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ゴブリン殲滅編
祝福の譲渡及び転売は禁止されております
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治癒の祈祷は教典に記載されている格式のある重要な儀式だ。
しかしながら、その詳細は各人に委ねている部分も大きい。
要は強く抱擁しながらお祈りさえしていれば何でもいいのだ。
どこに抱き着こうとも、抱き着く際に多少のいじわるがあろうと構わない。
だから彼のようにわざわざお願いをする人間もいないのだけれども、故にこそボクは考えてしまう。
わざわざ了解を取るだなんて、彼はボクに何を要求するつもりなのかと。
「あっ、あのっ……たっ、多少の無茶であればボクもお受けはしたいのですが……でっ、でもやはりっ、ボクは聖女なのでっ……あっ、あまり大胆なのはさすがに、ちょっと……いやでもっ、絶対に無理と言いたいわけでは――」
「私の祝福を受ける権利を、娘に譲ることはできないでしょうか?」
「……フェル様にですか?」
「はい……私の娘は熱心な聖女様の信徒なのです……。しかしその生まれ持った性別のせいで兵士になることは敵わず……どうか、私の代わりに娘に祝福を授けてはもらえないでしょうか……」
「…………」
この町で兵士になれるのは屈強な肉体を持つ者だけだ。
男性だとしても、ボクのようにひ弱であれば兵士にはなれない。
命を張る職業であるからこそ、その条件はシビアでなくてはならない。
軟弱な者は命を落とすだけでなく、味方をも危機に陥れかねないのだ。
ゴブリンを前に何もできなかったボクのように。
「フェル様が、私の治癒の祈祷を受けたいと? どこか具合が良くないのですか?」
「いえ、娘は元気です。ただ、あんなにも聖女様への信仰が厚い子なのに、兵士となって祝福を受けることができないのが親としては不憫でして……私のことを羨むことも多く、何とかしてやりたいと思っているのです……」
「……そうですか」
治癒の祈祷に病や傷を瞬く間に癒す力は無い。
医者の代わりにはならず、即効性においては薬にも劣る。
しかしそこに聖女の祝福が付加されることによって、マニの町では唯一無二の価値が生まれる。
彼の娘のように治癒の祝福を羨む信徒も珍しい話ではない。
だから、彼自身もボクの返答なんてわかりきっているはずだ。
「残念ですが、その願いを叶えることはできません。治癒の祈祷は必要な方であれば、兵士でなくとも受けられます。しかし祝福は別です。この祝福は町の為に戦い、そして生還した皆様への感謝と奉仕の儀式ですから」
例外は許されない。
何があろうとも。
権利の譲渡を許せば、脅迫や売買に繋がる。
聖女の存在が町の治安を脅かすようなことがあってはならない。
どれだけ心苦しくても、聖女は町の為に在らねばならない。
……母様がそうであったように。
しかしながら、その詳細は各人に委ねている部分も大きい。
要は強く抱擁しながらお祈りさえしていれば何でもいいのだ。
どこに抱き着こうとも、抱き着く際に多少のいじわるがあろうと構わない。
だから彼のようにわざわざお願いをする人間もいないのだけれども、故にこそボクは考えてしまう。
わざわざ了解を取るだなんて、彼はボクに何を要求するつもりなのかと。
「あっ、あのっ……たっ、多少の無茶であればボクもお受けはしたいのですが……でっ、でもやはりっ、ボクは聖女なのでっ……あっ、あまり大胆なのはさすがに、ちょっと……いやでもっ、絶対に無理と言いたいわけでは――」
「私の祝福を受ける権利を、娘に譲ることはできないでしょうか?」
「……フェル様にですか?」
「はい……私の娘は熱心な聖女様の信徒なのです……。しかしその生まれ持った性別のせいで兵士になることは敵わず……どうか、私の代わりに娘に祝福を授けてはもらえないでしょうか……」
「…………」
この町で兵士になれるのは屈強な肉体を持つ者だけだ。
男性だとしても、ボクのようにひ弱であれば兵士にはなれない。
命を張る職業であるからこそ、その条件はシビアでなくてはならない。
軟弱な者は命を落とすだけでなく、味方をも危機に陥れかねないのだ。
ゴブリンを前に何もできなかったボクのように。
「フェル様が、私の治癒の祈祷を受けたいと? どこか具合が良くないのですか?」
「いえ、娘は元気です。ただ、あんなにも聖女様への信仰が厚い子なのに、兵士となって祝福を受けることができないのが親としては不憫でして……私のことを羨むことも多く、何とかしてやりたいと思っているのです……」
「……そうですか」
治癒の祈祷に病や傷を瞬く間に癒す力は無い。
医者の代わりにはならず、即効性においては薬にも劣る。
しかしそこに聖女の祝福が付加されることによって、マニの町では唯一無二の価値が生まれる。
彼の娘のように治癒の祝福を羨む信徒も珍しい話ではない。
だから、彼自身もボクの返答なんてわかりきっているはずだ。
「残念ですが、その願いを叶えることはできません。治癒の祈祷は必要な方であれば、兵士でなくとも受けられます。しかし祝福は別です。この祝福は町の為に戦い、そして生還した皆様への感謝と奉仕の儀式ですから」
例外は許されない。
何があろうとも。
権利の譲渡を許せば、脅迫や売買に繋がる。
聖女の存在が町の治安を脅かすようなことがあってはならない。
どれだけ心苦しくても、聖女は町の為に在らねばならない。
……母様がそうであったように。
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