったままに祈祷を始めた。
 そもそもの目的は戦の傷と疲労を癒すことなのに、ハグだけで手一杯なんて聖女失格だ。

「ふぅっ……――赦しを貴方に――私は全ての咎を受ける者、私は全ての罰を請ける者――恐るる勿れ、忘るる勿れ――聖女を信ずる者は無垢なる子羊に他ならず――その身の潔白を、私が保証いたします」
「っ……」

 感じる。
 ボクの中の何かが、彼の中へと移動していくのがわかる。

 それは多分、生命力とか、気力とか、体力とか、そういう類。

「……お祈りはこれで終わりです。ご、ご気分はどうでしょうか?」
「なんだか、不思議な気分です。くたくたに疲れていたはずなのに、体の奥底から活力がみなぎってくるような……」
「それは何よりです。でも、治癒の祈祷は貴方自身の自然治癒力に力添えをしているだけですから、今日一日はゆっくり体を休めていないとダメですよ? そうしたら、明日の朝には今日の朝よりもずっと元気になっているはずですから」

 本当は回復魔法も使えれば良かったのだけれども。
 残念ながらマニの町の中では魔法は学べないし、外への遊学中にも魔法にまで手を出す余裕が無かった。

 魔導書を取り寄せれば学ぶことはできるかもしれないけれど、聖女のお勤めが忙しくて……というのは言い訳だろうか。

「あ――」
「っ!? も、申し訳ありません聖女様!!」

 言い訳をこねこねしている間に、彼の身体に治癒の祈祷が効いてきたみたいだ。
 血行が良くなり、下半身にもしっかりと血が集まって、ボクのお腹に硬いモノが当たっていた。
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