女として兄に尽くすよう育てられた弟は、当たり前のように兄に恋をする

papporopueeee

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兄と弟と弟だった人

夜伽前の昼下がり

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 昼食の後。
 角煮が重いことはわかっていたのに、
 美味しさでついつい箸が進んで食べすぎて、
 俺は体調を崩した。

 体中に広がる吐きそうになる気持ち悪さ。
 じっとしていても気分は悪くなるばかりなので、腹ごなしをして消化してしまうことにした。

 消化が進めば体調も戻るだろうし、何よりこの調子だとどうせ夕飯も重いに違いない。
 腹を空かせておくのが賢い選択というものだ。

 しかしながら満腹の状態で激しい運動ができるわけもないので。
 とりあえず庭でも散歩していようかと思い外に出たところで、玲に出くわした。

「一宏様」
「よう……」
「……何やら、顔色が優れないようですが」

 玲の顔に不安の色が濃く表れる。
 どうやら、玲から見ても俺の顔色は優れないらしい。
 心配で曇る玲の顔も負けじと顔色は悪いけれど。

「ちょっと昼食を食いすぎた。消化すれば戻るだろうから心配するな」
「……安心致しました。それほどまでにたくさん食べていただけて嬉しく思います」

 玲は俺の体調不良よりも、たくさん食べたことの方が嬉しいらしい。
 確かに心配するなとは言ったものの、その反応もどうなんだ。

「玲は何してるんだ?」
「これからお布団を取り込むところです」
「そういや、帰ってきた時に干されてるのを見たな」
「今日はお天気も良く、柔らかくふかふかに仕上がったのを確認済みです」

 まるで焼きたてのパンに使うような形容の仕方だ。
 気持ちはわからないでもないけれど。

「……手伝うか」
「え?」
「布団。しまうのを俺も手伝うって言ってるんだ」
「いえ、それには及びません。一宏様に家事を手伝っていただくなど――」
「いいから。ちょうど今、腹ごなしの軽い運動を探してたんだ。ただ散歩するだけじゃ暇だからな」
「……承知しました。一宏様の深い慈悲に感謝いたします」

 人の話を聞いていなかったのか。
 それとも腹ごなしのためという理由を信じていないのか。

 とにかく、俺は玲と一緒に布団をしまうことにした。

「それでは、一宏様はご自身のお布団を運んでいただけますでしょうか?」
「わかった」

 干されている布団を竿から取って抱え込む。

 確かに玲の言う通り、大量に日光を浴びた布団は柔らかく、良い香りを放っている。
 このままずっと抱えていたくなるような心地だ。

「んしょっと……押し入れには仕舞わなくていいか」

 手早く布団を自室に運び込んで、再び外へと向かう。
 布団を一つ運んだ程度では大した運動にもならない。
 まだ干してある布団はあったし、もう一つくらい運んでカロリーを消費したいところだ。

「玲、次の布団は……」
「ふっ……くっ……!」
「…………」

 玲の元へ戻ると、そこには布団が居た。
 よろよろとよろめきながら、ふらふらとした足取りで家の中へと向かって歩いてくる布団が居た。

「はっ……はっ……んぅっ!」
「…………」

 体格の小ささと、圧倒的運動不足による筋力の無さ。
 玲が自身より一回り以上も大きい布団を運ぶのに苦戦するのは、考えてみれば当然のことだった。
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