女として兄に尽くすよう育てられた弟は、当たり前のように兄に恋をする

papporopueeee

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兄と弟と弟だった人

就寝前

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「ふっ、~~っ」

 風呂を終えて、
 寝間着のジャージに着替えて、
 リビングで牛乳を飲みながら一人ぼーっとして、
 自室に戻って布団を見た途端に大きな欠伸が漏れた。

 まるで夜伽の後のような疲れ具合だ。
 今布団に入り込んだら、一分も経たずに眠りに落ちることができるだろう。

「……寝るか」

 俺が寝てしまうと、玲が珠美との間にトラブルを起こした時に対応ができなくなる。
 しかし揉め事が起こったとしても、玲が家事を疎かにすることはない。
 珠美が大人な対応を続けてくれるのならば、大きな問題にはならないはずだ。

 普段の寝る時間と比べると早い時間だが、早寝して悪いこともあるまい。
 俺は吸い寄せられるように布団の中に入り込んで――

「一宏様」
「……」

 部屋の入口を見れば、障子に玲の影が映っていた。

「……どうした?」
「その……中に入ってもよろしいでしょうか……?」

 玲の返答は答えになっていなかった。
 何か言い難い用件なのだろうか

 寝ようとしていたところだが仕方ない。
 俺は寝転がっていた体を起こして布団の上にあぐらをかいた。

「……入っていいぞ」
「失礼いたします」

 障子を開けて部屋に入って来る玲。

 その格好は寝間着である白い長襦袢だった。
 白い生地に玲の素肌がうっすらと透けている。

「もう風呂に入ったのか?」
「はい。珠美さんはまだ入らないとのことでしたので、手早く済ませました」
「そうか。それで? 何か用なのか?」
「その……」
「?」

 長襦袢をすり合わせるように身をよじりながら、玲は言い淀んだ。 

「…………就寝のご挨拶に、参りました」
「は? ……挨拶?」
「はい……」

 今までにそんなことをされたことは一度もないのだが、いったいどういうことなのだろうか。

「……あー、もしかして玲も今日は早く寝るのか? だからその報告に来たとか、そういう感じか?」

 玲が俺よりも早く寝ることはない。
 入眠は別としても、玲がベッドに入るのは決まって俺が布団に入った後だ。

 しかし今日は玲も疲れたのだろう。
 早く寝たいと思うのもおかしくはないし、その挨拶に来たのだとしたら納得もできる。

 俺としては今日の分の家事が終わっているのならば玲がいつ寝ようとも気にはしないのだが。
 生真面目な玲はわざわざ報告に来たのだろう。

「いえ、私はまだ起きております。何か御用があれば、申し付けていただければすぐに対応いたします」

 違ったらしい。

「……そうか。でも、特に玲にしてもらう必要のあることはないぞ。部屋に常備してる薬も補充してあるし、飲み水も玲が既に用意してるからな」
「左様ですか……」
「ああ……」
「…………」
「…………」

 いったいなんだというのだろうか。
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