15 / 26
ゴブリン殲滅編
聖女とは少女でもあり、淑女でもあり
しおりを挟む
「い、今のボクは疲れているわけではないんです……。クーロ様が抱きしめてくれないから、焦れてるんですっ……! クーロ様に抱きしめてもらえると、治癒のお祈りができることを期待していたのに……いつまで経っても抱きしめてもらえないどころか、まるでボクの祝福を拒絶するような物言いまでされて……」
「せ、聖女様っ……!」
「クーロ様は、こんな状態のボクを放っておくんですか? まさか、ボクの負担を減らすためと、このまま踵を返したりはしませんよね?」
瞳が潤んでいるのは悲しいからじゃない。
声が震えているのは苦しいからじゃない。
体の中に興奮を留めておけなくて、溢れてしまっているから。
「~~っ、聖女様!!」
「わわっ!?」
突然、彼は膝を着くとその額をボクのお腹に押し付けてきた。
老兵の時とは逆に、ボクが彼のことを包み込むような体制だ。
体格差のせいで、実際には包み込めてはいないけれど。
「どうかっ! 私の無礼な物言いをお赦しください! 御身の気持ちも考えず、身勝手な考えを押し付けようとした愚かな私を、どうかっ!」
ボクとしては誘っていたつもりなのだけれども、彼は責められていると感じたのかもしれない。
胸に縋りつく彼の姿はまるで母親に怒られた少年のようだった。
「お、落ち着いてください。ボクは怒ってないですから……むしろ、その優しさ自体はとても嬉しいんです」
「ほ、本当ですか?」
「はい、本当です。だからどうか安心して、このままボクを強く抱きしめてください。そして、治癒のお祈りをさせてくださいね?」
「もっ、もちろんです!」
「ありがとうございます……クーロ様はとても敬虔な信徒様ですね……いい子、いい子」
「せっ、せいじょさまぁ……」
顔は見えないけれども、声だけで喜んでいるのが伝わってくる。
年齢も体格もボクよりもずっと立派な大人たち。
正直、そんな彼らを甘やかすことは得意じゃない。
どうしても演技がかってしまうし、馬鹿にしてると怒られるのではと恐れてしまう。
でも、彼のように聖女に母性を求める信徒も居る。
彼のように、ボクの甘やかしで癒されてくれる人が居る。
だから、ボクも精一杯にやりきる。
母親のように優しく――
聖母のような包容力で――
それでいて、ちょっとだけいじわるに――
「ふふっ。いつもは真面目でカッコいいクーロ様なのに、今はまるで赤ちゃんみたいで可愛いですね? 皆様にも教えてあげたら、どのような反応をするでしょうか」
「そっ、そんなっ……」
「んっ……そんなに怯えないでください。大丈夫ですよ、冗談ですから……クーロ様の可愛い一面は、ボクだけのものですもんね? 誰にも見られることのない、聞かれることもないこの場所で、このまま好きなだけ、聖女に甘えてください?」
彼の腕に込められた力がまた一段と強くなって、ボクの唇から吐息が漏れた。
遮音の呪いが施された黒幕で囲まれた場所では、余程の大きさの音でないと外には漏れない。
だから、彼のようにここでのみ己の内を曝け出せるという人間は少なくない。
ボクはその期待に応えるだけだ。
簡易とはいえこの密室の中で。
彼らの中にある欲望を、鏡のように読み取って再現するだけ。
それが、聖女としての役割だから。
「せ、聖女様っ……!」
「クーロ様は、こんな状態のボクを放っておくんですか? まさか、ボクの負担を減らすためと、このまま踵を返したりはしませんよね?」
瞳が潤んでいるのは悲しいからじゃない。
声が震えているのは苦しいからじゃない。
体の中に興奮を留めておけなくて、溢れてしまっているから。
「~~っ、聖女様!!」
「わわっ!?」
突然、彼は膝を着くとその額をボクのお腹に押し付けてきた。
老兵の時とは逆に、ボクが彼のことを包み込むような体制だ。
体格差のせいで、実際には包み込めてはいないけれど。
「どうかっ! 私の無礼な物言いをお赦しください! 御身の気持ちも考えず、身勝手な考えを押し付けようとした愚かな私を、どうかっ!」
ボクとしては誘っていたつもりなのだけれども、彼は責められていると感じたのかもしれない。
胸に縋りつく彼の姿はまるで母親に怒られた少年のようだった。
「お、落ち着いてください。ボクは怒ってないですから……むしろ、その優しさ自体はとても嬉しいんです」
「ほ、本当ですか?」
「はい、本当です。だからどうか安心して、このままボクを強く抱きしめてください。そして、治癒のお祈りをさせてくださいね?」
「もっ、もちろんです!」
「ありがとうございます……クーロ様はとても敬虔な信徒様ですね……いい子、いい子」
「せっ、せいじょさまぁ……」
顔は見えないけれども、声だけで喜んでいるのが伝わってくる。
年齢も体格もボクよりもずっと立派な大人たち。
正直、そんな彼らを甘やかすことは得意じゃない。
どうしても演技がかってしまうし、馬鹿にしてると怒られるのではと恐れてしまう。
でも、彼のように聖女に母性を求める信徒も居る。
彼のように、ボクの甘やかしで癒されてくれる人が居る。
だから、ボクも精一杯にやりきる。
母親のように優しく――
聖母のような包容力で――
それでいて、ちょっとだけいじわるに――
「ふふっ。いつもは真面目でカッコいいクーロ様なのに、今はまるで赤ちゃんみたいで可愛いですね? 皆様にも教えてあげたら、どのような反応をするでしょうか」
「そっ、そんなっ……」
「んっ……そんなに怯えないでください。大丈夫ですよ、冗談ですから……クーロ様の可愛い一面は、ボクだけのものですもんね? 誰にも見られることのない、聞かれることもないこの場所で、このまま好きなだけ、聖女に甘えてください?」
彼の腕に込められた力がまた一段と強くなって、ボクの唇から吐息が漏れた。
遮音の呪いが施された黒幕で囲まれた場所では、余程の大きさの音でないと外には漏れない。
だから、彼のようにここでのみ己の内を曝け出せるという人間は少なくない。
ボクはその期待に応えるだけだ。
簡易とはいえこの密室の中で。
彼らの中にある欲望を、鏡のように読み取って再現するだけ。
それが、聖女としての役割だから。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃった件
楠富 つかさ
恋愛
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃうし、なんなら恋人にもなるし、果てには彼女のために職場まで変える。まぁ、愛の力って偉大だよね。
※この物語はフィクションであり実在の地名は登場しますが、人物・団体とは関係ありません。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる